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95.協力の願い

 食事も終わったことで、三人は宿に戻った。


「そういえば、少し話があります、メディさん」


「ん、なんだ、聞くぞ」


 一階の広間に集まったところで、ジークがそう切り出した。


「あら奇遇ね、私も実は皆に話があったの」


「アマカさん!?てっきり部屋に戻ったのかと……」


 突然背後から声をかけられて、ジークは身をすくめた。


「気配を消していたの」


「傍迷惑な女だ、で、ジーク、話とはなんだ?」


 口を開きかけて、背後にいるアマカに視線をやる。


「私がいると話しにくいことかしら?」


 正直、そうだった。ジークが話したいのは『遺産』のことである。あまり外部の者に話すような内容ではない。


「じゃあ先に私の用件からで良い?と、ここで聞かれるのは不味いわね、私の部屋に来て頂戴」


 そういうとアマカは二階への階段に向かい、足をかけた所で二人に手招きした。



***



「さて、じゃあ単刀直入に言うわ、二人……というかジーク君達には、私の仕事を手伝ってほしいの」


 部屋に入るやいなや、アマカはそう話を始めた。


「仕事、だと?貴様の仕事といえば、殺し、だろう」


 忌避感のこもった視線で、メディがアマカを射貫く。それに怯える表情も見せずに、アマカは言葉を次ぐ。


「いいえ、今回のは違うわ、私の仕事は、この町のカジノの素行調査よ。最近、カジノからの税金が誤魔化されているんじゃないかという噂が貴族の間で立っていてね、その調査を依頼されたというわけ」


 それは九割、真実だった。否、言ったことに関して言えば全て真実ではあるのだ。ただ、一割を隠蔽しているというだけで。彼女の元に舞い込んだ依頼は確かにそれである。だが、その依頼には、「場合によっては、カジノの責任者、ミスター・リライケンを殺害しても構わない」という一文が書かれている。依頼した側は既に、カジノの責任者の後釜を考えているということらしい。不正を行っていた場合の処罰を、アマカに一任したということになる。


「素行調査か、それで、私達に何の益がある」


「報酬は出すわ、それに、これを依頼したのはかなり力を持った貴族よ、恩を売っておいて損は無いと思うけど」


 基本的に貴族が政治の実権を握っている(例外は、カジノの責任者が実質的な管理者になって、ほぼ自治区と言っていいこのメイニである)このマギルスで、そのメリットは確かに大きなものだろう。これからの旅で、融通の利く場面が多くなるかもしれない。


「メディさん、いい話なんじゃないですか?」


「まあ、そうだな」


 人の多いカジノに出入りするとなれば、『遺産』の調査も進むかもしれない。アマカの言うとおり、損は無い。


「受けてくれるかしら」


 最後の確認に、メディは頷いた。


「良いだろう、お前には宿を紹介して貰った恩もある。協力しよう」


 この町の核心に、迫ろうとしていた。

 


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