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近江の山奥から始める近代国家建設 〜転生田舎領主は戦国そのものを終わらせたい〜  作者: 近江もののふ
第三章 北伊勢戦役

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第三章 設定まとめ

 登場人物紹介


 ※第99話までの内容を含みます。


【橘家】


 橘十兵衛賢政《たちばなじゅうべえかたまさ》

 本作の主人公。現代日本から戦国時代へ転生した橘家の嫡男。幼名は小徳丸(しょうとくまる)。

 朝霧で育てた産業と常備兵をもとに北伊勢へ進出し、江野を新たな本拠とする。戦で領地を広げる一方、旧領主の家臣化、行政組織の整備、交通や交易の拡大を進める。第99話時点では、北伊勢の所領は古い帳面を合わせて約二十万石となる。


 橘弥三郎頼政《たちばなやさぶろうよりまさ》

 賢政の父で、橘家の当主。

 北伊勢への出陣にも加わり、賢政が江野へ移った後は朝霧を中心に近江側を支える。伊勢領内の仕置きを賢政へ任せ、その判断と責任を負わせる。


 春(はる)

 頼政の妻で、賢政の母。

 朝霧で家族を支え、綾や家臣の嫁入りの支度にも関わる。賢政の嫡男が生まれると、頼政や子供たちとともに江野を訪れる。


 綾(あや)

 後藤賢豊(ごとうかたとよ)の娘で、賢政の正室。

 江野へ移り、屋敷の奥向きを取り仕切る。避難してきた明智家の女性たちの受け入れにも関わり、弘治二年(こうじにねん)(1556年)十一月に嫡男・小徳丸を出産する。


 小徳丸(しょうとくまる)

 賢政と綾の嫡男。

 弘治二年(1556年)十一月、江野で生まれる。賢政が、自分の幼名を継がせて名付ける。


 惟丸(これまる)

 賢政の弟。

 朝霧で暮らし、身近に仕える小竹を頼りにしている。江野城を訪れると、兵舎や城内にも関心を示す。


 初音(はつね)

 賢政と惟丸の妹。

 天文二十二年《てんぶんにじゅうにねん》(1553年)秋に生まれる。両親や惟丸とともに江野を訪れ、生まれたばかりの小徳丸と対面する。


 橘兵庫助政澄《たちばなひょうごのすけまさずみ》

 賢政の叔父で、頼政の弟。かつては玄恵(げんえ)と名乗る僧だった。

 還俗後は政務と軍務を担う。員弁攻めでは朝霧の六百を率いて鞍掛峠を越え、上平野城を攻略する。


 橘弥右衛門政秀《たちばなやえもんまさひで》

 賢政の祖父で、頼政の父。

 政所(まんどころ)で隠居している。山や木に関する経験を持ち、朝霧で始めた茸栽培にも知識を貸してきた。


 松乃(まつの)

