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近江の山奥から始める近代国家建設 〜転生田舎領主は戦国そのものを終わらせたい〜  作者: 近江もののふ
第一章 朝霧村のはじまり

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第一章 設定まとめ

登場人物紹介


※第33話までの内容を含みます。


橘家と朝霧村


小徳丸しょうとくまる

本作の主人公。現代日本から戦国時代へ転生した橘家の嫡男。

前世で得た知識を使い、貧しい朝霧村の立て直しを進めている。幼いながらも、農業、商業、軍事、人材登用まで幅広く手を出す。


橘弥三郎頼政たちばなやさぶろうよりまさ

小徳丸の父であり、朝霧村を治める橘家の当主。

実直で領民思いの武士だが、息子の大胆すぎる判断に頭を悩ませることも多い。


はる

頼政の妻で、小徳丸の母。

家族を支える芯の強い女性。小徳丸の行動力を認めながらも、危険な真似には厳しく目を光らせている。


惟丸これまる

小徳丸の弟。

第33話時点では、まだ生まれたばかりの赤子。


饗庭彦九郎政虎あいばひこくろうまさとら

橘家の家臣。

朝霧村の人員、物資、普請などを取り仕切る実務役。小徳丸の思いつきを、実際に動かせる計画へ変える苦労人でもある。


今井弦十郎いまいげんじゅうろう

小徳丸に仕える若い家臣。

護衛として常に小徳丸の近くに付き、山仕事から戦働きまで幅広くこなす。


作兵衛さくべえ

朝霧村の鍛冶職人。

農具の修理だけでなく、小徳丸が考案した罠、水車、油搾り、武器などの製作にも関わる。無理難題を持ち込まれることが多い。


おせん

作兵衛の女房。

村の女衆とともに炊事や水場の仕事を担い、朝霧の暮らしを生活面から支える。水車普請では、女衆が使う浅瀬や水場への通り道を確保するため、小徳丸たちと調整を行った。


孫兵衛まごべえ

山と狩りに詳しい男。

獣道や地形を見る目に優れ、小徳丸が山へ入る際には案内役を務める。


茂七もしち

朝霧で茶畑を任された百姓。

一見すると軽い性格だが、土や水を見る目は確かで、根気強く仕事を続ける。


善右衛門ぜんえもん

各地を巡る商人。

朝霧で作られた油や木製品を外へ売るための重要な取引相手。品物だけでなく、道や水運まで確認する現実的な商売人。


朝霧村の子供たち


勘次かんじ

村の子供たちをまとめる少年。

負けん気が強く、小徳丸とぶつかったことをきっかけに、その力を認めるようになる。


虎松とらまつ

道具や建物の変化によく気づく少年。

荒っぽいところはあるが、細かな違和感を見つける目を持つ。


平助へいすけ

口数の少ない少年。

人の話や行動をよく覚えており、情報を整理する役目を担うこともある。


おはつ

村の少女。

周囲の状況を冷静に見ており、子供たちが無茶を始めると真っ先に止めようとする。


おたま

控えめだが観察力のある少女。

ほかの者が見落とした人影や動きを覚えていることが多い。


甲賀・伊賀に関わる者たち


伴彦右衛門ばんひこえもん

甲賀の伴一族をまとめる年長者。

小徳丸の考えと覚悟を見極めたうえで、一族の一部を朝霧へ移す決断をする。


伴新九郎ばんしんくろう

甲賀出身の若者。

探索、追跡、情報収集などを得意とし、小徳丸の命を受けて各地を動く。表立って働く家臣とは異なる役割を担う。


滝川久助たきがわきゅうすけ

甲賀に縁を持つ若者。

山歩きや荒事に慣れており、小徳丸の近くで働くようになる。


おりん

伊賀の藤林家に連なる女性。

周囲の人や建物の配置を自然に確認するなど、優れた観察力を持つ。


小徳丸が見いだした人物


日吉丸ひよしまる

尾張で暮らしていた少年。

身寄りもなく、食べ物にも事欠く生活を送っていたが、頭の回転が速く、人を見る目も鋭い。小徳丸の命により、朝霧へ連れてこられる。


橘家の親族・協力者


久方又次郎景近ひさかたまたじろうかげちか

頼政の叔父で、上田村を治める領主。

橘家と木材や米を取引し、周辺の情勢について助言を与える。


六角家


