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異世界なまけもの備忘録  作者: フトカワ
第一章 勇者との邂逅
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第3話 勇者、トモミチ?

 男がその魔物を紹介する。


「おお、おいでなすった。こちらが勇者様だ。名前は……トモミチだったよな?」


「ヘイ。あっしが勇者トモミチでやんす。よろしゅうです」


 明らかにおかしい。こんなグールが本当に勇者なのか? じゃあこの男はなに?


「……本当にあなたが転生勇者なのですか?」


「ヘイ。転生したらこんな姿だったもんで……困ったもんどすえ」


 しゃべり方もおかしい。どこの地方の方言なのか。

 先ほどの男が喋りだす。


「まぁ、そういうことなんだ。そんで、ここは勇者様の家じゃないんだよ。じゃあ勇者トモミチ。このボンクラを案内してやってくれ」


「ヘイ。それじゃあ行くでやんすよ。ボンクラ乳女しゃま」


「こいつら……勇者じゃなかったらとっくに処罰しているところよ……」


 怪しすぎるグールに案内され、その後を付いていく。

 だが、どんどん人通りが少ない町の裏通りに連れていかれている。


「……勇者トモミチ様。本当に家はこっちにあるのですか?」


「……ケケケ。なにを言ってるでごんす? 今ごろ気づいても遅すぎるでやんすよ」


 気づいたときには、十体以上のグールに周りを囲まれていた。私は騙されたのだ。


「あっしが勇者なわけなかろうもん! お前はあっしたちのただのエサですわなぁ!」


 そんな気しかしなかった。最初からこんなグールが勇者などとは思っていなかった。


「それじゃあ、死んでもらうどすえええええええぇぇぇぇぇぇええええ」


「……顕現なさい。イフリート!」


 そう唱えると、グールたちの頭上に火の精霊イフリートが現れた。


「はわわわわわわわわわわわわわわわ………」

 グールたちが分かりやすく怯える。


「ここにいる魔物たちを燃やし尽くしなさい!」


 一瞬であった。イフリートの業火で周囲のグールたちは燃えカスになった。だが、一匹だけ取り逃がしたようである。先ほどの案内人トモミチの姿だけなかった。逃げ足だけは早かった。


 私はいらだちを隠しきれないまま、もう一度、先ほどの大豪邸に戻った。おそらく、トモミチもここにいるのだろう。


【ピンポーン】という音と共に今度は扉が開いた。先ほどの男が答える。


「おお~。どうしたこんなところで。足洗いに来たのか?」


「そんなわけないでしょ! そんな私の足は臭くないわよ!」


 そういった男の後ろでグールが水場で泳いでいた。


「おぉい! そこにさっきのグールいるでしょ⁉ あいつの仲間に殺されかけたわよ!」


「えっなに言ってんだよ? さっきからずっといたぞ? なっトモミっ……トモヒサ!」


「今、トモミチって言おうとしたでしょ⁉ 絶対あいつさっきの逃げたやつだわ」


「ち……違いますぜよ。イフリートなんか見てないでっせ……」


「うおおおい! イフリート見てるじゃない! やっぱりさっきのやつじゃないのよ!」


「まぁまぁ。そうカリカリなさんなよ。勇者なんだから大目に見てあげなよ」


「勇者がそんなことするか!」

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