第49話 勇者、究極の事業を思いつく
「あーちゃん、なんで一旦帰ったのさ。ランドレスから金ぶんどればいいじゃないのか?」
「おそらく、その金はもうないと思うわ。そして、私が思うにそれほど北方の争いは激化していないとも思う」
「なにぃ⁉ 俺たちの金を……どっかに募金でもしたってのか! ユ〇セフか⁉ 赤い羽根目当てか!」
「いや、知らんけども! そういうのではないと思うわ。おそらく、どこかへ横流しされているのではないのかと思う」
卵王も同意するように頷き、こう答えた。
「アネスもそう思ったか……そもそも魔物との激しい戦闘において使われる金はとんでもない額だ。それを、いくら国庫が枯渇してからといって、勇者の給与から当てるかと思う。当てたところで雀の涙だ」
「そうですよね。ということは、これは明らかに私たちの邪魔をするなにかだと思います」
「野郎……全部ランドレスってやつの仕業か。首取りに行くかぁ~」
「物騒だないつも! しかも、これはそう簡単にはいかないのだ。相手はゴードン王国第一王子。確実な証拠でもない限り、言及するのは難しい。頭も相当キレるんだ。焦らずにいった方がいい」
「ぐぬぬ……これは難しい話になってきたな。急いで次の手を打たなくては」
「そうでげすねぇ……わてら魔物も皆さんがなに言っとるかわからんくなってきましたわぁ」
「私のこのトライデントでそのランドレスを焼き殺してあげられればいいんですけどねぇ~」
「焦ることはない。俺たちにはなんといっても時間だけはある。急いでも仕方ないし、とりあえず漫画でも読むか」
「それがええですなぁ!」
「賛成だわ~! やっと次で最終巻よぉ~」
「……私も気になっている漫画があって……」
そのだらけきった様子を見て卵王が呟いた。
「なんでこんなやつらについてきてしまったんだ俺は……」
――特に、この日は対策案など考えず、皆眠りについた。
翌日。
「おい! お前ら朝だぞ! なにやってんだこんな時間まで!」
「ふぁあ……エデンはんどうしたんでっかこんな時間に……ってまだ朝五時ですがな⁉」
「う~ん……なによエデンこんな時間から起こすなんて……」
「寝てからまだ三時間しか経ってませんわよぉエデン様ぁ……」
「すごいぞお前ら。究極のアイデアを俺は思いついてしまった……」
「なによアイデアって」
「俺たちの財政難を救う永久機関を考え付いた」
「お前ら別に財政難ってほど金ないわけじゃないだろ」
「今までなんで思いつかなかったんだ。これから俺はあるものを創造する」
「それはなんですかいなエデンはん!」
「聞いて驚くなよ……それは『パチスロ店』だ!」
皆、なにを言っているのか見当もつかなかった。
「……エデン。それは一体、なんなの?」
「よく聞いてくれたなあーちゃん。そこは、『魔のアミューズメントパーク』と言っていいだろう。ある者は富を。ある者はには死をもたらすだろう……」
「し、死ぬ⁉ そんな店許されるわけないだろう!」
卵王が責め立てる。
「安心しろ。実際に人が死ぬわけではない。精神的に死を迎える時もあるってことだ」
「どういうことなのエデン。そこではなにが行われるの?」
「簡単に説明すると、スロットマシンで遊ぶところだ。ここでは硬貨を専用のカードに残高として貯めてゲームをする。当たれば残高を増やすこともできるし、景品と交換することもできる。まぁここでは食料とか酒とかと交換かな。台ごとでルールや遊び方、当たりまでの難易度の高さまで違うから永遠に遊ぶことができるぞ」
「なるほどねぇ。それでお金を調達するわけね。でも、当たる台とかも決まっているんだろうし、客に見抜かれたらおしまいね」
「そんなに甘いとでも思っているのかあーちゃんよ? 台の当たり具合は店側で変えることができる。だから、前の日は大当たりの台でも次の日はなに一つ当たらないなんてこともざらにあるんだぞ」
「そんなの店側がめちゃくちゃ有利じゃない! 人が来なくなるわよ」
「そこを大当たりする人と負ける人をうまく調整しつつ、客が途切れないようにする。さらに、イベントデー等を設けたりしてその日は当たり台を増やして常連客を増やすんだ」
「すごいわぁ! エデン様ぁ。相変わらず策士だわぁ!」
「さすがエデン様でっせ! 考えることが極悪人ですわぁ!」
「まだ終わりじゃないんだ。『パチスロ店』を作るのはそれだけがメリットじゃない」
「どういうこと? それだけでも充分、利益が出せそうなものだけど」
「負けたやつらが次に考えることはなんだと思う? そう。『次は勝つ』なんだよ。そして、店の目の前にあるところはというと……」
「ま、まさか『勇者金融』?」
「そういうことだ! 負けたやつがお金を借りて、そしてまた負ける。負のループから永遠と抜け出せなくなるんだよ!」
――エデンの発想はいつも群を抜いて人間の心理を操るのに長けていた。




