第22話 勇者、魚人も仲間にする
「そんな……なんていう力なの……なんでまだ生きてるのあの方は……」
「いや、ちゃんと俺は貫かれたよ。ただ、俺自身には当たっていないんだ」
勇者の足元にトモミチがいた。なぜか焼き焦げていた。
「グール? どういうことなの?」
「こいつの着てる羽衣、どんな攻撃でもどっかの誰かにそのまま移し変えることができるんだよ。だから、こいつを盾にしてみました」
「あんさぁん……さすがに死にかけましたでぇ」
その時、北の大国スウェルクスの大工タパスが、一番大事な工具を地面に落とし、親方に怒られて退職を決意したという……。
「そんな羽衣聞いたことがないわ……あなた本当に勇者様なのね」
「一応ね。でも、魔王城行きたくないんだよ。遠いし」
「……たったそれだけの理由なの?」
「……実は俺にはやるべきことがあるんだよ」
「そうやったんですかぁ。一体、なんですの?」
「……デビルクエスト十作品を一気にクリア」
「……あぁゲームですかいな……」
「……うん。やりたいからさ」
「そんな溜めて言うセリフではないでっせ」
ギョロ美は人間として規格外の勇者に心を惹かれた。
「勇者様……あなたについていかせてもらえないかしら?」
「えっ? ついていくって言ったって俺この家にいるだけだよ?」
「それでいいのです。邪魔な敵はわたくし共が排除いたしますわ。ね、グール」
「えっ⁉ わてはそんなつもり……」
「はぁこらぁ⁉ 元はといえばお前が勇者を襲いたい言うたんやろがい⁉ 圧倒的に敗北したんやから従うのが当然やろがいゴラァ!」
男の部分のギョロ美が出た。トモミチは従うしかなかった。
「分かったわい! 怖いんじゃいあんさんがそうなると……そういうことや、にいちゃん。わてらであんさんを邪魔もんから守ったるさかいに!」
「えっその魚人オカマだったのか……」
「あらごめんなさい。ちゃんと女よ」
「だよな? あっぶね〜騙されるところだったよ」
(勘がいいのか、アホなのかまったくわからなへんなぁ……)
またトモミチは心で呟いた。
そして、トモミチにはひとつ懸念すべき点があることをギョロ美に聞いてみた。
「ギョロ美ちゃん。この勇者に従うのはええけど、自分の国やら家のことは大丈夫なんかい?」
「……それは一旦、置いておくわ。今、お兄様もお父様もそれどころじゃないみたいだし」
「なんだ? もしかして親の電動自転車のバッテリーでも無くしちゃったか?」
「そんなしょうもないことで喧嘩するわけなかろうもん!」
「というか電動自転車ってなにかしら?」
「めっちゃ早いやつ。こっから魔王城まで一日でいけると思うよ。しらんけど」
「しらんのかいな!」
「まず、魔王城がどこにあるかも知らんしなぁ」
「なんというやる気の無さや……」
「まぁいいや。とりあえず二人には頑張って俺の警護してね。いつか王とかくるかもしれないからその時も全力で襲いかかってくれ。俺の名前は出さずに」
「あんさんわてらに全責任おわせようとしてへんか?」
「………………じゃあ帰ろうか」
「おぉい! 露骨に間がありすぎやろぉ!」
「そんな勇者様でもわたくしは、一生ついていきますわぁ!」
こうして俺は仕方なく、グールと半魚人を仲間に加えた――。
――こんな前日譚を聞かされた私アネスはこう叫んでしまった。
「いや、本当に勇者サボりに来てんじゃん!」




