表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/98

88.夜半の血戦

 アマカが離れたのなら、いっそ踵を返して逃げ出したくなるが、そうすれば先程見せた速度で背後から斬りつけられて一巻の終わりだろう。そう判断したジークは自身に雷属性の強化をかけて、アマカと同じ屋根の上に飛び乗った。それが死合再会の合図だと言うかのように、アマカが駆け、刀を横薙ぎに振るう。ジークは後ろに跳んで回避するが、足を滑らせ、バランスを崩した。その隙を見逃さず、アマカが追い込みをかける。数合の後、ついにジークが屋根から落ちそうになった。必殺の一撃を叩き込まんとアマカの長刀がジークの心臓に迫る。あと一寸、アマカがそう思った時、アマカの眼前からジークの姿がかき消えた。慌てて周囲を見渡すと、ギリギリで屋根から跳んだのだろう、一つ先の家屋の屋根に、アマカを見据える一対の金色の光があった、女を誘惑してやまない宝石のようだ、と恍惚とした表情でそれ……ジークの瞳に見とれ、ならばその誘いに乗ってやろうと、力強く屋根を蹴った。猛然とした速度で自分の身へと飛びかかってくるアマカに驚嘆しながらも、ジークは魔法を展開した、あるいはアマカも魔法を使えるのかもしれないが、今のところ使用してくる様子は無い。魔法による不意打ちはアマカにとって有効打となりえるだろうと考えたのだ。使える中で最速の発動速度を誇る雷の矢を三本連続で放つ。屋根と屋根の間を跳躍し、今現在空中にとどまっているアマカに、回避する術はないはずだ。現に、もう命中直前の矢を避けようとする様子は無い。アマカが地に落とされる様を幻視した、次の瞬間、


「っ!?」


 ジークは一瞬、何が起きたのか分からなかった。自分の発射した魔法矢三本、その内二本が消え去り、一本がアマカの背後にあったはずの家に突き刺さり、家にかけられた防護魔法に弾かれて小さく光った。そして頭上には、酷薄な笑みで口を歪めたアマカがいる。何が起きたのかを解明する前に、アマカの攻撃を防ぐ、反撃に出る暇もなく、アマカの斬撃が重ねられ、ジリジリと後ろに下がらされる、アマカの技術は戦士のものではない。大勢の敵を如何に凌ぐのかではなく、一人の人間を如何に効率良く殺せるかを突き詰めた暗殺者の業だ。今までの何者とも違う戦闘法にジークは戸惑いをかくせなかった。すんでのところで刃を重ねることが出来ているが、急所を狙うアマカの剣術にいつまで対応できるかわからない。それに、先程ジークの魔法を迎撃してのけた謎の技術もある。状況はジークにとって不利と言っていいだろう。


「ぐっ!」


 苦悶の声が漏れる、少しずつ後退させられていたが、ついに屋根の端まで追い詰められたのだ。大上段から振り下ろされた刃が、瞬きの内にジークの頭を割ることだろう。しかし、それを良しとしないジークは、足元から雷撃を迸らせた。紫電がアマカの刃を弾く、次にアマカの体を貫こうとするが、アマカは下方から伸びてくる雷より速く跳び退った。アマカとの戦闘を始めてから数度目の驚愕がジークに降りかかる。雷魔法は全属性の内、光に次いで速度の高い魔法だ。稲妻そのものとまではいかないが、それに近しいスピードで敵を射貫く。矢などに加工されていない純粋な放電なら尚更だ。初撃の短剣と雷の矢、放電と、回避不可能なはずの攻撃を三度も凌がれて、ジークは背筋が冷たくなった。