六角定頼ろっかくさだより

南近江を支配する六角家の当主。

小徳丸の働きに興味を持ち、その人柄と能力を直接見定める。


六角義賢ろっかくよしかた

定頼の嫡男。

父とともに小徳丸と対面するが、その評価は定頼ほど好意的ではない。


小倉東家


小倉東家当主

木地師とのつながりを持つ周辺領主。

朝霧で増え始めた仕事と富の流れを確かめるため、自ら村を訪れる。


小倉右京亮おぐらうきょうのすけ

小倉東家当主の息子。

水車や商品だけでなく、人や荷物の動きまで観察する慎重な若者。


百済寺郷周辺の領主


笠松長次郎正綱かさまつちょうじろうまさつな

笠松村を治める領主。

急速に力を付ける朝霧を警戒し、橘家との対立を深めていく。


竹田茂兵衛高晴たけだもへえたかはる

宮田村を治める領主。

周囲の力関係を慎重に見極め、自家と村を残すための道を探る。


酒井左近吉規さかいさこんよしのり

酒井村を治める領主。

橘家と笠松家の間に入り、交渉を利用して自家の立場を有利にしようとする。


篠原右近重尚しのはらうこんしげなお

志野原村を治める領主。

村の負担と自家の存続を優先する、慎重で現実的な人物。


怪異


二丈坊にじょうぼう

多賀の山中で語られてきた怪異。

巨大な坊主の姿を取り、人の声をまねるとされる。


作中設定紹介


※第33話までの内容を含みます。


物語の時代


物語の舞台は、戦国時代の近江国。


六角定頼が南近江を治め、織田、今川、浅井、朝倉などの勢力が各地で動いている時代である。


第33話時点では、天文十七年てんぶんじゅうしちねん(1548年)。


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主な土地


朝霧村あさぎりむら


本作の主な舞台となる、近江国の山間部にある小さな村。


鈴鹿の山々に囲まれた谷にあり、朝になると霧が谷底に残ることから「朝霧」と呼ばれている。


川と山裾の間に細長い田畑が並んでいるが、平地は少なく、山から流れ込む水も冷たい。そのため、米が豊富に取れる土地ではない。


一方で、山からは木材、薪、山菜、鹿や猪などを得られる。小徳丸は、土地の狭さを嘆くのではなく、山、水、人を組み合わせて村を豊かにしようとしている。


道が悪く、荷の運搬には不向きである。雨や雪で道が崩れると、塩や鉄などの生活必需品が村へ入らなくなる弱点を抱えている。


百済寺郷ひゃくさいじごうの中にあり、橘家が領主として治めている。


朝霧山あさぎりやま


朝霧村の外れにある小高い山。


山中には獣道や沢へ続く細道があり、鹿、猪、熊などが生息している。村人の猟場である一方、外から人が忍び込める場所でもある。


第28話までに、村人を逃がすための砦が築かれ始めている。


上田村うえだむら


朝霧から山を下りた先にある村。


橘家から分かれた久方家が治めている。朝霧から木材を受け取り、その代わりに米を回す取引が行われている。


朝霧にとっては、親族が治める近隣の協力地である。


百済寺ひゃくさいじ


朝霧の近くにある大寺院。


後世の観光寺院とは異なり、作中の時代では多くの僧、坊、山林、労働力を抱える一大勢力として存在している。


朝霧の山と百済寺の山は隣接しているため、木を伐る場所や材木を運ぶ道について、事前に山境を確認しなければならない。


木地師きじしの里


朝霧に隣接する谷筋に点在する、木地師たちの集落。


木地師は、山の木を使って椀、盆、小箱、柄などを作る職人である。木を削るだけでなく、木の乾き、節、歪みを見極め、どの部分を何に使うかを判断する技術を持つ。


小倉東家へ品を納めており、橘家の家臣ではない。小徳丸は、従来の仕事を邪魔しないことを条件に、空いた手で朝霧の木を加工してもらっている。


観音寺かんのんじ


六角家の本拠。


六角定頼が近江各地の家臣や領主を統轄する政治の中心であり、朝霧とは規模も人の数も大きく異なる。


小徳丸は、朝霧で始めた水車や油作りを定頼に知られ、観音寺へ呼び出される。


甲賀こうか


山と道に通じた者たちが暮らす土地。


