第10話 勇者、ふりかけ誕生
「冒険というのはそのくらい長く、激しく、苦しくなるってことだよ」
「なっ……! そういうことなの……」
「お前は、王だか、蝋だかよくわからん奴からの体裁だけを気にしてるだけじゃないのか?」
「はぱあっ! 確かに……私は冒険のなんたるかをわからず冒険しようとしていたわ……」
「そうだろう? まずは自分がこれからなにをするのか。なにがしたいのかを明確にしろ。そうしないことにはお前は永遠に冒険なんぞいくことはできないぞ」
「くっ……確かにあなたの言うことにも一理あるわね……」
「お前はただ『冒険』に憧れているだけの足臭少女って訳だ!」
「足臭は余計だわ! でも、確かにその通りなのかもしれないわね……」
「明日から早速修行に入るぞ。まずはここにある書物(漫画)を読み切るのだ」
「わかったわ。とりあえず、その修行(遊び)耐えてみせるわ!」
「よく言った! それじゃあとりあえず仲間を紹介しておく」
そう言うと、下から仲間が現れた。
「グールのトモミチと半魚人のギョロ美ちゃんだ」
「初めましてやのぉ! グールのトモミチいいます。よろしゅうなぁ!」
「半魚人のギョロ美よ! 同じ女としてこれからよろしくねぇ!」
拘束していたはずの雑魚共だった。
「どこが初めましてなのよ! なんでこいつらが仲間なの⁉」
「ん? なにかと便利だしこいつら。護衛とかしてくれるし」
「私、殺されかけたわよ!」
「そんなことないよなぁ。ただの歓迎だろぉ?」
グールと半魚人が答える。
「そのとおりでがんすよ~。殺すだなんて恐ろしいですわ……」
「そうですわよぉ! 魚人の命に懸けてそれは誓うわ!」
数時間前に『死んでちょうだい』とか言われた気がしたのだが……。
「もうわかったわよ! とりあえず、こいつらはいるってことね」
「そういうことだ。これから辛いことも一緒に乗り越えていくぞ!」
「頑張りますわなぁ! 共に勇者様のために!」
「やりましょ~! みんなで王国万歳~!」
いまいち、こいつらは信用ならないが、勇者は間違いなく勇者らしい。
「それで、勇者。あなたの名前を教えなさいよ」
「名前? 転生後の名前あんまし覚えてなくてさ。『ふりかけ』とか『湿布』とかでいいよ」
「いいのそれで⁉ じゃあ『ふりかけ』……とりあえず明日からも来るからね」
「あぁ。分かった。じゃあお前の名前も決めないとな」
「私は賢者アネス・ローデンハイム。アネスでいいわよ」
「ん~。呼びづらいから『ナマズ教』か『余り糞』か『あーちゃん』のどれかだなぁ……」
「なんでそんな三択なのよ! 『余り糞』だけは絶対嫌よ!」
「それならもう『ナマズ教』だな! よしこれからお前は『ナマズ教』だ!」
「いや『あーちゃん』もあるでしょ! 絶対『あーちゃん』にしてよ!」
「……そこまで言うならしょうがないなぁ。それなら『あーちゃん』にしてやるよ」
「よかった……他の二つにならなくて」
「あぁそれと、なんか漫画持ってく?」
「……ええ、持ってくわ。あくまで自習よ自習!」
「っへへ。この照れ屋さんがよ……」
私は、せっかく持ってきた冒険用のバッグにありったけの漫画を詰めていた。
この日も私は冒険に行くことはできなった。




