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異世界なまけもの備忘録  作者: フトカワ
第二章 勇者の転生
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第17話 勇者、城を出る

「……もういいわかった。用意しよう。全然本気さが伝わってこんがな」


「あぁ。絶対に魔王を倒して見せる! あと、準備金として毎月金貨三十枚くれ」


「わかったそれくらいは……って毎月⁉ 多くないかそれ⁉」


「死ぬかもしれないんだぞ! その死の旅に多い少ないは王としてどうなんだ?」


「えぇ~、にしても多くないかそれ……国の財源やばいことになっちゃうよ~」


「文句言うな! 行くのは俺だぞ。もし失敗したとき……それはこの国の責任になるぞ」


「……確かにそれはそうなんだが……」


「もし失敗したら、ゴーグルマップの口コミで低評価をつけるぞ」


「なにそれ⁉ この世界にないモノで低評価付けられるのなんか嫌だな」


「まぁそういうことだ。とりあえず金を用意してくれ。あと、土地を見に行きたい。内見の準備ができたら教えてくれ。俺は一旦、部屋に戻る」


「……寝るなよ?」


 ふふっと信用できない笑顔をその場に残し、俺は部屋に戻った。爆速で寝た。


「……さま~。ゆうしゃ様~。また寝とるのう。そろそろこやつを起こす方法を考えんとな……魔法でも使ってみるかの。雷の魔法じゃ。食らえ!」


 そういって使用した魔法がはね返り、ロマーニ師に直撃する。


「あいたああああああああぁぁぁああ! でも不思議ときもちいいいぃぃぃぃいいいい!」


「うるせぇんだよ! キショドMじじい! はっ倒すぞ!」

 その勢いでバックドロップした。


「ぐふううううううううう! 首折れるうううううううう!」


 念のため、俺に手を出す奴がいるかもしれないと思い、リフレクトの魔法障壁をかけておいてよかった。変態くそジジイが釣れた。


「手出てるよ勇者様ああああああ! 老体にバックドロップは死ぬぞよ!」


「あぁごめんマカロン。あれから結構経ったか?」


「そうじゃの。また二日くらい経っとるぞ。王ブチ切れじゃ」


「そうなのか。悪気はないんだがな」


「そうは思えんのじゃが……。そなたの言っていたお金と土地が準備できたみたいだ

 ぞ」


「おおそうか。忘れていた。なら、王から金もらおうかな」


「そうじゃな。目覚めの挨拶に行った方がよろしいぞ」


「あんまり目覚めた後に見たい顔ではないけど行くしかないな。金の為に」


 王の間へと向かった。さすがに勇者の自由すぎる行動に憤慨していた。


「……勇者よ。改めて聞く。本当に冒険へ行くつもりはあるのだな⁉」


「あぁ。俺はいつだって本気だ」


「毎回そう言うが、枕の跡が顔に刻み込まれおるぞ」


「……くっ! 昔の傷がうずきだしたか……」


「絶対そんなんじゃないだろう!」


「やっと仮眠という転生の後遺症が治った。こっから俺は本気を出すだろう。おそらくな」


「なんで自分の意思次第なのに『おそらく』なの?」


「とりあえず、準備を進めたい。準備金と土地の内見に行きたい」


「……わかった。おい。金を持ってこい。土地はその地図に示しておる。馬車を用意するか?」


 臣下が金貨と地図を持ってくる。


「いや、馬車は大丈夫だ。魔法で現地へ向かう」


 ロマーニは疑問に感じた。勇者は浮遊魔法も使えるのかと。簡単な魔法ではない。


「勇者よ。土地に行ったとしても住む家などはないぞ。大丈夫なのか?」


「多分、なんとかなると思う。ならくてもどうにかしてもらうわ」


 周りは言っている意味がわからなかった。誰か助けてくれる者でもいるのだろうか。


「あぁ~結構遠いんだなここから。よし! じゃあ転移魔法~」


 簡単に言うと空間が引き裂かれ、そこにワープホールが形成された。

 ロマーニも初めて見る魔法だった。そんな魔法を使える者は見たことがなかった。


「なんじゃその魔法は⁉ おぬしさっきのリフレクトといい、すごい魔法使いなのでは⁉」


「えっなんか頭で想像したらできるようになっているらしい。便利だよねこれ」


 そういうと、一応、世話になった人物たちへ礼を言う。


「それじゃあ、ありがとうございました! おかげでよく眠れました!」


「待て! そういえばお主の名前をまだ聞いておらんだ。名は?」


「俺は勇者え……えま、えて、えまだったかな。もういいや。エマニエルぼうや――」


 そこで、ワープホールは閉じてしまった。


「……『えまにえるぼうや』なのか……?」


 城は、困惑に包まれていた。

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