第5話 勇者、やる気なし
「……まぁ生きていてよかったわよ。で、そいつは一体なんなのよ?」
そんな私の話を無視して、グールは男の元へ行く。
「いつもすまんな」そういって男は金のようなものを渡していた。
「へへ……こちらこそいつもすいやせん……」
そういうと、そのグールは帰っていった。いやいや。なんで帰るんだよ。私の話は?
「あ、ちょっと! あいつ一体なんだったのよ!」
「それには深い、深いわけがあってだな……」
「はぁ……」
「暇だったからビーチでカニに足の爪切ってもらってたら、あいつが襲ってきたんだよ」
「もう深くないわね」
「丁重にボコボコにしたやったらなんでも言うこと聞きますっていってきてさ。なんか惨めで可哀想なやつだなぁって思ったけど、寒そうにしてたから要らなかった勇者の羽衣あげたらついてくるようになったんだよなぁ」
「おおい! あれ勇者の羽衣かよ! 絶対渡したらダメでしょ!」
「あっついんだよあれ。なんかダンゴムシの匂いするし」
「ダンゴムシ匂いしないでしょ……というかやっぱりあなたが勇者様なのね!」
「うるさいなぁ。さっきからそう言ってるだろ。耳毛生えてんのか?」
「さっきから言ってないわよ! あと、耳毛も生えてないわ!」
「んで、俺になんの用だよ? さすがにカニに切ってもらった爪は渡せないぞ?」
「いらないわよそんなもん! 違うのよ。王から勅令が来てたでしょ」
「勅令? なんだそれ。王が直接来いよ」
「行くわけないでしょ! 伝令係とか来なかったかしら?」
「いたかなぁ……あぁ、俺とグールたちでビーチバレーしてた時に来た奴らかな。なんか偉そうに『王からの勅令を申し伝える!』とかいうから『大丈夫です』って言って砂浜に埋めちゃったきり会ってないなぁ」
「待て待て! それあなたが砂浜に埋めたからでしょう⁉ 早く助けに行かないと!」
砂浜に向かうと、本当に顔だけを出した状態で全身埋まっていた。
素早く救助して城に返してあげた。
「頭おかしいの⁉ 死んじゃうでしょあれ!」
「すっかり忘れてたよ~。あの埋まった頭で聖剣スイカ割りしようと思ってたのになぁ」
「怖すぎるわよ! スイカの赤い液が怖くなるから!」
「楽しみ無くなったよ~。代わりに砂浜埋まってくれる?」
「しないわよ! そんなことより、とりあえず城に向かいましょ」
「なんでだよ。めんどくさい。遠いじゃんあそこ」
「いやいや。あなた転生勇者でしょ? 魔王討伐に冒険へ出るのよ」
「いや、魔王可哀想じゃん。なんか魔王悪いことしたのか?」
「世界各地に魔物が大量にいるのよ。魔王を倒せば世界に平和が訪れるわ」
「勇者って俺しかいないの?」
「一応、東西南北各地に転生勇者がいて、他にも勇者はいるわ」
「じゃあ、そいつらに任せようぜ。疲れるし」
――この勇者は全くやる気がなかった。




