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91.修羅場の回避

アマカが包帯を持ってきた時には、処置は既に始まっていた。ジークの状態は最悪だ、肉が焼けただれ細胞の結合が完全に切り離された腕が元通りになるとは考えられない。だがメディは奇跡に賭けるように、必然をたぐり寄せるように作業を進めていく。口からは呪詛のような魔法の詠唱が途切れず紡がれている。二重、三重、あるいはそれ以上にも聞こえる、高速で複雑な詠唱。通常、魔法の発動に詠唱を必要としていないメディだが、今は万が一の失敗も許されない。基礎的な魔法も、高度な魔法も、噛みしめるように発動させていく。およそこれ以上の治療は無いと思える手厚い看護だが、それでもジークの傷は遅々として回復しない。それでも焦らず、的確な処置をしていく。幸い出血はなく、急を要する傷ではない。放置すれば左腕は機能を失うだろうが、こうして治療している間は最悪のケースは避けられる。


「おいアマカ、包帯を寄越せ」


 詠唱に重なるようにそう言われて、アマカは一瞬動くことを躊躇ったが、人を殺せそうな視線で射貫かれて、すぐに包帯を手渡した。メディはそれを受け取ると、布団の側に置いてあった剣を少し抜き、刃で自分の親指を傷つけた。何か呪文を呟くと、指から止めどなく血液が流れ落ちていく。それを包帯に押し当て、文字を書いていく。これは増幅石を作成する際にも使われた、魔人の『呪符』の技術である。文字に魔力を込め、一定の効果を発揮する、あるいはし続ける道具を作り出す。口では詠唱を、指では文字を。常人ならばどちらかが狂うだろう作業を極限の集中力を以て成立させる。アマカには、メディの方が余程鬼であるかのように見えた。包帯は端から端まで赤く染まっていき、魔力を発している。知識の無い者が見ればそれこそ古代の呪物の如くだろう。

 それから数時間、ついに焼け焦げた腕がピンクの肉の色を取り戻す。メディは地属性の魔法で即席の針を作り出し、魔力で編んだ糸でジークの腕を縫合していく。体に負担がかからないように痛覚の遮断や身体組織の強化の魔法も並列して発動させる。やがてどうにか腕が人間の形を取り戻すと、呪符となった包帯を腕に巻く。それらの処置が終わる頃には、アマカはぐっすり眠っており、空は白んでいた。メディはジークの呼吸が安定し、包帯の魔法も問題なく発動しているのを見て、ジークの隣で眠りについた。

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