 賢政の祖母で、政秀の妻。

 政所で政秀と暮らしている。


 久方又次郎景近《ひさかたまたじろうかげちか》

 頼政の叔父。上田(うえだ)を治める領主。

 北伊勢への出陣では上田勢を率い、八風峠で荷駄と近江へ戻る道を守る。


【橘家の軍務・政務を担う者たち】


 饗庭彦九郎政虎《あいばひこくろうまさとら》

 橘家の家臣。朝霧の実務を長く支えてきた。

 北伊勢では千種を預かり、軍勢の指揮にも当たる。亀山攻略後は亀山一帯を任され、新しい城と町、道路の普請、旧関領の仕置きを担う。


 今井弦十郎政基《いまいげんじゅうろうまさもと》

 幼少期から賢政の近くに仕える家臣。

 護衛、使者、鉄砲隊の指揮などを担う。新たに加わった馬廻りへ、道や家中の決まりを教える役目も任される。


 滝川久助一益《たきがわきゅうすけかずます》

 賢政に仕える家臣。

 帳面や勘定、物資の手配に加え、一軍の指揮や他家との交渉も担う。菰野を預かった後、亀山攻略を機に浜田へ移り、四日市の港、町、蔵、周辺の道をまとめて任される。


 森三左衛門可成《もりさんざえもんよしなり》

 美濃出身の武士。

 常備兵の訓練と指揮を担い、員弁攻略後は山口を拠点に旧領主たちをまとめる。亀山攻めでは周辺の城の攻略と包囲にも当たる。


 前田又左衛門利家《まえだまたざえもんとしいえ》

 尾張出身の家臣。幼名は犬千代(いぬちよ)。

 槍働きだけでなく、大隊を率いて軍命を果たす役目を担う。政虎の娘を妻に迎え、第99話では一益から菰野を引き継ぐ。


 木下藤吉郎秀吉《きのしたとうきちろうひでよし》

 尾張中村出身の家臣。幼名は日吉丸(ひよしまる)。

 伝令、人材登用、人足と物資の手配、部隊間や行政組織間の調整に力を発揮する。桑名の政務を吉田興種へ引き継いだ後、千種の城と村を任される。


 佐々内蔵助成政《さっさくらのすけなりまさ》

 尾張出身の家臣。元服前は与左衛門(よざえもん)。

 鉄砲隊と大隊の指揮を担う。頼政の養女となった大野飛騨守の娘を妻に迎え、第99話では江野の常設第一大隊を任される。


 宮部善祥坊継潤《みやべぜんしょうぼうけいじゅん》

 賢政が軍師として迎えた家臣。

 各隊からの報告を集め、地形、兵糧、兵の配置を見て意見を出す。軍務に加えて領内の調査や仕置きも支え、賢政が留守にする際は光秀とともに江野の仕事を進める。


 杉原七郎左衛門家次《すぎはらしちろうざえもんいえつぐ》

 賢政が探し出して迎えた家臣。

 城の受け取りや人員・物資の整理などを任される。第99話では江野の常設第二大隊を率いることになる。


 生駒甚助親正《いこまじんすけちかまさ》

 賢政が探し出して迎えた家臣。

 一益の下で働き、兵や使番の動き、城の引き継ぎにも関わる。第99話では江野の常設第三大隊を任される。


 加藤作内光泰《かとうさくないみつやす》

 賢政が探し出して迎えた家臣。

 成政の下で鉄砲隊の運用を学び、城兵や武器の受け取りも担う。第99話では江野の常設第四大隊を任される。


 太田又助牛一《おおたまたすけぎゅういち》

 物資と勘定に関わる家臣。

 荷札と帳面を照らし合わせ、兵糧や荷の出入りを記録する。攻略した土地の財物や銭の帳面を整理し、仕置きと補給を支える。


 前田孫十郎玄以《まえだまごじゅうろうげんい》

 帳面と現地の調査に関わる家臣。

 村の人別、田畑、水利、年貢などを確かめる。旧領主から引き継いだ記録を調べ、避難民や移住者への対応にも当たる。


 滝川儀太夫益重《たきがわぎだゆうますしげ》

 一益の甥。

 一益を助けて兵を率い、城や道の検分にも当たる。亀山攻略では東側から攻め込み、一益の浜田転任後も補佐を続ける。


 長崎弥左衛門尉元家《ながさきやざえもんのじょうもといえ》

 一益が召し抱えた家臣。

 兵の招集や村の差配を助け、益重とともに小岐須城の攻略にも当たる。


 大野飛騨守(おおのひだのかみ)

 橘家の譜代家臣。

 攻略後の杉谷城を預かる。娘は頼政の養女となり、成政へ嫁ぐ。


 今井政貞(いまいまささだ)

 政基の父。

 千種攻略後、平尾城の引き継ぎを任される。


 竹田茂兵衛高晴(たけだもへえたかはる)

 宮田を治めていた旧領主。

 橘家の家臣として兵を預かり、政澄の指揮下で上平野城攻めに加わる。


 篠原右近重尚《しのはらうこんしげなお》

 志野原を治めていた旧領主。

 橘家の家臣として兵を率い、朝霧から北伊勢へ出陣する。


 酒井左近政忠(さかいさこんまさただ)

 酒井家の分家出身。旧名は新次郎(しんじろう)。

 吉規の死後に家を継ぎ、頼政から「政」の一字を受けた。北伊勢では政澄らとともに兵を率いる。


【朝霧から江野へ移った小姓たち】


 神崎勘十郎政綱《かんざきかんじゅうろうまさつな》

 幼名は勘次(かんじ)。朝霧で賢政とともに育った少年。

 江野へ移って小姓となり、使いと取り次ぎ、武具や馬の扱いを覚える。弘治三年(1557年)春に元服し、桑名衆との野戦でも働く。


 早川小平太政孝《はやかわこへいたまさたか》

 幼名は平助(へいすけ)。朝霧出身の小姓。

 使いに出た先で道や荷車の様子にも目を配る。政綱、政泰とともに元服し、新たな名を与えられる。


 倉梨源三郎政泰《くらなしげんざぶろうまさやす》

 幼名は虎松(とらまつ)。朝霧出身の小姓。

 負けん気が強く、馬や武具に関心を持つ。元服後は鉄砲小隊を率い、味方の槍兵の動きに合わせた射撃にも当たる。


 おはつ

 朝霧の少女。

 勘次たちとともに賢政を知る。三人が小姓として江野へ移った後も、朝霧で暮らす。


 おたま

 朝霧の少女。

 おはつとともに朝霧に残り、村で暮らしている。


【甲賀・伊賀に関わる者たち】


 伴新九郎(ばんしんくろう)

 甲賀出身の家臣。

 探索、情報収集、素性調査、人材探しを担う。北伊勢の調略に加え、道三や明智家の救出に必要な道と人員の手配にも当たる。


 おりん

 伊賀の藤林家に連なる女性。

 新九郎とは別の経路で情報を集める。亀山攻略前には光秀の鹿伏兎交渉に同行し、関方の動きを調べる。


【北伊勢から加わった家臣】


 千種三郎左衛門忠治《ちくささぶろうざえもんただはる》

 千種家の旧当主。

 朝明川の戦いに敗れ、城と兵、土地の支配を橘家へ渡す。家臣となった後は土地の案内、江野城下と湯場の整備、他家との交渉、兵の指揮を担う。


 杉谷善住坊(すぎたにぜんじゅぼう)

 杉谷城を治めていた人物。

 橘家へ従い、千種攻略の夜戦でも協力する。山道や地形に詳しく、鉄砲を扱う少人数の兵の選抜と訓練も任される。


 治田松雲軒(はったしょううんけん)

 治田家の人物。

 城内の争いを収めるため、賢政に仲介を求める。治田攻略後は鉱山に関わる人と荷の手配、採掘物の受け取りと記録を任され、治田城を仕事の拠点として使う。


 近藤吉綱(こんどうよしつな)

 白瀬城を治めていた人物。

 治田包囲中に橘家へ従い、城と兵を引き渡す。古田城の近藤義晃への説得にも当たる。


 田切佐兵衛(たぎりさへえ)

 向平城と下平城を治めていた人物。

 橘家へ従った後、普請方として古田の山道などを整える。工事の人員と材料の手配も担う。


 多湖大蔵介(たごおおくらのすけ)

 下笠田城を治めていた人物。

 橘家へ従い、佐兵衛とともに普請方へ入る。江野から根の平峠へ続く道の整備や、石灰を使った路面の改良を進める。


 片山主計頭範者《かたやまかずえのかみのりもの》

 上木城を治めていた人物。

 臣従の期限に遅れたため、員弁攻略では先鋒を命じられる。負傷しながら戦い続け、員弁攻略完了後に遅参の咎を許される。


 近藤治部義晃(こんどうじぶよしてる)

