第30話 勇者、守護天使をも説得する
「そうは言ってもハマちゃんさぁ~。さすがに極東は遠くない?」
「いいえ。あなたなら必ずやり遂げられるはずです。てかやれ。めっちゃいい剣とか魔法とか授けたんだから」
「え〜。でも、それはお前が魔王からお金を――」
「あぁ! それは言っちゃダメですよ! お前いい加減にしろ!」
「条件はお互いイーブンだし、魔王城行くのにどんだけ時間かかってもいいって言ったのはハマちゃんじゃ〜ん」
「……それはそうですが、さすがに向かうフリだけはしてほしいと言いましたよね?」
「今、そのフリをするための修行中だよ」
「そんなわけないだろ! ぜんぶ見てたわ! なんか意味わからん野球してたな! あんなん野球じゃないぞ!」
「えっ⁉︎ あれ野球じゃなかったんどすか⁉︎」
トモミチが驚愕していた。
「おーい、言うなよつまんないな。まぁそれ以外にもまだやらなければならないことがたくさんあるんだよ」
「やらなければってどうせ国民からの取り立てだろ! なんだ勇者金融って! 国から月給ももらって、さらに私からの口止め料もあるのに……」
「俺がなんのためにお金を集めているのか知っているのか!」
普段、感情を露わにしない勇者エデンが声を張り上げた。
「ハマちゃんよ。お前は金しか興味がないだろうが、俺は違う。この国の裏路地にある貧民街を知っているか?」
「そこまでは見てなかった。なにかあるのか?」
「あそこに俺はお金を寄付をしているんだ。正体がバレないように身を隠しながらな!」
ハマエルでも気づくことのできないことを本当にしているのかわからなかったが、この勇者が本気を出せばそれくらいできる。
「俺はまず、この国の腐敗をなくす! そうしないことには魔王討伐など夢のまた夢! 討伐したところで貧民街の人たちはなにも変わらないんだ!」
エデンの説得は皆を惹きつけた。ハマエルだけではなく、王や臣下、そして仲間たちをも。
「だから、もう少し時間をくれ。ハマちゃん」
「……そういうことだったのか。わかった。本当にいくんだろうな?」
「あぁ。俺を信じてくれ。いつかは絶対に魔王を討伐してみせる」
「私がこのように現世に姿を現すことはまた先になるだろう。頼むから行ってくれよ」
「あぁ任せておけ。お前が魔王からお金のちゃくふ――」
言葉を聞く前に守護天使ハマエルは去って行った。




