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第12話 レーベの鬱憤【レーベSide】

 

  *


 私ことレーベ=セントスはいまだに腹の虫がおさまらなかった。


 勇者の一人が私のだらけきった姿を見てしまった、大事件からはや一週間。いかに私がお姉さまとは違い、完璧な王女なのかをアピールしてきたつもりでしたけれど、まさかあんな姿を見られるなんて。もし、勇者が口を滑らせたりしたら、私のブランドイメージが崩れてしまう……、それだけは許せない行為です。


「お兄様にもばれていませんのに……」


 尊敬している第二王子であるお兄様にもこんな姿は見せていない。


 それを偶発的な事故とはいえ見られてしまうなんて。見られてしまったことはしょうがないですわね……、こうなったら、「少しはしたないですが、食べ歩きに興じて、この鬱憤うっぷんを晴らしましょう」という形で、街中をお付きのメイドであるフロリダとともに露店を散策して、気晴らしに来たのでした。


 私の急な思いつきに対してフロリダは聞いてきました。


「護衛はいかがいたしましょうか? これだけ急ですと、準備が出来かねますが……」


「いらないわ。お忍びで街を巡って、国民の様子を伺うのも王女たる私のつとめ」


 それっぽい理由にかこつけて私の考えを正当化することにします。王都シーバルセンも今となっては、大分治安もよいですし、これも魔物という共通の敵のおかげかしら。


 私がウキウキで準備を始めるとは対照的に、フロリダは浮かない顔をしながら、メイド長に外出許可を取りに行くことになったのでした。


 王族である転移魔法陣が見つからないように両手に白い手袋をはめ込み、淡い紫色のワンピースに着替えます。


 あ、メイド長にもぐちぐち言われましたが、私のわがままということで許可いただいたので、今に至ります。


「あ、あの商店のふわふわのお菓子、食べてみたかったんです」


 木の棒にメレンゲを差しザラメをかけたあまーいお菓子に舌鼓を打ちながら、食べ歩きを堪能している。そのとき、迂闊だったのは、前から歩いてくる二人組のチンピラに気づかなったことです。


「お嬢様!!!!」


 フロリダが私を呼ぶ声に気づきましたが、時すでに遅し。前方を見るとチンピラにメレンゲがぶつかり、着ていた洋服を汚してしまいました。メレンゲは石畳の通行路に落ちて散らばり、もう食べられそうにありません。


「も、申し訳ありません!!」と、フロリダはすかさず私とチンピラの間に入り、身をていして私を守るように引き寄せます。


「おいおい、兄貴の一張羅いっちょうらが汚れちまったぜ。このお方が誰かわかっていやがるのか!? 元国防軍警備隊次長フレアラーテ様だぞ」


 ひっ!!そのフレアラーテと呼ばれました、スキンヘッドで強面こわもての大男の威圧感に短い悲鳴を上げてしまいます。


 フレアラーテ=メラルバ――、たしか、火炎魔術のスペシャリスト、度重なる軍規違反により退官させられたと、お兄様から伺ったことがありますが、まさか、そんな方に目を付けられるなんて。


「あーあ。これはお仕置きが必要だよな」


 フレアラーテが舌なめずりをして、私の顔から足先までをニヤニヤしながらめ回すように見てきます。うぅ、私は美人で巨乳ですから当然かも知れません。


 強烈な嫌悪感を抱きながら、周りをきょろきょろして助けを求めますが、誰も目を合わせようとしてくれません。


 見るからに舎弟というような、フレアラーテの子分が私の可憐で華奢な腕を掴んで、引っ張ります。


「兄貴、終わったら、後でおこぼれ下さいよ」


「あたりめーだろ、俺の後だがな」


 フロリダが必死の形相で「やめなさい」と伝えながら腕を私から引き離そうとしていますが女性の力では無理でしょう。


 ここで自分は王女であることをお伝えすれば、許してもらうこともできるかもしれませんが、逆に高額の賠償金という形で多量の金貨を請求されることになるかもしれません。困ったことになりました。


「フロリダ、逃げなさい。これは命令よ。あなただけでも逃げて。できれば、助けてくれそうな殿方を探してきてくれますと嬉しいです」


「くっ、お嬢様……、承知いたしました、すぐに!!」


 フロリダはそう言うと、すぐに助けを求めに、通行人を避けるように駆けだします。商店が並んでおり、ここで変態的な行動をとるにはさすがに人目が多すぎます。人目を避けて路地裏に入るにしても、少しばかりは距離があるはず……。それまでの時間的な猶予はわずかですわね。


 できれば、最初はお兄様みたいな理想の人に私の初めてを捧げたかったものです。王女という立場である以上、自分が愛する人と伴侶になれないなんてことは、十二分にわかっていますが。一度くらい恋というものを経験してみたかったです。


 私の腕が乱暴に引っ張られる。私はなされるがまま、彼らについていくしかありません。


「よし、そこの路地裏にするか」


 ああ、着いてしまいました。願わくは、すぐに終わりますように。幼いころに、お姉さまから虐められていたときを思い出します。あのときもすぐ終わるようにって、願っていましたっけ……。


 私のなかでは抵抗よりも諦念の気持ちが既に勝っています。目を瞑ってすべてを諦めます。


 そんな矢先、私を呼び止める声が……、あれ、この声どこかで。


「その行動は合意の上ですか? 僕にはそうは見えないけれど」


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