 古田城を治めていた人物。

 吉綱の説得を受けて城を開き、橘家へ従う。


 西野左馬允(にしのさまのじょう)

 野尻城を治めていた人物。

 忠治の交渉を受け、城と兵を橘家へ引き渡す。


 林新右衛門通安《はやししんえもんみちやす》

 可成の舅で、可成に従う家臣。

 員弁攻略後は古田城を預かり、北への備えを担う。


 武藤五郎右衛門兼友《むとうごろうえもんかねとも》

 可成に従う家臣。

 下笠田城を預かり、亀山攻略では道を押さえる役目にも当たる。


 肥田彦左衛門直勝《ひだひこざえもんなおかつ》

 可成に従う家臣。

 上木で範者の目付を務め、留守や負傷中の差配を担う。城を受け取った後の始末も任される。


 山本刑部少輔《やまもとぎょうぶしょうゆう》

 山本城を治める人物。

 橘家への臣従を申し出る。山本城は橘の城として残され、南の小岐須に対する備えを任される。


 加治孫九郎(かじまごくろう)

 水沢城を治めていた人物。

 橘家へ従い、土地と水利の引き継ぎに協力する。従来の水の配分や井堰の管理について、事情を調べた上で判断するよう求める。


 坂田丹後守(さかたたんごのかみ)

 城の山城を治めていた人物。

 橘家へ従い、自城を残す利点を説明する。検分の結果、水沢城が残され、城の山城は廃される。


 田原遠江守元綱《たはらとおとうみのかみもとつな》

 浜田城の人物。

 橘家へ従い、四日市の市と海辺の荷の扱いを案内する。第99話では、浜田へ移る一益の下に置かれる。


 田原右京亮近宗《たはらうきょうのすけちかむね》

 羽津の人物。

 元綱らとともに臣従の条件を聞き、所領と兵を橘家の支配へ入れる。


 後藤采女正藤勝《ごとううねめのかみふじかつ》

 北伊勢の国衆。

 賢政へ待遇や抵抗した家の扱いを問い、条件を確かめて臣従する。第99話では一益の下に置かれる。


 茂福掃部助盈豊《もちぶくかもんのすけみつとよ》

 茂福の人物。

 橘家へ従う。交渉では、負傷者の湯治や元の役目へ戻れない者の扱いも確かめる。


 小串次郎右衛門常政《おぐしじろうえもんつねまさ》

 多度の人物。

 橘家へ従い、賢政の巡検では多度社と周辺の町、道を案内する。


 国府佐渡守盛邑《こうさどのかみもりむら》

 国府を治めていた人物。

 一益の交渉を受けて橘家へ従い、和睦期限後は亀山への道を閉じる。亀山攻略後は政虎の下に置かれる。


 峯八郎四郎盛祐《みねはちろうしろうもりすけ》

 峯城を治めていた人物。

 関盛信の後詰を頼みにしていたが、賢政との約束に従って城と兵、支配権を渡す。亀山攻略後は政虎の下に置かれる。


 鹿伏兎左京進定義《かぶとさきょうのしんさだよし》

 鹿伏兎定秀の弟。

 兄が関方に残る一方、甥を支えて鹿伏兎家を存続させる道を選ぶ。家として橘へ従い、亀山攻略後は政虎の下に置かれる。


 坂蔵人定住(さかくらんどさだずみ)

 鹿伏兎定秀・定義の叔父。

 定義とともに定秀の嫡男を支え、鹿伏兎家の臣従と引き継ぎを担う。


【美濃から迎えた人物と明智家】


 西村勘九郎正利《にしむらかんくろうまさとし》

 かつての斎藤山城守道三《さいとうやましろのかみどうさん》。

 長良川の戦いで賢政に救出され、世間では討死したことになる。江野で名を変えて暮らし、橘の家臣にはならず、賢政へ軍事や交渉について助言する。


 明智九郎光秀(あけちくろうみつひで)

 美濃の武士。以前の通称は十兵衛。

 明智城から家族や郎党とともに逃れ、橘家に迎えられる。賢政と通称が重なるため九郎へ改め、升と帳面の調査、軍の編制、他家との交渉などを担う。


 煕子(ひろこ)

 光秀の妻。

 身重のまま明智城を逃れ、橘家の手配で江野まで保護される。


 弥平次(やへいじ)

