第21話 ギョロ美ちゃんと出会う
「ちょっとあんた。いつ私たち突撃すんのよ。早くこっちまで追い詰めなさいよ」
「うまいこといかへんのやぁ……警戒されてんのか全然こっちの方までこうへん……」
「様子見てる限りかなり舐められてないあんた? あと、言葉も変だし」
「それもこれも全部あいつのせいなんや! 魔物としてこれ以上プライド傷つけられたら許されへんのや!」
「まぁいいわ……あいつを懲らしめたらあなたたちグールは私たちの地上侵略の手伝いをすること忘れちゃないわよね?」
「うるさいのぉ! わかっとるわい。黙ってみときんさい」
トモミチはそのような約束を交わしていたが、一切その気はなかった。半魚人が勇者を懲らしめ奴隷紋が消えた時、一斉に半魚人どもへ襲い掛かろうと考えていた。
海岸近くで密会を交わしたトモミチはすぐに戻ったのだが、勇者はすでにビーチバレーに飽きていた。そして。
「あーなんか海斬りたくなってきたから斬ろっかなー! いでよ聖剣!」
聖剣エクスカリバーを取り出した。
「えっ……なによあれ」
ギョロ美が驚く。
「ゆ、勇者さまぁ⁉ 一回落ち着きなは――」
勇者はもうなにも聞こえていなかった。
「死ねええぇぇぇえええええ! 半魚人共おおおおおおおぉぉぉぉぉおおおお!」
聖剣を振りかざした。それだけで大海を切り裂き、海を真っ二つにした。幸いにも巻き込まれた半魚人はいなかった。あまりの衝撃に海から魚が降り注ぎ、割れた海が一つに戻る。
「なんだ。魚臭かったから、半魚人とかいるのかなって思ったのにいなかったよ」
大半の半魚人は恐れおののき逃げていった。だが、ギョロ美ちゃんは圧倒的な勇者の力に驚愕していた。
見たことのない力を前にギョロ美はなぜか恋に落ちていた。深海であの強さの者はいない。ただ純粋に強い人間に惹かれたギョロ美は地上にあがり、勇者と対峙した。
「うわっなんだお前。生臭いな」
「勇者様。わたしく半魚人のギョロ美と申します。先ほどの勇者様の剣さばき見させていただきました。あの強さ。まさに神がかりですわ。そんなあなたに一目惚れしてしまいましたわ。わたくしとお付き合いしてもらえせんか?」
「いやいや! 心変わり早すぎでっしゃろ!」
「惜しいな。半魚人じゃなかったらなぁ……」
(惜しかったんだ……)
トモミチは心の中でつぶやいた。
「そんな……わたくしが半魚人じゃ無ければお付き合いできましたの⁉」
「そうだな……あと『通勤にキャンピングカー買っちゃいましたぁ』みたいな女性だったらよかったんだけど」
(キャンピングカーってなんや……?)
再度、トモミチは心の中でツッコんだ。
「……そうなんですの。仕方ないですわね。それじゃあ、あなたとはここで心中するのみですわあああああ!」
そう叫んだギョロ美の手にトライデントが握られていた。選ばれた魚人しか持つことの許されないトライデント。それをギョロ美は所持していた。
「死んでくださあぁぁあああああああい!」
トライデントから放たれた雷が勇者を貫いた。勇者は死んだ。誰しもそう思った。だが。
「うんうん。いい焼き加減になったよ。ありがとう」
先ほど海を切った時に降ってきた魚を、トライデントの雷で焼いて、美味しく召し上がっていた。