小徳丸は、六角定頼から得た書状を持って甲賀を訪れ、伴一族との交渉を行う。


のちに、新九郎を含む甲賀者が段階的に朝霧へ移住する。忍び働きだけでなく、村の番、山道の警戒、情報収集、農作業などにも従事する。


百済寺郷周辺の村々


朝霧の周辺には、笠松村かさまつむら宮田村みやたむら酒井村さかいむら志野原村しのはらむらなどがある。


それぞれを小規模な領主が治めており、道普請、人足、物資、婚姻、古くからの付き合いなどを通じて結びついている。


朝霧が油や木製品で力を付け、人を集め始めたことで、周辺領主との関係にも変化が生じている。


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朝霧村の主な施設


橘家の屋敷


朝霧村を治める橘家の屋敷。


太い木で組まれた門、土塁、浅い堀を備え、小勢の野盗であれば防げる造りになっている。


村が襲われた際には村人を逃がす砦としても使われるが、長く籠城できるほど米や薪の蓄えが豊富なわけではない。


屋敷の周囲には、蔵、納屋、鍛冶場などが置かれている。


村口むらぐち


朝霧村の入口。


木を組み、柵を置いて道幅を狭めた簡素なもの。軍勢を食い止める防御施設ではなく、誰が村へ入るのかを確認するために設けられている。


朝霧へ人や荷が集まるようになってからは番の者が置かれ、見知らぬ者は一度止めて素性を確認する。


鍛冶場


作兵衛が働く鍛冶小屋。


鎌、鍬、鋤、鉈など、村で使われる農具や山道具を修理している。


小徳丸の改革が始まってからは、箱罠の金具、小荷車の部品、水車の金具、弩など、新しい道具や武器の試作も行われるようになった。


鉄や炭には限りがあるため、農具の修理を止めないよう、使い道に優先順位を付けている。


水車場すいしゃば


川の流れを利用して造られた、朝霧の重要施設。


最初は小さな模型から始まり、木樋で引いた水を羽根板へ当て、軸と杵を動かす仕組みが作られた。


その後、川辺には二基の水車が設置される。


一基は杵を上下させ、エゴマや菜種などの種を潰すためのもの。


もう一基は、潰した種を入れた木枠へ力を加え、油を搾るためのものとなっている。


壊れない複雑な機械ではなく、村の職人が止めて直せる構造を優先している。


油場あぶらば


水車場で搾った油を仕上げる場所。


油を布で濾し、おりを分け、壺へ移して保管する。実際に種を潰して油を搾るのは水車場であり、油場はその後の作業を担う。


主に女衆や若衆が働いており、水車場と並ぶ朝霧の重要施設となっている。


油は灯明に使えるため、寺社や町からの需要が高い。朝霧に銭をもたらす最初の主要商品でもある。


茶畑


朝霧の山裾に造られた試験用の畑。


木地師の里で茶が育てられていることを知った小徳丸が、朝霧でも栽培を始めた。


斜面の水はけを確認し、雨水を逃がす浅い溝を掘り、低い畝を二本ほど作っている。


最初から広く栽培するのではなく、苗が根付くかを確かめることを優先している。


新しい居住地


甲賀から移ってきた者たちを住まわせるため、朝霧の山際に新しく開かれた場所。


既存の家並みへ突然入れるのではなく、別に小屋地を設けている。


最初は仮小屋が中心で、木を伐り、根を抜き、地面をならしながら、住居と畑を段階的に整えている。


畑から収穫を得られるようになるまでは、橘家が食料を扶持として支える必要がある。


朝霧山の砦


村外れの小高い山に建設されている防御拠点。


低い土塁と浅い空堀を設け、山へ入る道を狭めている。出入口は平虎口ひらこぐち一つに絞り、槍を並べやすくしている。


上から弓や弩を使える構造が考えられ、村へ続く道を見渡す櫓も計画されている。


井戸はまだ完成しておらず、当面は水甕を運び上げる。完成した城ではなく、村人が逃げ込み、少人数で時間を稼ぐための砦である。


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朝霧の産業


農業


朝霧では、米だけに頼らず、あわひえ大豆だいず蕎麦そばなども育てている。


米は、土地の狭さと冷たい水の影響で多く取れない。


