第16話 勇者、傲慢
また、なにか聞こえる気がする……。
「……しゃどの。……うしゃどの。ったく、全く起きん! こやつほんとに転生勇者なのか? おぉ~い! 勇者どの~。本当に聞こえておらんのか~。わしはこの国の王マルクスディアム・ゴードンというのだが~。早く起きんか~! あれからまた二日経っとるぞ~。早く世界を救ってくれぇ~。そしてこのゴードン王国を繫栄に導いてくれんかのぉ~。おお~い」
「うるんせぇんだよこの髭長息クサじじいがぁ!」
思いっきり殴った。
「い、いったぁああああああああああ! 初めて人に殴られたぞ!」
「あぁまたこのパターンか。ごめんな。夢でサッカー選手の闘利王ってなんでその名前なんだろうなぁって思ってさ」
「知らんわ! だとしても明確な意思で殴ってきたのでは⁉ あと、息臭いか⁉」
「息はドブ便所の匂いがしたよ。ごめんな殴って」
「前半の分が後半の謝りで取り返しきれてない気がするんだが……」
「で、俺の部屋になんの用だよ」
「いや、本来の目的忘れすぎじゃないか勇者よ! 魔王討伐しに行ってほしんだが⁉」
「あぁそうだった。俺転生して勇者になったんだっけ。めんごめんご」
「やる気はあるのか君は……とりあえず、王の間まで来てくれ」
「まぁ慌てないでください。至急、やらないといけないことがあるんです……」
「なんだね。急ぐことならしょうがない。言いたまえ」
「飯持ってきてもらえます?」
「……用意しよう。今度は眠らさんように護衛をつけるぞ」
「喜んで」
なにが喜んでなのか、王にはわからなかったが、とりあえず数時間待った。勇者が
向かったのは二時間後だった。
「ごめんごめん。指毛抜いてたら遅くなったわ」
「それ至急案件じゃないだろ絶対! はよ来いよ!」
「いや~どうしても気になってな。で、なんだっけ?」
「だから、魔王討伐しに行けっていってるんだ!」
「あぁそうだった。それはいいんだが、それに伴ってこの国は俺になにをしてくれるんだ?」
「えっ? なにってとりえあず魔王討伐したら永遠にその名は語り継がれることだろう」
「いやいや。それは俺の努力じゃん。あんたらはなんかしてくれるのか?」
「……わかった。広場に銅像を建てよう。そして、この国での永住権を与える」
「なるほど。それはいいかもですね。じゃあ前金ってことで永住権は先にください」
「えっ⁉ そんなことあんの? 冒険に行く気はあるのだな?」
「……俺を舐めてもらうのも大概にしてくれないか!」
初めて勇者としての威圧感を発揮した。相当な決意らしい。
「俺は本気で魔王を討伐しに行きたいんだ。だから、この地に帰れる場所を残しておきたいんだ……その場所があるだけで勇気が溢れ出す。どんな勇気って言われるとなんとも言えんっちゅう感じだ。だから、一等地の海が見える土地をくれ」
「最初から傲慢すぎんか?」
「これから長い旅が始まるんだ……事前の準備と心を整えられる場所をくれ」
「……くつろぐわけじゃないな?」
「当たり前だろ! この目がふざけていると思うのか!」
その目は白目をむいていてふざけていた。




