第29話 勇者、名前を思い出す
「……そなたの実力はわかった勇者よ。世界にはこうしている間にも魔物による危機が迫っておる。今すぐ冒険に出ることはできんか?」
「……ちょっと考えます。無理っすね」
「早すぎない⁉︎ もっと考えてくれてもよくないか?」
「ちょっとまだ割に合わないんで……というか、魔王城ってどこにあんの?」
「あっ知らなかったんだ……アネスよ、教えてなかったのか?」
「……まぁ雰囲気で言ったつもりだったのですが」
「あっ。これあーちゃん嘘ついてんじゃないの〜?」
「あらまぁ! 優秀な賢者様でもそんなことがあるのねぇ!」
「こりゃあおったまげた! こんな優秀な人でも一番大事な任務忘れたりするもんなんですなぁ! ワハハハハ!」
私は、トモミチにだけ雷の魔法を落とした。
「いったあああああああああああ!」
「ごめんなさい。八つ当たりよ」
「そんな堂々と八つ当たりって言う人います⁉︎」
「まぁそんなこんなで聞いてなかったんだ。魔王城はどの辺だ?」
「魔王城は遥か極東の島国にあるのだ」
「ここって一番西だっけ?」
「さようだ」
「この世界って丸い?」
「平面であると言われておる」
「じゃあ東までいってさらにまた行かないと行けないってことかぁ……」
「そうなるの」
「わかった。なら、改めて遠慮しておく」
「いや、断るとかないから! お主だけじゃぞ、そんなにやる気がないのは!」
「だって遠いし……」
拒否ばかり続けているところに、急に天空から光が降り注ぎ。使者が舞い降りた。いつか見た守護天使ハマエルだった。
「なっ……まさかあれは、『守護天使』様では⁉︎ 初めてお目にかかるぞ!」
人間、魔物すべての者がその崇高なる存在に頭を下げて敬服していた。もちろん、勇者はなにもしない。
「勇者エデンよ。約束と違うではないか。頼むから魔王城に行ってくれ」
「……あっ俺のことか。そういえばエデンって名前だったわ」
「名前忘れてたのあなた⁉︎ そんなことある⁉︎」
私は思いがけず、ツッコんでいた。