「やっぱり強いわね、何故、なんて聞かれた時には萎えかけたけど、とっても気持ちいいわ、あぁ、この時間が永遠に続けば良いのに!」


 陶酔し、熱の籠もった瞳で語るアマカは完全に狂人と言って間違いない。メディは、かつて魔人たちは鬼と呼ばれ恐れられていたと言っていた。それに倣うなら、アマカは正しく現代に蘇った鬼なのだろう。だが、鬼も無敵ではなかったらしい。狂笑の浮かぶ口元に、血液が一筋流れている。雷撃から逃れたあの速度は、アマカにとって限界を超えた駆動だったのだ。アマカ本人は、自分の肉体が傷ついていることも、命のやりとりをしているという事実の一部だと興奮し、舌なめずりをして自らの血液を口に含んだ。そうした時にはもう、躊躇を捨てたジークが魔力放出を乗せた最高速で突貫してきていた。超人的な身体能力を持つアマカだが、敏捷性以外は並より少し高い程度であり、魔力に関してはそう多くはなく、ジークの重い一撃を受けきる術は無い。たまらず上空に跳び、眼下のジークの出方を見る。ジークはアマカに向かって手を翳している。バチバチと紫電が指の間を奔り、繰り出されるのは三本の矢。それを見てアマカは刀を構える。一本目を上段から斬り伏せ、返す刀で二本目も切断する。刀というのは「斬る」という概念に特化した武器である。時に不定形で放たれる魔法も、達人の前では動くだけの的に過ぎない。三本目、ほぼ同時に射出された矢を刀のみで捌くには猶予が無い。アマカは風の魔力を足に纏わせ、ノータイムで更に上空へと身を引き上げる。風を纏い一時的な推進力を得るのは初歩的な魔法であり、それ故に極めようとする者はいない。だがアマカは燃費の良さと、自分でも扱える単純さに目をつけ、練習を重ね、ついに三次元機動を実現させる領域まで高めた。アマカの使える魔法は、これと強化魔法、緊急時のための治癒魔法だけである。その三つと、暗殺者として鍛えられた身体能力だけで、数多の標的を血の海に沈めてきた。標的はアマカの姿すら捉えることなく首を落とされて死んでいった。だが、ジークは違った。彼の目はアマカの動きを追って、高空にいる彼女をしかと捉えている。その手には新たな雷の矢がつがえられ、今度こそアマカを射止めようとしている。


「舐め、ないでっ!」


 気勢と共に自身に限界まで強化をかけ、風の魔力の出力を最大まで上げ、亜音速でジークに突撃する。強化されてもあまりの速度に悲鳴を上げる体を強引に治癒魔法で黙らせながら、魔法の矢を叩き落とし、ジークの体を完膚なきまでに粉砕しようと、流星となって夜空を駆ける。ジークはそれを防御するために、銀色の結界を展開した。大鐘が間近で落ちたような轟音が響き渡り、アマカの刀に鮮血が付着する。結界というのは、斬るという概念には滅法弱い。切り裂かれるのは道理だった。勢いでジークの背後にまで移動してしまったが、アマカが振り返った先にはジークの死体が横たわっているはずだ、果たして、彼女の背後にあったものは、

――――――左腕を半ば切断されながらも、両手で大剣を握る、銀髪の少年だった。


「そう、まだ、続けられるのね、嬉しいわ」


 魔力も体力も切れた体、最後に残った悦びだけで、アマカもまた刀を構え直した。

※いつもの与太話です、苦手な方はここでブラウザバックを。



***


メディ(以下メ)「というわけで、本編で設定解説便利キャラとして扱われている私ことメディが、ある小さき者の詩の設定を開示していく、覚え書き程度のものだから、適当に読み流してくれても構わない。とはいっても今回はアマカのステータスと武器情報だけになるのだが。では早速行ってみよう」



***


アマカ・スイゲツ


ステータス

筋力:C+ 耐久:C 敏捷:A++ 魔力:D 幸運:C


スキル

暗殺術:A 

    アマカの戦闘スタイル。急所を狙う攻撃は回避しづらく、気配を遮断した状態から放たれる一撃は、おおよその人間を即死させる。


強化魔法:B

     自身のステータスを引き上げる魔法。Bでは魔力、幸運以外のステータスを一段階引き上げる。ジークのように属性を持ってはおらず、その分燃費は良い。


風属性魔法:D

      風を纏い、加速する魔法しか扱うことが出来ない。だがその単純な魔法が十二分の脅威たり得る程まで錬磨されている。


治癒魔法:C+

     本来ならランク分けをするような魔法でもないが、彼女の特徴の一つであるため記述する。治癒力自体はDランク相当だが、精密さにかけて一級品の技術を発揮する。肉塊になった体の一部を完全に復元することも可能。



***



メ「かなりピーキーな性能をしたキャラと言えるだろう。ステータス自体はそう高くはないが、それを補って余りある本人の技術でカバーしている。エディアスやイデアハネートとは別方向でジークと肩を並べる強さだ」



***


無銘・刀


種別:刀 威力:中~高 重量:重め 使い手:アマカ・スイゲツ


アマカの使う刀。本人の強化魔法のかけかたにより、威力は上下する。スイゲツの家に代々伝わる名刀なのだが、銘は決められていない。



***


メ「書かれている通りだ。敢えて補足するなら、アマカが使えば魔法を斬れるデタラメな武器になると言った点か」



***


メ「今回はここまでだ。次回はライガのステータスを解説していくことになるだろう。それ以外にも、作者の頭の中で自己完結している設定もある。今回の戦闘が二人とも裸足で戦っている、とかな。読者諸君からの質問も受け付けるつもりだ、どんな質問が来ても、作者が漱石枕流の機転で答えるぞ。感想欄へのコメント、待っている」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