 光秀とともに江野へ来た明智の一行の一人。

 内務軍の責任者を任される。現地の城主や役人を介さず、賢政へ直接報告する。


 明智次右衛門光忠《あけちじえもんみつただ》

 明智の郎党。

 内務軍に入り、実働の兵の指揮を担う。


 藤田伝五郎行政《ふじたでんごろうゆきまさ》

 明智の郎党。

 内務軍で捕らえた者への取り調べと、現地での聞き取りを担う。


 溝尾庄兵衛茂朝《みぞおしょうべえしげとも》

 明智の郎党。

 内務軍で証拠品と帳面、捕縛や移送の記録を管理する。


 斎藤玄蕃助利堯《さいとうげんばのすけとしたか》

 正利の息子。

 賢政が接触を進める人物の一人。第99話では亀山へ移る政虎の下に付けることが決まる。


 蜂屋兵庫頭頼隆《はちやひょうごのかみよりたか》

 美濃の武士。

 正利が居所の確認を勧めた人物。第99話では政虎の下に置かれる。


 猪子兵助高就《いのこひょうすけたかなり》

 長良川で道三の側にいた人物。

 美濃の寺に潜み、新九郎が動きを調べている。竹中重治との仲立ちを頼む相手となり、第99話では政虎の下に付けることが決まる。


 竹中半兵衛重治《たけなかはんべえしげはる》

 美濃の竹中家の人物。

 賢政が接触を望み、猪子高就を通じて話す機会を探る。第99話まででは、橘家への仕官は決まっていない。


【尾張・大内から加わった人物】


 村井長八郎長頼《むらいちょうはちろうながより》

 前田家から利家の側へ送られた家臣。

 橘軍の指揮系統とは別に、利家の家の用を引き受ける。


 佐々平左衛門政元《さっさへいざえもんまさもと》

 佐々家から成政の側へ送られた家臣。

 成政の家を支える役目を担う。


 奥村助十郎永福《おくむらすけじゅうろうながとみ》

 前田家の人物。

 利家に荒子へ戻るよう伝えに来るが、本人の決意を聞く。自身も利家を支えるため、まず荒子で許しを得ると申し出る。


 兼松又四郎正吉《かねまつまたしろうまさよし》

 以前に賢政と会った尾張の若者。

 桑名攻略を聞いて江野を訪れ、馬廻りとして召し抱えられる。政基の下で道と家中の決まりを覚える。


 堀尾茂助吉晴(ほりおもすけよしはる)

 尾張から仕官に来た若者。

 岩倉に残る父への援兵を求めず、自身が橘家で働く意思を示す。成政の下で軍令と鉄砲隊の動きを学ぶ。


 吉田左兵衛尉興種《よしださひょうえのじょうおきたね》

 大内家の旧臣で、奉行人を務めていた人物。

 ロドリゲスの船で家族や旧臣たちとともに桑名へ来る。秀吉から政務を引き継ぎ、役所、蔵、港、商人への対応を任される。


【産業と暮らしを支える者たち】


 作兵衛(さくべえ)

 朝霧の鍛冶職人。

 江野へ移り、普請の道具や武具の製作・修理を担う。南蛮から持ち帰った工具、ポンプ、短銃などの構造を調べ、新たな製作にも取り組む。


 おせん

 作兵衛の女房。

 作兵衛とともに江野へ移る。布の管理や女衆への仕事の伝達を担い、朝霧で覚えた仕事を江野へ広げる。


 喜平(きへい)

 国友から朝霧へ来た鉄砲鍛冶。

 作兵衛が江野へ移った後も朝霧に残り、火縄銃の修理と製作、弟子の育成を続ける。


 岩松源蔵(いわまつげんぞう)

 金堀衆を率いる棟梁。

 向山での採掘を続けながら、家族の住まいを江野へ移す。治田の鉱山や古田の石灰石の調査にも関わる。


 旭巒玄東(きょくらんげんとう)

 千種の禅林寺(ぜんりんじ)の僧。

 賢政から、敵味方を分けず戦死者の供養を頼まれる。名の分かる死者の記録も残す。


 善右衛門(ぜんえもん)

 各地を巡る商人。

 朝霧から始まった橘家の商品を、領外へ売る仕事に関わる。


【秀吉の家族】


 仲(なか)

 秀吉の母。

 尾張中村から朝霧へ移り、鶏などの家畜の管理にも関わってきた。


 智(とも)

 秀吉の姉。

 仲たちとともに朝霧で暮らす。


 木下小一郎秀長《きのしたこいちろうひでなが》

 秀吉の弟。以前の名は小竹(こちく)。

 天文二十三年(1554年)、賢政から木下の姓と小一郎秀長の名を与えられる。惟丸の側に仕え、惟丸からは引き続き小竹と呼ばれる。


 旭(あさひ)

 秀吉の妹。

 家族とともに尾張中村から朝霧へ移っている。


【六角家と後藤家】


 六角義賢(ろっかくよしかた)

 六角定頼の嫡男。賢政の烏帽子親。

 橘家へ北伊勢の攻略を任せ、湯場にも訪れる。第99話で義治へ家督を譲り、承禎(しょうてい)と号する。


 六角右衛門督義治《ろっかくうえもんのかみよしはる》

 義賢の息子。

 第99話で六角家の当主となる。橘家へ土地と兵が集まることや、賢政と信長のつながりを警戒する。


 後藤但馬守賢豊《ごとうたじまのかみかたとよ》

 六角家の重臣で、綾の父。

 北伊勢への出陣では二百を率いて賢政に加勢する。章末の評定では、六角家が与えた条件の下で戦った橘家の働きを認める。


 蒲生下野守定秀《がもうしもつけのかみさだひで》

 六角家の重臣。

 章末の評定では、橘家の領地を取り上げる場合の守備と、六角家全体の兵の負担を考えて意見を述べる。


 進藤山城守賢盛《しんどうやましろのかみかたもり》

 六角家の重臣。

 橘家が六角に従い北伊勢を守る限り、領地の広さだけを問題にする必要はないと述べる。


【橘家の領外にいる人物】


 織田三郎信長(おださぶろうのぶなが)

 尾張の織田家の当主。上総介(かずさのすけ)を称する。

 賢政と再会し、橘家と書付を交わす。第99話では、六角家との同盟について意向を確かめる相手となる。


 蜂須賀小六正勝《はちすかころくまさかつ》

 木曽川周辺の川並衆を率いる人物。

 橘家の荷の輸送に加え、道三と明智家の救出で舟と船頭の手配を担う。


 梅戸治部少輔高実《うめどじぶのしょうたかざね》

 田光を押さえる六角方の人物。

 橘家とは別の立場を保つ。賢政との交渉で、員弁へ向かう兵、荷、使者が田光の道を通ることを認める。


 木造左近衛中将具政《こづくりさこんえのちゅうじょうともまさ》

 北畠具教の弟。

 北伊勢で勢力を広げる賢政の意向を確かめるため、江野へ来る。南勢へ兵を入れないことを求め、橘家との商いは続けると伝える。


 北畠中納言具教《きたばたけちゅうなごんとものり》

 伊勢国司・北畠家の当主。

 橘家の北伊勢進出を警戒し、具政を使者として送る。


 九鬼宮内少輔浄隆《くきくないしょうゆうきよたか》

 志摩の海上勢力を率いる人物。

 九鬼の船による海運で、橘家の商品と買い付けた品の輸送を支える。


 今井彦八郎(いまいひこはちろう)

