第17話 勇者、城を出る
「……もういいわかった。用意しよう。全然本気さが伝わってこんがな」
「あぁ。絶対に魔王を倒して見せる! あと、準備金として毎月金貨三十枚くれ」
「わかったそれくらいは……って毎月⁉ 多くないかそれ⁉」
「死ぬかもしれないんだぞ! その死の旅に多い少ないは王としてどうなんだ?」
「えぇ~、にしても多くないかそれ……国の財源やばいことになっちゃうよ~」
「文句言うな! 行くのは俺だぞ。もし失敗したとき……それはこの国の責任になるぞ」
「……確かにそれはそうなんだが……」
「もし失敗したら、ゴーグルマップの口コミで低評価をつけるぞ」
「なにそれ⁉ この世界にないモノで低評価付けられるのなんか嫌だな」
「まぁそういうことだ。とりあえず金を用意してくれ。あと、土地を見に行きたい。内見の準備ができたら教えてくれ。俺は一旦、部屋に戻る」
「……寝るなよ?」
ふふっと信用できない笑顔をその場に残し、俺は部屋に戻った。爆速で寝た。
「……さま~。ゆうしゃ様~。また寝とるのう。そろそろこやつを起こす方法を考えんとな……魔法でも使ってみるかの。雷の魔法じゃ。食らえ!」
そういって使用した魔法がはね返り、ロマーニ師に直撃する。
「あいたああああああああぁぁぁああ! でも不思議ときもちいいいぃぃぃぃいいいい!」
「うるせぇんだよ! キショドMじじい! はっ倒すぞ!」
その勢いでバックドロップした。
「ぐふううううううううう! 首折れるうううううううう!」
念のため、俺に手を出す奴がいるかもしれないと思い、リフレクトの魔法障壁をかけておいてよかった。変態くそジジイが釣れた。
「手出てるよ勇者様ああああああ! 老体にバックドロップは死ぬぞよ!」
「あぁごめんマカロン。あれから結構経ったか?」
「そうじゃの。また二日くらい経っとるぞ。王ブチ切れじゃ」
「そうなのか。悪気はないんだがな」
「そうは思えんのじゃが……。そなたの言っていたお金と土地が準備できたみたいだ
ぞ」
「おおそうか。忘れていた。なら、王から金もらおうかな」
「そうじゃな。目覚めの挨拶に行った方がよろしいぞ」
「あんまり目覚めた後に見たい顔ではないけど行くしかないな。金の為に」
王の間へと向かった。さすがに勇者の自由すぎる行動に憤慨していた。
「……勇者よ。改めて聞く。本当に冒険へ行くつもりはあるのだな⁉」
「あぁ。俺はいつだって本気だ」
「毎回そう言うが、枕の跡が顔に刻み込まれおるぞ」
「……くっ! 昔の傷がうずきだしたか……」
「絶対そんなんじゃないだろう!」
「やっと仮眠という転生の後遺症が治った。こっから俺は本気を出すだろう。おそらくな」
「なんで自分の意思次第なのに『おそらく』なの?」
「とりあえず、準備を進めたい。準備金と土地の内見に行きたい」
「……わかった。おい。金を持ってこい。土地はその地図に示しておる。馬車を用意するか?」
臣下が金貨と地図を持ってくる。
「いや、馬車は大丈夫だ。魔法で現地へ向かう」
ロマーニは疑問に感じた。勇者は浮遊魔法も使えるのかと。簡単な魔法ではない。
「勇者よ。土地に行ったとしても住む家などはないぞ。大丈夫なのか?」
「多分、なんとかなると思う。ならくてもどうにかしてもらうわ」
周りは言っている意味がわからなかった。誰か助けてくれる者でもいるのだろうか。
「あぁ~結構遠いんだなここから。よし! じゃあ転移魔法~」
簡単に言うと空間が引き裂かれ、そこにワープホールが形成された。
ロマーニも初めて見る魔法だった。そんな魔法を使える者は見たことがなかった。
「なんじゃその魔法は⁉ おぬしさっきのリフレクトといい、すごい魔法使いなのでは⁉」
「えっなんか頭で想像したらできるようになっているらしい。便利だよねこれ」
そういうと、一応、世話になった人物たちへ礼を言う。
「それじゃあ、ありがとうございました! おかげでよく眠れました!」
「待て! そういえばお主の名前をまだ聞いておらんだ。名は?」
「俺は勇者え……えま、えて、えまだったかな。もういいや。エマニエルぼうや――」
そこで、ワープホールは閉じてしまった。
「……『えまにえるぼうや』なのか……?」
城は、困惑に包まれていた。




