第41話 勇者、関係なくアネス活躍
「ちょっとぉおおお! そんなこと話しとる場合ちゃうでぇ! わて戦ってめちゃくちゃ切り裂かれとるでぇ!」
トモミチは勇者の羽衣のおかげでなんとか耐えぬいている。
「なんだこの小さいのは。いくら切り裂いても臓物が溢れでてこんぞ」
「なら、私に渡せてちょうだい!」
恐ろしい猛毒の尾がトモミチに襲い掛かる。針がトモミチに刺さろうとした時、私の魔法障壁がなんとか間に合った。だが、あまりの尻尾の勢いに障壁も一瞬で砕け散った。
「……くっ! トモミチ一旦戻りなさい!」
「あいよ〜! 助かったでぇ。あーちゃん!」
「おいギョロ美ちゃんはどこにいった?」
いつの間にかギョロ美ちゃんがいなくなっていた。ギョロ美ちゃんは瞬時に地形を把握し、利用するように湖に姿を隠していた。隙をみてマンティコアの背後から飛び出す。
「いくわよぉ! いでよトライデントちゃあん!」
ギョロ美ちゃんは唯一の武器、最強のトライデントを取り出した。
「まずはこれよ! 激流の舞!」
湖の水を大量に集めて激流をマンティコアにぶつけた。その衝撃はとんでもないものだった。だが……。
「いやぁ久しぶりの水浴びも気持ちいいものだぁ」
「そうねぇ。これほどの水は気持ちいいわ。ありがとうね」
ダメージはほぼなかった。だが、これで終わりなどではなかった。
「さすがに甘く見過ぎよ! 喰らいなさい! ボルテージ・ライトニング!」
天空から大きな雷が導かれるようにマンティコアへ直撃した。ものすごい衝撃音。トライデントはまさに自然を操ることができる唯一の武器。水を多量に被ったマンティコアにはその雷はとんでもない威力のように思えた。しかし、この攻撃をもってしても……。
「いやぁ〜肩こりやら腰痛が良くなったぞぉ! ありがとさん。わざわざ電気マッサージしてくれてのう」
「すごい効果ねぇ! あなたは生かして今後もマッサージしてもらいたいくらいだわ!」
これがSランク。トライデントをもってしてもほどほどのダメージしか与えることはできなかった。
「そんなぁ〜! あたしにはこれ以上できることないわよぉ! じゃあ、あとは任せたわ!」
ギョロ美ちゃんは湖を通って、海へと逃げた。
「あの野郎! 普通に逃げやがったよ! ダメだ、アネス。俺たちに勝ち目はない……逃げよう」
「お待ちください王子。トモミチやギョロ美ちゃんが時間稼ぎをしてくれたおかげで私にもできることがありそうです」
私は、ここにきてからずっと詠唱を行っていた。それは私の中で一番ダメージを与えられそうな魔法。その詠唱がもうすぐ完成する。
「う〜ん? なにやらぶつぶつと妙なことをやっている輩がおるなぁ……先にあやつを肉としてしまおう」
「女なら私に任せなさい! 一瞬で串刺しにしてやりますわぁ!」
マンティコアの尾が迫ってくる。だが、そこで私は不思議な光景を目の当たりにする。
「な、なによこれ⁉︎ 女がたくさんいるわよぉ⁉︎」
王子は斥候だ。魔法の力でアネスに変化し、分身をこれでもかと作り上げた。ほぼ、漫画で見た忍術であった。
「っく! どいつが本物か、わからないじゃないのよ! こいつかしら!」
多すぎるアネスの分身に苦戦するマンティコア。そうしているうちにアネスの魔法の詠唱は完了した。
「ありがとうございます。王子。これで終わらせます」
アネスの足元に巨大な陣が敷かれる。さすがの規模に少しマンティコアが焦った。
「な、なんだあの陣は。見たことがないレベルだ」
「さ、さすがに大丈夫よあなた。私たちに敵う生物はいないわ」
「せいぜい油断しているといいわ。これが、私の最強魔法よ。『アーク・ディザイシス』!」
先ほどと同じように、天空から光が舞い落ちる。だが、この魔法はトライデントとは桁違いの魔力光線がマンティコアに降り注いだ。
「な、なんだこれわぁああああああああああ!」
「ぁあああああああああああ! 焼き焦げるわぁあああああああああ!」
「これが、私の最強魔法。そして、原始から存在する魔法よ」
大きな地崩れが起きたようにマンティコアは倒れた。見事に伝説の魔物を倒してみせた。




