第19話 勇者、グールと出会う
そんな怠惰な生活を送っているとついにグールが来た。家の付近はどうやらグールの生息地に近かったらしい。その為、格安で王が適当に見つけてきた土地だった。
海岸で寝そべり、カニに爪を切ってもらっていると、気が付いたときには完全に周りをグールに囲まれていた。
「うわっなんか臭いと思ったら魔物かよ~。今めっちゃ忙しいのに」
「バルグルブマンデルグフス! デネスフ(お前はもう逃げられない! 金を置いていけ)」
(なんか喋ってるよこいつ……わけわかんねぇ)
「なるほどな。大腸菌って意外と大事だってことが言いたいんだよな」
「グルッ⁉ ブルウウフウグル(えっ⁉ 全然違うんだけど……)」
「じゃあ一旦、臭いからこの辺掃除するわ! 死ねぇええええええ!」
すぐさま聖剣を取り出し、振りかざした。それだけで大半のグールは死んだ。その容赦の無さに怖気づいたのか、ほぼすべてのグールがすでに土下座していた。
「グルウグルムフスクルブルグブル(降参です。しもべにしてください)」
「なるほどなぁ。だから、車検ってのは二年ごとに受けろってわけね」
「グウウル⁉ ブルウウフウグル?(はい⁉ なにいってんの?)」
「まぁお前なんかリーダー的なやつだから家入れば? それ以外のやつは入ったら八つ裂きな」
そういって一匹のグールを招き入れた。そのグールはなにをされるのかと震えていた。
「どうした。ちょっと寒いか? ならこれやるよ。俺んちで最も要らない羽衣」
めちゃくちゃ上等な羽衣をグールにあげた。
「あとさぁ。なに言ってるか分かんないから日本語覚えてもらおうかな」
日本語の教科書を適当に用意した。その中には、関西弁や京都弁、熊本弁など多種多様な方言も混ぜてしまった。
「あ、ていうか読むことができないか。なら、文字をそのまま頭に入れてやるよ」
俺は、記憶魔法を用いてすべての本の暗記をグールの脳内におこなった。それは無理やり頭に教養をねじ込む作業の為、かなりの苦痛を伴なった。
グールは半狂乱状態で苦しんでいた。
「xmkhんghヴぃぐるうぐxぐwbdwxxw」
「そうだろ。意外と気持ちいいと思うんだよなぁこれ」
「すぐづうぇryそqhすいぇいいてふぉる」
「おっ。ちょっとずつ日本語言えてきてるんじゃないのか」
「このままじゃ死ぬつかあさいよ! 痛い痛い!」
「じゃあ漫画読んでるから終わったら教えてくれな~」
「もう終わってますがなぁ! 死ぬ死ぬ! これ以上の語彙は死ぬでさぁ!」
「あれ? なんか方言おかしいけど大丈夫かな? まぁいいかこの辺にしとくか」
「あんさん舐めんのも大概にしてつかぁさいよおおおおおお!」
グールは襲ってきたが、持っていた聖剣で切り裂いた。あたりは血の海になった。
「あ、せっかく教えたのに切り裂いちゃった。まぁいっか」
「いやなにが『まぁいっか』なんじゃいあんさん! いったかったでぇ!」
「あれ? なんで生きてんのきみ?」
「いやぁ~どうやらこの羽衣のおかげらしいですわなぁ……どんな攻撃もどこかへ受け流すらしいですわぁ」
この羽衣は受けた攻撃をどこかの誰かに不幸として受け流す能力がある。
「そうなんだ。便利でよかったねぇ。最強のグールなんじゃないそれ?」
その時、東にある海洋国家マルゲニア興国の漁師コーリアンは朝歯磨きするのを忘れ、口が臭く部下から物理的な距離だけでなく、心の距離も置かれていたという……。




