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異世界なまけもの備忘録  作者: フトカワ
第五章 実業家としての才能
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第48話 勇者、王を問い詰める

 見てはいけないところを見てしまい、お互いに困惑していた。


「……」


 色々な意味で張りつめた空気の中、空気などお構いなしのエデンが言葉を発した。


「ごめんな。絶賛、セクハラ中のところ」


「どこが絶賛だ! 絶対に誰にも言うなよ! どうやってこの王の間へ入った⁉」


「勇者の転移魔法を使用し、入らせていただきました。やっと、王の間へ勇者を連れてくることができました」


「いやタイミング考えてくれんか⁉ 最悪のタイミングだ……」


「しまったなぁ。『カメラ』持ってくればよかったよ……」


「やめなさいエデン……あまりにも可哀想だわ」


「アネスまでそんなにわしを憐れむな……それで、急にきてなんの用だ!」


「セクハラ王。俺の給与がめちゃくちゃ減るって聞いてぶん殴りに来ました」


「誰がセクハラ王……えっ、ぶん殴るの前提⁉」


「お前の対応によっちゃな。俺の生活が変わっちまうからな」


「……そもそも魔王城へ行く準備金ではなかったか?」


「あぁ。だから、準備しているんだろ。町の高級パン屋行ったり、豪勢な食事が出てくる酒場へ行ったりな!」


「……裕福な生活を送っているとしか思えんが」


「そこで、冒険の情報とか仕入れているんだろ……考えろよセクハラスディアム・ゴードンさんよぉ……」


「おぉい! わしの名前をもじるな!」


「で、どうなんだよ実際。俺の給与は下がっちまうのか?」


「わしも本意ではないのだが、北方で魔物との争いが激化しておるらしい。そこへの軍事費がどうしても賄えずな」


「やむを得ないか……それで王の生活費を俺に回すしかないってことかぁ」


「あぁ……そうな、えっ、なんでわしの生活費⁉ わしを殺す気か⁉」


「ありがとうな。文字通り身を削ってくれて」


「削らんわ! 残念だが、もう決定事項なのだ。これからは銀貨五千枚でどうにかしてくれ。というか、はよ冒険へ行け」


「ゴードン王。確かに勇者エデンの給与は高いかもしれませんが、その北方での戦闘はそれほど厳しいのですか?」


「そうだ……わしの息子『ランドレス』を筆頭に北方攻略として行かしているがどうもうまくいかん。魔王軍で指揮をとっているのは、あの魔王直属の精鋭『五魔天神』が一人『破人のクリウス』らしい……」


「な、なにぃ⁉ あのくりうすが⁉」


「いや絶対知らないでしょエデン」


「栗臼直樹くんだろ? 必ず、歩道の真ん中に痰を吐く、憎たらしい人間の」


「いやな人間! 痰吐くだけでも嫌なのに、なんで道の真ん中なのよ!」


「そうなんだよ。歩道横の草とか土とかに吐きゃいいのに絶対、道の真ん中なんだよ」


「汚い人間ね。そんな人間にはなりたくないわ」


「あのすまん。変な話しをしているところ。そいつではないのだ。もっと怖いやつだから」


「あぁそうなの……栗臼くんも人として充分怖かったけどなぁ」


「まぁそういう理由で軍事費がかなりかかっておるのだ」


「許せねぇなぁその『ランドレス』ってやつはよぉ……」


「あっそっちじゃないから。『クリウス』ね。悪い奴は」


 だが、私は少し不審な点があるような気がして、王に訊ねる。


「ゴードン王よ。無礼を承知で申し上げますが、その『ランドレス』様が無理に争いを『長引かせている』ということはありませんよね?」


「なにが言いたいのだ。アネスよ」


「今回、誰かから勇者の給与を回せばいいと助言を受けたりはしませんでしたか?」


「……ランドレスだ。国の財政や転生勇者のことは事前に話していたからの」


「そうですか……不躾な質問をしてしまい申し訳ございませんでした」


「なるほど。じゃあそのランドレスのところ行こうぜ。ぶん殴れば――」


 小声で、私は勇者の言葉に被せるように制止させた。


「いいから。ここは一旦、帰るわよ」


「えぇ~まじでかぁ。金欲しいのにな~」


「では、ゴードン王。急な訪問、誠に申し訳ございませんでした」


「んじゃね。またセクハラしてる時にくるわ~」


「二度と来るな! はよ冒険へ行け!」


 一度、勇者宅へ戻った。あとから、屋根裏で様子を見ていた卵王も帰ってきた。

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