第40話 勇者、伝説の魔物と遭遇する
エデンが珍しく、強い意志でこう語りかけた。
「みんな準備はいいな。この先にはとんでもない魔物がいる。この俺も身震いするくらいだ……」
あのエデンが身震いしている。それだけでその場に緊張が走った。
「みんな。まずは斥候の俺が様子を見てこよう。それで討伐できそうなら力を合わせて討伐しよう。というか、同じ魔物なのにグールと半魚人は協力してくれるのか?」
「まぁわては事情があるさかいやるしかないんですわぁ(奴隷紋を刻まれているため)」
「私はエデン様が望むならどこまでもついていきますわよぉ〜!」
「よし……それなら大丈夫だな。アネスもそれで大丈夫か?」
「えぇ。大丈夫です。まずはどんな魔物か王子に様子を――」
「よぉおおおおおし! それじゃあ行ってこいトモミチぃいいいい!」
勇者は、トモミチを思いっきり蹴り上げ、魔物がいる舞台へ無理やり送り出した。
「ぎゃあああああああああああ! このグール殺しぃいいいいいい!」
トモミチの悲鳴が奥から聞こえる。
「ちょっとエデン! あなた王子の作戦聞いてたの⁉︎」
「ごめん。しょんべんしたくて身震いしてたんだよね。あんまり聞いてなかった。早く終わらせたくて」
「おぉい! そっちの身震いかい! もう作戦もクソもない。あいつが死ぬ前にみんなで助けるぞ!」
「勇者の羽衣あるし、大丈夫だと思うけどなぁ〜。UNOでもしながら様子みない?」
「そんな余裕あるわけないでしょ! 早く行くわよ!」
「早く助けておくんなまし〜! ヤバいのがおりまっせこいつぁ! 死ぬぅううううう!」
トモミチがなんとか応戦しているみたいだ。私たちは奥へと突っ走る。そこは頭上が大きく開けた場所で、空から光が差し込むほど開いている場所。少しの湖と広い空間であった。だが、そこにいたのはそんな美しいスポットとは対極のおぞましい魔物だった。
「嘘でしょ……まさか『マンティコア』じゃないあれ……」
「そんな馬鹿な……なんでこんな平和な土地に……」
「なにこいつ? そんなヤバそ?」
「ヤバいもなにも……伝説級の『S』ランク魔物よ……」
「うっそ〜! やっぱ予想当たっちゃったよぉ!」
「喜んでいる場合ではない! 俺たちは姿を見られた。もう、生きて帰れないかもしれない」
その姿はまさに脅威。ライオンのような風貌だが実物より一回りも、二回りも大きい。背中には漆黒の翼が生えており、その尾はサソリの尻尾で猛毒がある。その尻尾も生物として機能しているらしく、互いに人語を解することができる。
百獣の王が口を開く。
「久しぶりの生き餌じゃのぉ……こんなにもたくさんの人間と魔物を用意してくれるとはこの国は太っ腹じゃなぁ……」
猛毒を持つ尾がそれに答える。
「そうですねぇ。大人しくここへ来てみてよかったですわねぇ……美味しそうな人肉がいっぱいではありませんかぁ」
私たちはもう逃げることなど出来ない。現状を脱却するため、私はエデンに救いを求めた。
「エデン……この状況なんとかすることできる?」
「あいつを倒せばいいんだろ? まぁなんとかなるんじゃね?」
「あなたがそう言うなら信じるわ。私たちが時間を稼ぐ。絶対なんとかして見せてね」
「うん。でもちょっくらお花摘んでくるわ」
「え、いま行くのあなた⁉︎ 正気⁉︎」
「すぐ終わるからさ〜。まぁ気長にやってて〜」
「待ちないよエデン! あいつったらほんとにぃ!」
――さらに現場に緊張が走った。エデンがいない間、あの化物を抑えきることが出来るのだろうか。




