第3話 勇者、トモミチ?
男がその魔物を紹介する。
「おお、おいでなすった。こちらが勇者様だ。名前は……トモミチだったよな?」
「ヘイ。あっしが勇者トモミチでやんす。よろしゅうです」
明らかにおかしい。こんなグールが本当に勇者なのか? じゃあこの男はなに?
「……本当にあなたが転生勇者なのですか?」
「ヘイ。転生したらこんな姿だったもんで……困ったもんどすえ」
しゃべり方もおかしい。どこの地方の方言なのか。
先ほどの男が喋りだす。
「まぁ、そういうことなんだ。そんで、ここは勇者様の家じゃないんだよ。じゃあ勇者トモミチ。このボンクラを案内してやってくれ」
「ヘイ。それじゃあ行くでやんすよ。ボンクラ乳女しゃま」
「こいつら……勇者じゃなかったらとっくに処罰しているところよ……」
怪しすぎるグールに案内され、その後を付いていく。
だが、どんどん人通りが少ない町の裏通りに連れていかれている。
「……勇者トモミチ様。本当に家はこっちにあるのですか?」
「……ケケケ。なにを言ってるでごんす? 今ごろ気づいても遅すぎるでやんすよ」
気づいたときには、十体以上のグールに周りを囲まれていた。私は騙されたのだ。
「あっしが勇者なわけなかろうもん! お前はあっしたちのただのエサですわなぁ!」
そんな気しかしなかった。最初からこんなグールが勇者などとは思っていなかった。
「それじゃあ、死んでもらうどすえええええええぇぇぇぇぇぇええええ」
「……顕現なさい。イフリート!」
そう唱えると、グールたちの頭上に火の精霊イフリートが現れた。
「はわわわわわわわわわわわわわわわ………」
グールたちが分かりやすく怯える。
「ここにいる魔物たちを燃やし尽くしなさい!」
一瞬であった。イフリートの業火で周囲のグールたちは燃えカスになった。だが、一匹だけ取り逃がしたようである。先ほどの案内人トモミチの姿だけなかった。逃げ足だけは早かった。
私はいらだちを隠しきれないまま、もう一度、先ほどの大豪邸に戻った。おそらく、トモミチもここにいるのだろう。
【ピンポーン】という音と共に今度は扉が開いた。先ほどの男が答える。
「おお~。どうしたこんなところで。足洗いに来たのか?」
「そんなわけないでしょ! そんな私の足は臭くないわよ!」
そういった男の後ろでグールが水場で泳いでいた。
「おぉい! そこにさっきのグールいるでしょ⁉ あいつの仲間に殺されかけたわよ!」
「えっなに言ってんだよ? さっきからずっといたぞ? なっトモミっ……トモヒサ!」
「今、トモミチって言おうとしたでしょ⁉ 絶対あいつさっきの逃げたやつだわ」
「ち……違いますぜよ。イフリートなんか見てないでっせ……」
「うおおおい! イフリート見てるじゃない! やっぱりさっきのやつじゃないのよ!」
「まぁまぁ。そうカリカリなさんなよ。勇者なんだから大目に見てあげなよ」
「勇者がそんなことするか!」