 堺の商人。後の今井宗久(いまいそうきゅう)。

 橘家の商品と海運に関わる。


 ロドリゲス

 ポルトガルの南蛮商人。

 賢政から頼まれた道具、武器、書物、作物を集める。江野での商いにも応じ、大内旧臣の一団を桑名へ運ぶ。


【北伊勢戦役で橘家と戦った人物】


 畑与九郎(はたよくろう)

 切畑城主。

 八風を越えて来た橘軍を少数と見て城外へ出るが、伏兵と鉄砲隊に挟まれ、討たれる。


 萩沢備前守(はぎさわびぜんのかみ)

 千種忠治に従う人物。

 朝明川の戦いで橘軍と戦い、討たれる。


 治田山城守(はったやましろのかみ)

 治田城主。

 橘軍の包囲中に六郎左衛門尉の内通を疑い、捕らえようとして斬られる。


 治田六郎左衛門尉《はったろくろうざえもんのじょう》

 治田家の人物。

 橘側の策で内通を疑われ、山城守との争いで主君を斬る。治田攻略後、主殺しと内訌の責で処刑される。


 種村大蔵太夫高盛《たねむらおおくらだゆうたかもり》

 金井城主。

 臣従交渉の裏で賢政を殺す計画を立て、息子の種村弾正左衛門秀政《たねむらだんじょうざえもんひでまさ》とともに処断される。


 富永六左衛門(とみながろくざえもん)

 長深城主。

 桑名衆の援軍が退いた後も臣従を拒み、長深城攻めで主だった一族とともに討たれる。


 大木舎人(おおきとねり)

 大木城主。

 当初は長深とともに抵抗するが、長深落城後に開城し、橘家へ従う。


 伊藤武左衛門実房《いとうぶざえもんさねふさ》

 桑名の東城の人物。

 長深と大木を支えるため兵を出し、橘軍と戦う。桑名攻略では東城を攻められ、家は残されない。


 樋口治部少輔正家《ひぐちじぶのしょうまさいえ》

 桑名の西城の人物。

 伊藤、矢部とともに橘軍へ対抗する。桑名攻略で西城を失い、家は残されない。


 矢部右馬允(やべうまのじょう)

 桑名の三崎城の人物。

 桑名衆として橘軍と戦う。三崎城も攻略され、家は残されない。


 関中務大輔盛信《せきなかつかさのたいふもりのぶ》

 亀山を本拠とする関宗家の当主。

 宿野峠で敗れた後、橘家と期限付きの和睦を結ぶ。和睦が切れると亀山で抗戦し、城内まで攻め込まれた末に自害する。


 鹿伏兎近江守定長《かぶとおうみのかみさだなが》

 関方として出陣した人物。

 宿野峠の戦いで賢政と戦い、討たれる。


 鹿伏兎豊前守定秀《かぶとぶぜんのかみさだひで》

 定長の息子。

 父を討った賢政への臣従を拒み、亀山へ向かう。一方、嫡男へ家督を譲り、弟の定義と叔父の定住に家を残すことを託す。


 小岐須常陸守盛光《おぎすひたちのかみもりみつ》

 小岐須城を預かる関方の人物。

 開城勧告を拒み、益重と元家の兵に攻められて討たれる。


 岩間七郎左衛門《いわましちろうざえもん》

 盛信に仕える家臣。

 亀山攻防で傷を負った盛信を支え、最後は介錯を務めた後、自らも命を絶つ。


【湯の谷の宿に関わる人物】


 清兵衛(せいべえ)

 湯の谷で宿を営む主人。

 過去の旅商人一家襲撃に関わっており、宿で起きた連続殺人事件の被害者となる。


 弥吉(やきち)

 清兵衛の宿の番頭。

 客の名と部屋割りを記録する。主人の用事と聞かされ、客を呼び寄せる文を代筆する。


 お志乃(おしの)

 宿の女中。

 十二年前に殺された旅商人夫婦の娘。一家を襲った者たちを宿へ集め、復讐を行う。


 権助(ごんすけ)

 かつて荷駄を運んでいた男。

 旅商人一家の襲撃に加わり、奪った銀を受け取っていた。一方、生き残った娘を逃がしており、事件の調べで過去を告白する。


 庄三郎(しょうざぶろう)

 商人として宿へ来た男。

 十二年前、旅商人の荷と銀を奪う話を持ち掛けた人物。連続殺人事件の最初の被害者となる。


 源六(げんろく)

 薬売りとして宿へ来た男。

 十二年前の襲撃に関わっており、湯殿で殺される。


 徳松(とくまつ)

 木地師として宿へ来た男。

 十二年前の襲撃に関わる。連続殺人事件では内務軍の保護と調査を受ける。



 作中設定紹介


 ※第99話までの内容を含みます。


【物語の時代】


 第三章は、天文二十三年《てんぶんにじゅうさんねん》(1554年)の北伊勢出陣から、弘治三年(こうじさんねん)(1557年)の亀山攻略と戦後の仕置きまでを扱う。


 朝霧村で育てた産業と常備兵をもとに、橘家は八風峠を越えて伊勢へ進出する。攻略した土地では旧領主の城、兵、支配権を引き継ぎ、行政と軍を橘家の下へまとめていく。


 第99話時点の年代は、弘治三年(1557年)七月。


【橘家の領地と拠点】


 朝霧村(あさぎりむら)

 橘家の出発点となった近江の村。

 賢政が江野へ移った後も頼政を中心に営みが続き、鉄砲の製作や硝石の生産などで伊勢側を支える。


 江野(えの)