蕎麦は痩せた土地へ、大豆は食料と種へ回し、エゴマと菜種は油の原料として試されている。


小徳丸は、一つの作物に頼るのではなく、食料と売り物を分けて増やそうとしている。


山の利用


朝霧にとって、山は田畑と同じく重要な資源である。


木材、薪、山菜を得るだけでなく、鹿、猪、兎、熊などを狩り、肉、皮、骨、角、腱まで可能な限り利用する。


ただし、山を切り開いて畑を作れば、鹿や猪を村へ呼び寄せる危険も増える。そのため、畑作りと猟、罠、山の見回りを同時に進めている。


木工品


朝霧で伐った木を木地師に渡し、椀、盆、小箱、柄などへ加工してもらっている。


見栄えが悪く売り物にならない品でも、使えるものは朝霧が引き取る。


木地師へは売れた品から先に手間賃を払い、銭が足りない場合は薪、炭、刃物の修理なども勘定に入れる。


油作り


朝霧の主要産業として育ち始めている仕事。


エゴマや菜種を水車で潰し、搾り、濾して灯明油にする。


油は使えばなくなるため、椀や盆よりも継続的な需要が見込める。寺社や市を回る善右衛門を通じて外へ売られ、その利益は鉄、釘、種、人の雇用などへ回されている。


茶作り


将来の産物として始められた試験栽培。


すぐに利益を得るためのものではなく、朝霧の土と水で茶が育つかを確認する段階にある。


茂七を中心に、朝霧の者へ栽培方法を覚えさせながら進めている。


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朝霧で作られた道具と武器


箱罠はこわな


兎や狸などの小動物を捕らえるための木製罠。


獲物が餌へ触れると、扉が落ちる仕組みになっている。


複雑で壊れやすい構造にはせず、村で直せることを重視している。設置場所と見回りについては孫兵衛が管理する。


小荷車こにぐるま


人が引ける大きさの二輪車。


山奥の細道では使えないが、村の中で木材、道具、荷物を運ぶために考案された。


左右の車輪や軸を揃える必要があるため、作兵衛だけでなく木地師の技術も使われている。



弦を掛けて留め、太い矢を据えて放つ武器。


弓のように引き続ける必要はないが、撃った後の装填には時間がかかる。


先端の輪へ足を入れ、腰の鉤を弦へ掛け、身体を起こして弦を引き上げる。


熊狩りでは三挺が試され、その後は朝霧山の砦を守る武器としても考えられている。


長槍ながやり


朝霧の防衛に使われる集団武器。


個人が勝手に振り回すのではなく、複数人で穂先を揃え、狭い道や虎口を塞ぐために使われる。


油の利益で雇われた兵と、村の男たちが政虎から訓練を受けている。


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朝霧の人材・警備制度


村口の番


村へ入る者と荷を確認する役目。


人が増え、油や水車を狙う間者が現れたことで、番が強化された。


見知らぬ者を自由に歩かせず、目的や紹介者を確認してから村へ入れる。


甲賀者の移住


小徳丸は、甲賀者を一時的に銭で雇うのではなく、家族ごと朝霧へ移住させようとしている。


全員を忍びとして使うのではなく、情報収集に向く者、山道を警戒する者、村の仕事をする者に分けている。


最初の十三人を皮切りに、最終的には五十人ほどを段階的に移す計画となっている。


雇い兵


油の売却益を使って雇われた常勤の兵。


普段は農作業をせず、番、訓練、警備へ専念する。


第28話時点では十人が雇われ、政虎から長槍の扱いを教わっている。


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怪異


二丈坊にじょうぼう


多賀の山中で語られている怪異。


川に棲む川獺かわうそが巨大な坊主へ化けたものとされ、人の声をまねる。


朝霧への夜襲後、周辺では「夜に村を襲う者を川へ沈める」といった噂まで加わっている。


当初は作り話や獣の見間違いと思われていたが、小徳丸たちの前に実際に姿を現す。

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