第37話 勇者、王子の事情をきく
「……ぎょ、魚卵だあああああああああ! いやだぁああああああああ!」
ギリギリ起きたが、目の前に恐怖の半魚人がいた。
「ぎゃぁああああああああああああ! 正夢だぁああああああああああ!」
「いい加減目を覚ませオルゴファアアアアアアアアス!」
勇者が、すでに目を覚ましている王子をぶん殴った。王子は壁まで吹き飛んだ。
「ちょっと! 今目覚ましてたわよ⁉ ていうかオルゴファスってだれ?」
「あっ、そうなの? よく見えなかった。名前違うっけ?」
「ヘンドリクス王子よ! あなたいつも名前だけは覚えないわね!」
「また長ったらしい名前だな……もう本人も好きな『魚卵王子』でいいんじゃないか?」
「勝手に変なあだ名をつけるな!」
殴り飛ばされた王子が立ち上がり、不満を嘆いた。
「なんでだよ。せっかくギョロ美ちゃんが魚卵好きにしてくれたのに」
「してもらってない! 夢にまで出てきたぞ。トラウマになったわ」
「そんなこといわないでよ~! また濃厚なチューしましょうね!」
「するわけないだろ! くっそなんでこんなやつらに捕まったんだ俺は……」
「ヘンドリクス王子。あなたは消息を絶ったと噂されておりました。なぜ、あな
たが私たちを尾行していたのですか?」
「……話せば長くなるが――」
「くっ……そんなことが……あの側近め! よくもこんな幼気な王子を!」
「いや、まだなにも言ってないから……わかったような口出さないでくれる?」
「長くなるなら、ゲームしてていい? あーちゃんに事情話しといて~」
「……本当に勇者なのか君は?」
長くなるのでまとめると、どうやら十八歳の時に第一王子との差に愕然とし、その小さな体躯を生かし、斥候になると決意したとのこと。消息は不明として、その存在は王と側近しか知りえないらしい。
今回は王の命令で、勇者の様子を逐一報告していたらしい。
「ふ~ん。じゃあこいつ裏切り者じゃん。一回、聖剣いっとく?」
「聖剣をそんなぞんざいに扱わないでよ! 王子にも事情があるんだから」
「そうなんだ。王位継承権を確実に得るであろう第一王子に側近はみな寝返ってしまったのだ。私には、このような道しかなかった。兄の不正を暴くために」
「そういうことか……岩牡蠣を生で食べるってなると、そのままジュルっと食べちゃいがちだが、貝殻に口を接触させないことが、ノロウイルスにならないために一番大事ってことか」
「うん全然違うね……なんの話してんだよ」
「あぁ……違うのか」
「要は、兄に王位継承権を取られちゃいそうって話よ。あの第一王子は確かに厄介よね……」
「確かに。この弟あればあの兄ありってな」
「こいつ本当に失礼だな! 一応、王子なんだぞ!」
「んで、今回は俺たちなにをすればいいんだよ」
「俺は、お前たちが討伐依頼にちゃんと行ってくれるか見てたんだよ」
「行ったよなみんな?」
「確か行ったでげすな」
「あのドラゴン強かったですわよねぇ~」
「なぁ~めっちゃ苦戦したもんな。あと一回死んだら任務失敗だったもんな」
「それゲームの話だろ! こっちの世界での話だよ! アネス。どうなってるんだ?」
「それに関しては、本当に面目ないです……」
「あーちゃんが二回も死んだもんなぁ」
「あれはヒヤヒヤしましたぜぇ~」
「まだゲーム初心者だからしょうがないわよねぇ~」
「そんな慰めはいいから早く依頼に行ってくれよ!」
――第二のツッコミ役が増えそうになっている勇者一行であった。