 北伊勢に置かれた賢政の新たな本拠。

 城と麓の屋敷、工房、蔵が整えられ、家臣や職人、書役が集まる。各地の報告と命令、物資の手配も江野を中心に行う。


 江野城(えのじょう)

 菰野富士(こものふじ)に築いた山城。

 山上には城館、兵の詰所、武具蔵などを置く。普段の生活と評定は麓の屋敷で行い、荷を上げる道と使番の通る道も分けて整える。


 千種(ちくさ)

 朝明川沿いの田畑と村々を抱える土地。

 北伊勢で最初にまとめて仕置きを進めた地域の一つ。政虎が城を預かった後、第99話で秀吉へ引き継ぐ。


 菰野(こもの)

 宿野方面への備えと、兵や荷の往来を担う拠点。

 一益が預かった後、第99話で利家へ引き継ぐ。


 員弁(いなべ)

 治田から山口、古田、金井、長深などへ続く地域。

 橘家は各城を攻略・開城させ、可成を中心に旧領主と兵をまとめる。鉱山や石灰石の産地も橘領へ加わる。


 治田(はった)

 城と鉱山を持つ土地。

 攻略後は松雲軒が人と荷、採掘物の管理を担う。治田城は鉱山の仕事をまとめる拠点として使う。


 古田(ふるた)

 石灰石が見つかった山間の土地。

 北への守りに加え、石灰石を掘り出して運ぶための山道を整える。


 桑名(くわな)

 水運と海運の拠点。

 攻略後は矢田城を見張りに残し、政務は役所、兵の詰め所は陣屋へまとめる。吉田興種が秀吉から政務を引き継ぐ。


 四日市(よっかいち)

 市と海辺の荷の集まる土地。

 海からの荷を陸へ上げ、江野や西へ送る拠点として整備を検討する。章末では一益が浜田へ移り、港と町、蔵、周辺の道をまとめて差配する。


 多度(たど)

 多度社への参詣者と商人が行き来する土地。

 宿や店、街道を生かすほか、員弁方面への兵糧と荷駄を集める役目を持つ。


 亀山(かめやま)

 鈴鹿を越える道と伊勢の平野を結ぶ拠点。

 旧関家の城は攻略時に焼ける。橘家は旧城の再使用ではなく、城と町を別の場所へまとめて新設する方針を立て、政虎に任せる。


 二十万石の橘家

 北伊勢で引き継いだ古い帳面を合わせた、章末時点の所領規模。

 実際の年貢や収入が二十万石分そろったことを意味せず、田畑や升、村の記録を調べ直す仕事が残っている。


【領地と家臣の扱い】


 旧領主の家臣化

 攻略や臣従によって加わった領主を、橘家の家臣として組み込む仕組み。

 家名を残すことと、以前の土地、城、兵を自分のものとして持ち続けることは分ける。仕事は元の地位だけで決めず、本人の能力と働きを見て与える。


 城の整理

 守りや物流に必要な城を残し、不要な城を廃する方針。

 旧領主の家格だけで残す城を決めず、道、地形、必要な兵、普請の負担を比べる。壊す城からは、使える材木や金具を運び出す。


 銭知行(ぜにちぎょう)

 村や田を家臣へ分け与える代わりに、銭で支給する知行。

 半年ごとの支給と働きの評価を行い、役目に応じた役料も付ける。公用の輸送や武具、城の修理などの費用は、家臣個人の知行とは別に橘家が負担する。


 褒賞と家臣の扶持

 戦働きだけでなく、補給、使番、調略などの功にも感状と銭を与える。

 負傷者の療治や湯治、元の役目へ戻れない者への別の仕事、遺族への扶持も定める。


 区長制(くちょうせい)

 村の用を橘家へ取り次ぐ代表を置く仕組み。

 北伊勢でも名主に代わって区長を置く。村から候補を出させ、橘家が調べて認める。区長自身が村の領主になるわけではない。


【政務の組織】


 五方(ごほう)

 江野で設けられた五つの実務組織。

 総務方、戸口方、地方、産業方、勘定方に仕事を分け、千種にも同じ名の組織を置く。複数の仕事に関わる案件は、書付を回して処理する。


 総務方(そうむかた)

 命令や書付を受け取り、必要な担当へ回す組織。

 自分のところですべてを処理せず、どこへ渡すべきかを決める。


 戸口方(ここうかた)

 人と家族の出入りを記録する組織。

 移住者や江野で働く者の名を帳面に載せ、住まいと兵糧の手配へつなげる。


 地方(じかた)

 土地、屋敷地、水路、境などを扱う組織。

 戸口方や区長と話を合わせ、人が住む場所と土地の使い方を調整する。


 産業方(さんぎょうかた)

 生産と仕事に必要な物資の調達先を扱う組織。

 炭や布などの不足を調べ、職人や商人と話を通す。支出は勘定方と合わせて決める。


 勘定方(かんじょうかた)

 銭と物資の収支を確かめる組織。

 必要な数と手持ちを照らし合わせ、支出や蔵の記録を管理する。


 普請方(ふしんかた)

 五方とは別に設ける、工事の現場を担う組織。

 佐兵衛と大蔵介が人足、職人、材料、工事の進め方を差配する。田畑や水に関わる工事では、先に区長と話を付ける。


 升の統一(ますのとういつ)

 土地ごとに違っていた升を、江野で決めた基準へ揃える取り組み。

 橘の焼印を入れた升を村、城、蔵、市へ配る。古い升と帳面も残し、従来の量の違いと、意図的な抜き取りを区別して調べる。


【寺院と治安】


 寺院帳(じいんちょう)

