第56話 勇者、事情を聞こうとする
「さすがですね卵王。変わり身ですか」
「あぁ。いざという時のための魔法さ。ここで刺さるとはなぁ」
「えぇ~帰ってきたし。二人とも人質になったら結構面白かったのに~」
「お前の言葉には傷ついたよ」
ギョロ隈は海岸で話していたギョロ美と合流した。
「あいつら一体……そしてお前、なにをしているのか、わかっているのかなぁ?」
「まさか兄さんまで来るとは思いませんでしたわ」
「いや、地上侵攻してくるね~って言って出たっきり帰ってこなかったら心配するよ?」
「そうよね……ごめんなさい。それは失敗してるの」
「あの勇者だなぁ。俺たちの邪魔をしているのは……キィイイイイ!」
「違うの兄さん。私があそこに居候さしてもらってるの」
「……なにを言っているんだ? 下等な人間とつるむなんぞ俺たち『ギョロの會』ひいては深海国王族として許されると思っているのか?」
「わかっているわ。許されるものではないと。けど、恋をしてしまったの」
「……えっ? ちなみに誰と?」
「あの勇者様よ」
「あぇええええ! ダメでしょ! 人間だろ? お前は俺を差し置いて『ギョロの會』次期会長だぞ⁉ 深海国としても許さないぞ!」
「父君、母君と話をしないといけないのは分かってる。だから、もう少し待って」
「待ってってそんなことあるのか……このことは僕からも話させてもらうぞ」
「いいわよ。諸々の事情を勇者様と話をさせてほしい」
「……わかったしょうがないな。ならこのグールは人質にする。『深海国スプラッシュマウントレーニア』に連れて行かせてもらう」
「『深海国スプラッシュマウントレーニア』⁉ 版権的にやばそうな国に連れて行かれるってぇ! 助けてやギョロ美!」
「えぇ。それは全然大丈夫よ」
「ギョロ美ぃいいいいいいいいいい! 裏切り者ぉおおおおおおおお!」
「じゃあ、一週間だ。一週間したらまた来るからな。今度は家族で来ることになると思うぞ」
「わかったわ。トモミチは……まぁ生きてたら返してね」
「あんまりや……わてばっかりこんな役回り……」
話がまとまったようで、魚人の軍勢率いるギョロ隈は帰っていった。
ギョロ美が私たちに『話をさせて』と申し出た。
――ギョロ美ちゃんはその可愛らしいキャラクターとは裏腹に複雑な事情を抱えていた。
トモミチがさらわれた。だか、皆あまり気にしていなかった。それよりも、ギョロ美ちゃんの話が気になっていた。
しかし、結局漫画やアニメに夢中で気づけば、一週間が経っていた。
「あれ? そういえばもう約束の一週間じゃないか?」
「嘘でしょ~。まだ三日とかじゃないかぁ?」
エデンが日にちを確認すると確かに一週間過ぎていた。
「やばいわ。経ってるわね。ギョロ美ちゃん、話って結局なんだったの?」
「ちょっと待ってねぇ。この巻だけ読ませてちょうだいねぇ……」
「なんだ漫画読んでいるのか。なら仕方ないな」
「えぇ。待つしかないわね」
「いや、エデンも、アネスもトモミチのこと忘れてないか?」
「ん? なんかあったっけあいつ。最近見ないなぁ」
「やばいわエデン。そういえばトモミチがさらわれたのよ。魚人たちに」
「なんだそんなことか。なら慌てる必要はないな」
「さすがに気にしてあげましょうよ……」
「まぁギョロ美ちゃんがあの巻読んだら話聞かせてもらおうぜ」
「……大丈夫かこの流れ」卵王は嫌な予感がしていた。
――予想通り、気づけば夕方になっていた。皆、漫画を読んで寝落ちしていた。




