第18話 勇者、豪邸を手に入れる
土地は、かなり広かった。目の前には海も広がっており、ビーチまですぐに行ける。
そして俺には、具現化できる能力がある。手を掲げ対象物を頭の中に思い描き、目を閉じて家を創造した。
今までの俺では確実に住むことのできなかった家。その家が目を開けた時には完成していた。いや、創造されていた。
アメリカの大富豪が住む豪邸を創造した。どでかいプール付きの庭。部屋数は二十部屋を超えている。さながら、アメリカのビバリーヒルズの一等地だ。
一階には最新の家具や家電、調理器具。そして二階には漫画喫茶さながらの漫画、最新のゲーム機器なども揃え、何日でも過ごせる空間を創り上げた。
――これですべての準備が整った。俺はこの異世界生活を『サボりきる』
そこに、例の守護天使が降臨してきた。
「おい! なんだこの家は! そんなことのために能力を授けたわけじゃないぞ!」
「あれ。どなたか知りませんが勝手に入らないでもらえます?」
「ちょいちょい! 忘れるの早すぎだろ。守護天使ハマエルだよ!」
「あぁ、うんこ天使ハマちゃんね。どうしたのこんなところで」
「てめぇ! あれから念入りに洗ったからもう茶色くないぞ! というか、なんだこの家!」
「いいだろ? ビバリーヒルズの家を再現したんだ。全面鉄筋コンクリート」
「お前こんなの建てたらもう魔王城行かないだろ!」
「なに言ってんすかぁ。行きますよいつかは」
「この野郎! お前にはいってもらわないと困るんだよ! 魔王との契約で――」
「魔王との契約? まさかハマちゃん……なんか隠してることあるでしょ?」
「……なんもないってそんなこと。守護天使だよ私……?」
「洗脳魔法。ブレインコントロール」
俺はハマちゃんの思考を簡単に乗っ取った。
「はい。私は現代で死亡した無垢な人間を勇者にして、無謀な冒険へと送り出し、魔王の供物にすることで勇者斡旋料を魔王様からいただいています」
「そういうことか。これってバレたら相当やばい?」
「はい。天使最高位の熾天使セラフィム様に知られるとマズいです」
「わかった。正気に戻れ」
「……ぷはぁ! おい今なんかしただろ!」
「え~と、今から君は斡旋料を俺にも口止め料して支払いを命じます」
「なんでそのことを知ってんだよぉおおおお! 一番やばいやつに知られたよ最悪……」
「熾天使様の連絡先教えてよ~。なんとなくお知り合いになりたいからさぁ」
「最悪だ。なんでこんな奴に……わかった。分け前は渡す。だから頼むから言わないでくれ」
「七対三ぐらいかなぁ」
「……嘘だよな? 俺が七だよな?」
「え~と。熾天使様の連絡先はっと……」
「わかったわかった! もうそれでいい! わたくしめが悪うございました!」
「うん。本当に悪いからね」
「くっそおお! でも頼みがある。勇者を西の国に転生させたことは魔王軍側に言ってあるんだよ。だから、魔王城に向かうフリとかでいいからしてくれ! 頼む!」
「えぇ~しょうがないなぁ。フリだけだよフリだけ」
「なんで俺こんなやつ転生させちゃったんだろ……」
「じゃあよろしくな。月末払いで払えよ」
「はいわかりました……」
守護天使ハマエルは去っていった。完全勝利だった。これで王国からの月給と口止め料だけでも充分に暮らすことができる。あとは、俺のしたいようにするだけだ。
そこからは、自堕落な生活が永遠に続いた。あるときは漫画だけ読んでいたら一日が終わり、ある時はゲームをしているだけで終わった。なにもしなくても給料は入る。
――これが究極のニート生活だった。異世界で俺は真の人間の生活を手に入れた。