 伊勢領内の寺を調べ、登録するための帳面。

 寺領、僧と寺に属する者、収入、蔵、武器、出入りする者などを記す。寺の営みに必要な財産は認める一方、村の支配、独自の徴税や裁判、僧兵の保有は認めない。


 寺の登録と解体

 橘の法に従う寺は、宗派を問わず残す。

 説明を受けても法に従わず、解体命令にも抵抗する寺は処分する。本尊、経典、位牌、過去帳、墓の管理は別の寺へ引き継ぎ、村の葬いや供養を続けられるようにする。


 内務軍(ないむぐん)

 通常の軍とは別に設ける、治安と犯罪、不正を取り締まる組織。

 三百から四百ほどを想定し、弥平次がまとめる。山賊や逃亡者、盗品、横流し、役人の不正などを調べ、城、村、市、街道、蔵、鉱山にも立ち入る。


 内務軍の権限

 現地の城主や上役の許可を待たず、捕縛、取り調べ、証拠の確保、武器の取り上げを行える。

 報告は賢政へ直接上げる。処刑や家の取り潰し、寺の解体などの最終判断は賢政が行う。


 懲罰部隊(ちょうばつぶたい)

 罪人を危険な軍役へ就かせる部隊。

 死罪に代わる選択肢として三年間の軍役を課す。城攻めでは堀埋め、柵の破壊、梯子掛け、突入口への先行などを担い、期間を生き延びれば自由となる。


【軍制と軍令】


 直轄連隊(ちょっかつれんたい)

 賢政の下に置く、複数の大隊と本部からなる軍。

 北伊勢進出後、三個大隊九百と本部百を合わせた千人の編制を作る。古参と旧千種・旧杉谷の兵を混ぜ、出身ごとに別の軍として残さない。


 大隊(だいたい)

 橘軍の主要な部隊単位。

 基本は三百人。三個中隊を置き、鉄砲兵と槍兵・騎兵を組み合わせる。


 中隊(ちゅうたい)

 大隊の下に置く部隊。

 この章の編制では百人を基本とし、小隊をまとめる。


 小隊(しょうたい)

 中隊の下に置く五十人の部隊。

 小隊長が指揮し、分隊をまとめる。


 分隊(ぶんたい)

 十人を基本とする最小の部隊。

 分隊長が直接まとめ、働きの記録と命令の伝達にも関わる。


 江野の常設四大隊

 亀山攻略後、転任する指揮官を外して組み直す部隊。

 第一を成政、第二を家次、第三を親正、第四を光泰に任せる。負傷者と使用できる鉄砲を数え直した上で編制を進める。


 連隊本部(れんたいほんぶ)

 各隊の報告と命令、軍全体の判断を支える組織。

 継潤が地形や兵糧、部隊の動きを見て意見を出す。使番と伝令によって各隊をつなぐ。


 偵察小隊(ていさつしょうたい)

 直轄連隊の整備に合わせ、各大隊へ五十人ずつ置く偵察の部隊。

 橋、川、浅瀬、脇道、敵の番、味方の位置を見て報告する。敵の内部を探る甲賀衆とは役目を分ける。


 首級によらない戦功評価

 敵の首を持ち帰った数ではなく、与えられた役目を果たしたかを記録する制度。

 持ち場の維持、隣の隊との連携、弾薬運搬、負傷者の搬送、命令の伝達も評価する。任用には普段の働き、素行、読み書き、算用、軍令への理解も用いる。


 軍令(ぐんれい)

 橘軍が守る戦場の規則。

 略奪、無断の追撃、持ち場の放棄、助けられる負傷者の見捨てなどを禁じる。違反は指揮官による評議と評決で処分し、賢政自身も対象とする。


 捕虜と降伏者の扱い

 武器を置いて降った者は、原則として勝手に殺さず、水と食事を与え、傷を手当てする。

 旧領主の一族、郎党、村から動員された兵は分けて調べる。戦況に応じた例外判断は認めるが、理由を後で報告する。


【軍事技術】


 鉄砲隊

 火縄銃を部隊としてまとめて運用する兵。

 装填、交代、射線、白煙の流れを見て撃つ。味方の槍兵が前へ出た場合は、射撃を止めたり射線を変えたりする。


 火縄銃の増備

 出陣時に揃った二百丁を、直轄連隊の整備に合わせて五百丁へ増やす取り組み。

 国友からの買い足しと、旧千種方から得た鉄砲の修理を進める。数が増えても口径や弾丸はまだ揃わず、喜平が分類と製作を続ける。


 弩(ど)

 弓を据えた機構で矢を射る武器。

 鉄砲や弓とともに城攻めで用い、守兵を押さえる。


 硝石丘(しょうせきおか)

 火薬に必要な硝石を得るため、朝霧に設けた施設。

 糞尿や藁、土などを集めて生産する。村での廃棄物の扱いや掃除の定めにもつながる。


 輪燧式短銃《りんすいしきたんじゅう》

 南蛮から買い入れた、火縄を使わない短銃。

 ばねで動く鋼輪と黄鉄鉱を擦り合わせ、火花で点火する。作兵衛が仕組みと部品を調べるための見本にもする。


 燧石(ひうちいし)

 打金に当てて火花を出すため、南蛮から取り寄せた石。

 輪燧式とは別の点火機構を試す材料とする。章末までに新しい銃の完成が確認されたわけではない。


 後装式旋回砲《こうそうしきせんかいほう》

 南蛮から二門を買い入れた砲。

 火薬と弾を詰めた薬室を後ろから差し替えて使う。試射で継ぎ目からの火と煙を確かめ、操作者の位置を決めてから運用する。


【道路と物流】


 八風峠(はっぷうとうげ)

 近江と北伊勢を結ぶ峠。

 北伊勢出陣では上田勢が押さえ、兵糧や玉薬、予備の武器を送る道を守る。


 鞍掛峠(くらかけとうげ)

 近江から員弁へ入る峠。

 政澄の朝霧勢が越え、江野側からの軍と合わせて城へ同時にかかる。


 根の平峠(ねのひらとうげ)

