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異世界なまけもの備忘録  作者: フトカワ
第六章 海王との接触
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第58話 勇者、深海国民と出会う

 翌日、私たちはいつも通りの朝(昼)を迎えた。


「おはよ~。いや~昨日の『マリモカート』も盛り上がったなぁ」


「そうねぇ! ギョロ美ちゃんめっちゃ速いのよ! コソ連してたんだもん!」


「だってぇ~楽しいんだもの。そりゃ、一人でも練習しちゃうわよ~」


「いやぁ同じ王子として俺も負けるわけにはいかないな!」


「お前はいつか『魚卵王子』になれるように頑張れよ」


「まだ私の事そんな目で見てるのぉ~。いっぱい体内に魚卵入れちゃうぞ!」


「セリフが怖すぎるって! 魚ホラーあんまり聞いたことないから」


「ハハハハ! ん? なんかインターホンにいっぱい履歴が残ってるぞ」


 見てみると、そこには顔をボコボコにされたトモミチとそれを取り囲む魚人たちが映っていた。朝の十時ごろから十回以上は鳴らされていた。


「あっちゃ~。昨日感動して忘れてたよこいつ」


「ボコボコにされてるわね……今、何時?」


「もう昼一時ぐらいだな。さすがに今日はいかないと。どうするエデン?」


「そうだな。でもその前にまずは腹ごしらえだな。あそこの高級パン屋行こうぜ」


 大事な戦闘を前に私たちは腹ごしらえをすることにした。優雅なコーヒーと芳醇なパンはお腹だけではなく、心までほっこりさせてくれるいつもの味わいだ。


 お腹も膨れ、家へ戻ろうとしたその時、家の前に例の集団がいた。


「……あぁあああああ! やっと見つけましたでぇ! もう三時でっせ!」


「うわっ。うるさいのがいるよ」


「昨日なんで来てくれなかったんですのぉ! 危うく殺されるところでしたで!」


「それ狙いでもあったんだけど……よし。じゃあ海岸行けばいい?」


「えっ⁉ それ狙いって聞こえたような……まぁええ。早く海岸行きましょ!」


 海岸に連れられて、ビーチを見るとそこには近海の魔物が勢ぞろいしているのか、ものすごい魚人たちの大軍勢が待ち構えていた。しかも、いきり立っている。


「なんだこれ。ほんとに魚臭くて困るな」


「ちょっとエデン。これ以上怒らしたら大変よ」


「まずいわぁ……パパとママもいるわ」


 大軍勢の奥に、ひと際、異彩を放つ半魚人がいた。あれがギョロ美ちゃんの、ひいては深海国の国王と王妃なのだろう。


 軍を率いているであろう王妃が口を開いた。


「人間どもよ。まずはなぜ、約束の日であった昨日に姿を現さなかったのかしら?」


「実はな……。昨日、目の中にでっかいゴミが入ったんだよ……」


「は、はい? それがなんです?」


「結果、普通に取れたからよかったんだけどさ。目に傷でもついてたら海水染みるかもなぁって思ってやめといたんだ」


「……あなたはたったそれだけ理由で来なかったのですか?」


「う~ん。まぁあとくしゃみも一日で二、三回もしてたし、風邪かもしれんと思ってな。大事をとったんだ。危なかったよ」


「一日で二、三回ならよくあることでは……?」


「あ、魚風情にはどうせわからんか! ハハハ!」


「あなたどれだけ私たちを舐めているのですかぁあああああああ!」


「エデン! いい加減しなさい! この大軍勢をこれ以上怒らせないで!」


「そうよ……あなたの返答次第で地上に進攻しようと考えていましたの」


「え、待って『ギョロ波瑠』ママ……私の話を聞いて?」


「待てないわよ! その人間は私たち、ひいては深海国を舐めてるわ!」


「少し落ち着きなさいギョロ波瑠。一度、ギョロ美の話も聞こうではないか」


 そう声を上げたのは、王妃の横で静観していた深海国の王だった。

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