第25話 勇者、危機感なし
「勇者さま。こらぁえらいこっちゃでっせぇ……我々が野球している最中に近くまで王様が――」
その時、ギョロ美は容赦なくトモミチの口目掛けて球を投げた。トモミチは気合いで口キャッチした。最後に私がバットでトモミチのケツにフルスイングした。
その瞬間、トモミチのケツはバットの衝撃で凹んだ。
「い、痛すぎますってええええぇぇぇぇええええ!」
「あっ、ごめんなさい。なんか報告してる時に」
「いや、それよりもこれは殺人行為でっせ⁉︎」
「あーちゃん。やりすぎだよ~。治癒魔法できる?」
「ちょっとお尻が骨ごと凹んでるわよごめんね……ヒーリング」
なんとか、アネスの治癒魔法でトモミチのケツは治った。
「ちゃいまんねん! 今、勇者宅へ王様が部下引き連れてきとるみたいでっせ!」
「な、なんだとぉ⁉︎」
そう言いながら、勇者は野球に飽きて、すでにサーフィンしていた。
「危機感無さすぎでしょあんた⁉︎ トモミチ。その情報は間違いないのね?」
「そうどす。すでに勇者宅を護衛をしとるグールが何匹かやられとります……」
「まずいわね。こんな状況を見られちゃ……」
そう言いながらも、私とギョロ美ちゃんも砂浜で城を作っていた。
「……あんさんら人間が一番危機感ないんとちゃいます?」
「慌てることないさ。俺たちは、ただ真剣に冒険の準備をしているだけだぜ」
サーフィンにも飽きたのか、私たちが作った城に顔を突っ込んで勇者は告げる。
「準備なんてなんもしてないでっしゃろわてら⁉」
「私が言うわ。でも、魔物たちと遊んでいるところ見られたら終わりかもねぇ。アハハ!」
「アネスや。これは一体、どういうことじゃ?」
ロマーニ師の声が聞こえた。その声はかなり近くから聞こえてくる。だが、姿は見えない。
「……‼ そこかぁあああああ‼」
勇者が気配に気づいたのか、バットで思いっきり殴った。
「いったぁぁあああああ! それわしだ。兜あってよかった~」
なにもない空間から六名ほど姿が現れる。大勢ではない。どうやら、魔法具の一つ『すっごい透明になるでっかいマント』を使ってここまで来たらしい。
「あぁなんだ。マカロンと……こいつなんだっけ? 鎧着てるからわからんわ」
「声でわかるだろう! この国の王。マルクスディアム・ゴードンだ。いい加減覚えろ!」
「あぁ。ごーちゃんねごーちゃん。久しぶり~」
「こんの勇者は……というかここはなんだ⁉ 大豪邸が建っておるぞ⁉」
「うん。すごいっしょ? お前のあばらやの百倍すごいからね」
「あ、あばらや⁉」
横にいた私が勇者にささやく。
「ねぇ……さすがに調子に乗りすぎよ。私が対応するわ」
「うん、わかったぁ~」
「あなた本当にやる気ないわね……」
勇者は、本当に危機感がない。今の状況はかなりまずいことになっている。魔王城に行く気がない。
しかも、魔物と遊んでいる。しかし、一番まずいのは報告役の私だ。なんとかせばならない。