 江野側から近江へ続く峠。

 普請方が江野から峠までの道を整える。領外へ工事を広げる場合は、六角家へ話を通す。


 石灰を使う道の改良

 古田の石灰石を焼き、土へ混ぜて路面を締める試み。

 短い区間で荷車と雨の影響を確かめ、水の溜まる場所は排水も直す。道の状態を見ながら工事を広げる。


 宿場(しゅくば)

 旅人、使者、荷運びの者と馬を休ませる場所。

 井戸や道、馬を継ぐ場所は橘家が整え、宿や飯屋は商売をする者に任せる。水、土地、人通りを調べてから増やす。


 伝馬(てんま)

 宿場ごとに人と馬を置き、使者や荷を次の宿場へ引き継ぐ仕組み。

 馬や人を使う代金を払い、利用の許可と運んだ荷を記録する。御用に差し支えなければ商人にも使わせる方針とする。


 乗合馬車(のりあいばしゃ)

 人を馬に引かせる車へ乗せ、町の間を運ぶ構想。

 道の整備に合わせて検討する。車の作りや使う道、運行の方法を確かめてから進める段階にある。


 四日市での荷の積み替え

 大きな船を沖に留め、小舟で浜へ荷を運ぶ仕組み。

 九鬼の船で試し、岸へ上げた荷を西へ送る道と人手も確かめる。


 鈴鹿の関所廃止

 亀山攻略後、関所と関銭をなくす方針。

 通行を止めて銭を取る代わりに人と荷を町へ集め、宿、市場、蔵の利用と商いを増やす。


【鉱山・普請・南蛮技術】


 向山と岩松組

 朝霧側から続けてきた鉱山と、源蔵の金堀衆。

 江野へ住まいを移した後も採掘を続け、千種側から通う道の整備も検討する。


 治田の鉱山

 治田攻略によって橘家が引き継いだ鉱山。

 坑道内の仕事は金堀の頭が担い、松雲軒が外の人員、荷、材料、採掘物と銀の送り出しを管理する。


 吸い上げポンプ(すいあげぽんぷ)

 南蛮から二基を買い入れた、水を汲み上げる道具。

 革の弁で水の戻りを防ぐ。まず江野で揚程や漏れ、耐久性、修理を確かめ、その後に鉱山での利用と模製を考える。


 測量道具(そくりょうどうぐ)

 羅針盤、下げ振り、水平を確かめる道具、測鎖、板と照準具など。

 三組を買い、光秀と玄以らが扱いを試す。測る人が変わっても数字を比べられるよう、使い方と記録も揃える。


 南蛮の工具と長さ・重さの基準

 鋸、鑢、万力、錐、螺子を切る刃具、金属の尺、天秤、分銅など。

 作兵衛が部品製作に使い、寸法を揃える方法を試す。部品の完全な互換性や大量生産が成立した段階ではない。


 南蛮の技術書

 炉、ふいご、水車、鋳型、大砲などの図を載せたイタリア語の書物。

 通詞には読めないため、ロドリゲスに読める者を探させ、図の説明も翻訳するよう頼む。


 硝子とレンズの試作

 遠くを見る筒を得られなかったため、硝子と研磨用の道具を買う。

 江野へ持ち帰って、使えるレンズを削れるかを確かめる段階にある。


【湯場と新たな産物】


 湯の山(ゆのやま)

 三嶽寺攻略の際に見つけた湯の湧く谷。

 湯量や熱さを調べ、小さな湯殿と休み小屋から整える。初めは負傷した兵や普請の人足を優先し、後に宿と商いも広がる。


 僧兵鍋(そうへいなべ)

 三嶽寺に残っていた書付をもとに賢政が作る鍋。

 猪肉、味噌、甘酒、山芋、茸を使う。ここで使った甘酒が、新しい商品を考えるきっかけにもなる。


 橘の手作り甘酒

 橘酒造の江野支店で売り始めた商品。

 酒を飲まない者や子供にも出せる品として、賢政が販売を進める。


 サツマイモ

 ロドリゲスから種芋と蔓を買い入れた作物。

 江野で畑を分けて試し、当面は食べるより苗と種芋を増やすことを優先する。


 トウモロコシ

 南蛮から種を得て試験栽培を始めた作物。

 受粉を考えて数列にまとめて播き、まず土地に合うかを確かめる。


 カボチャ

 南蛮から種を得た作物。

 食用として試し、蔓を広げる場所と実を取るための受粉も考える。


 唐辛子(とうがらし)

 南蛮から種を得た、味付けに用いる作物。

 暖かくなる時期と水の加減を見ながら試し、初年は種を増やすことを優先する。


【領外との関係】


 梅戸家との通行交渉

 同じ六角方の田光を、兵、荷、使者が通るための交渉。

 通る日と道を知らせ、勝手な徴発や宿取りをしないことを約束する。梅戸家の土地を橘領へ組み込む話とは分ける。


 関家との期限付き和睦

 宿野峠の戦いの後、弘治三年(1557年)六月末まで新たに兵を進めないと定める。

 期間中の自発的な臣従は停戦違反としない。期限を守って準備を進め、切れた後に亀山を攻略する。


 北畠家への対応

 南勢へ兵を入れず、商いを続ける方針。

 亀山攻略後も神戸へは進まず、取った土地を落ち着かせることを優先する。


 南蛮商人と伴天連

 橘領の法に従うことを条件に、商いと布教を認める。

 江野に商館や倉の場所を用意する一方、一商人による独占や、無断で領外に橘の名を使うことは認めない。


 六角家との主従関係

 橘家は六角家の下で北伊勢を守る立場にある。

 章末では義治が家督を継ぎ、橘家の勢力拡大を警戒する。賢政は三好との和睦と織田との同盟を提案し、信長の意向を確かめる役目を受ける。

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