第11話 勇者、金貸しで儲ける
翌日、漫画が面白すぎて夜が明けていた。誰かと感想を共有したいが、できるのは勇者しかいない。私はせかせかと勇者の元へ急いだ。その途中、王の間を通り過ぎようとしたとき、なにかの声が聞こえた。
「あふん! 王よ! この女王様にもっと強く叩くよう命じてくださいまし!」
「ちょっと変態過ぎやしないかこやつ……」
ロマーニ老師の声だった。拷問されていたが、王様も引いていた。
私は、バレないようこっそり城を抜け出して、勇者の家へと向かった。
勇者の家に着いたとき、なにやら中が騒がしかった。
インターホンを鳴らすと、すぐに扉が開いた。出てきたのはギョロ美ちゃんだった。
「やだぁ。誰かと思ったらあーちゃんじゃないの! お金借りに来たの?」
「金借りに来ませんよ! なんか今日騒がしいですね」
「そうなの。今日は週に一回の『金貸しデー』なのよ」
プールサイドに設営されていたのは『勇者金融』とでかでかと看板を設けたブースが作られていた。そこに、こぞって国民が金を借りに来ていた。泣きわめいている者や土下座までしている者もいた。そこは、阿鼻叫喚の地獄のようになっていた。
「あまり見ないようにしますね……」
だが、少し目をそらすと、ある本が売りに出されているのを見つけてしまった。それは『アネスの休日』と題された写真集だった。
「ちょっと待てぇ! なに売ってんだお前ら!」
「えっなにってあのグラマラスなボディのあーちゃんの写真集ですわな」
「トモミチ……あの時、首にぶら下げていたモノでなにかしたわね?」
「そうどすえ。あれは『カメラ』いうモノらしいですわな。被写体を撮って保存することができるみたいでこんな本も作ることができるっちゅうことですわ! これが大盛況でめちゃくちゃ売れてまっせ!」
そういわれた瞬間、私は火の魔法で写真集をすべて燃やし尽くした。
「あ、あああああああああああああああ! あーちゃんなにしてまんねん!」
「こんなの無許可で売らせるわけないでしょ! どうせふりかけ(勇者)の仕業ね……」
私は、急いでふりかけの元へ向かった。
「こらぁ! ふりかけ! よくも私の写真集売ってくれたわね!」
「そんな剣幕でどうしたんだよ余り糞」
「ちょっとその名前はやめなさいよ! あーちゃんよあーちゃん!」
「あーそうだった。で、写真集だろ。すごい売れ行きだぞ。あれは国内で大バズりだ」
「燃やしたわよあんなの! 好きにさせるものですか」
「『カメラ』には『データ』ってのがあって永久に残るんだよ。全然、複製できるぞ」
「こいつ舐めた事ばっかしやがって! 本当に許せない!」
「まぁまぁ。そんなことよりも、持って行った『漫画』どうだったよ?」
「……めちゃくちゃ面白かったわよ! 感想話させなさいよね!」
「もしかして全部読んだのか?」
「……一度ハマるとこうなのよ私。気づいたら夜が明けてたわ」
「……ったく。こいつぁすげぇ逸材だ……」
また、ふりかけと感想を話し合ったり、漫画を読んだりしていて、気づけば夜を迎えていた。私はもう、賢者としての責務(冒険)を忘れかけていた。
「じゃあまた明日も来るわね~。みんなおやすみ~」
「おう! また来いよ~」
「おやすみでごんす~」
「また明日ねぇ~!」
城に帰りつつ気づいてしまった。私、なにしに行ってんだっけ?
城に着いた私は、逃げるようにそそくさと部屋に戻ろうとした。そうするとまた声が聞こえた。
「おうふ! 王よ! もっとわたくしめをいたぶるよう命じてもらえませんでしょうかぁ!」
「……ちょっともう俺の手にも負えんわこいつ」
王もなんでこんなことしているのだろうと感じ始めていた。
なにも聞こえなかったことにして部屋へ戻ることにした。
ロマー二老師の叫び声(喘ぎ声)は夜通し響いていたという――。




