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さぬき製麺 しまなみ店、異世界ダンジョンで営業中です‼  作者: 七生(なお)。


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第9話 初来客には冷やぶっかけを

「「い、いらっしゃいませ~!」」


 初めての来客に俺もクリスも声が上ずり気味だ。

 来てくれたのは、革の甲冑やマントを着込み、それぞれ剣や戦斧や杖を持った三人組の冒険者パーティー。さしずめ、剣士(♂)、戦士(♂)、魔法使い(♀)といったところだろう。ヒヤッハーしてそうなヤバそうな人じゃなさそうで良かった。


 三人は、店内に入るや不思議そうにきょろきょろ辺りを見回している。

 全員、平気で【聖域化】された店内に入ってきているところを見ると、危険な人たちではなさそうだ。


 ちなみに店を開いて最初のお客が女の人なら縁起がいいと先輩から聞いたことがある。

 果たして最初に店に足を踏み入れてくれたのは、黒のマントに帽子で、いかにも魔法使いといったいで立ちの女の子だった。

 細身の杖を両手で握り、こちらを警戒するように鋭い視線を送ってきている。


「おう、あんたがマスターか?」


 そう言って陽気に声をかけてきたのは剣士らしき男。俺より少し年上だろうか。使い込まれた革の軽甲冑に細身の片手剣を腰にさしている。


「俺はこのパーティーでリーダーをしているメスカルっていう者だ。これでもCランクなんだぜ」

「はじめまして。瀬戸内と言います。皆さん、ご来店ありがとうございます」

「お、おう……。こっちの無口なのがガイルで、その後ろにいるのがロゼだ」


 大盾を背負った戦士風の男が無言でこちらを覗っている。

 ちなみに魔法使いらしき女の子は、俺を見るや警戒するように大盾戦士の後ろに隠れてしまった。


「ダンジョンの中で店なんて初めてだ。よろしくな」

「こちらこそ」


(あれ?!)


 メスカルから差し出された手を握り返した瞬間、何かふわっとした感覚がした。気のせいだろうか。

 茶髪で巻き毛のメスカルは見た目はチャラそうに見えるが、握手した手は節くれだって皮が分厚い。いかにも本物の剣士の手という気がする。


「メスカル気を付けて! ダンジョンでこんな高級店なんて怪しすぎよ!」


 俺とメスカルが握手をするのを見て、戦士風の男の陰に隠れていた女の子が出てきた。


「おいおい。セトーミさんは悪い人じゃないぞ」

「何言ってるの! この人、自分でシャーマンなんて名乗ってるのよ。怪しすぎでしょ!」

「いや、お前、この人はなあ……」

「シャーマン様に対するその発言。今すぐ取り消してください!」


 クリスが大股でこちらにやって来た。額に青筋立てて、ロゼに詰め寄ろうとする。

 普段もじもじしている姿を見慣れているせいか、俺は内心クリスの意外な姿に驚いていた。


「そうだぞロゼ。セトーミさんに失礼だろうが」

「何言ってんのよ。そもそもシャーマンなんて本当にいるはずないじゃん!」

「シャーマン様に対する無礼な物言い、もう許せません!」

「クリス、お客様に対して失礼だぞ!」

「だ、だって……」

「ロゼも落ち着けよ」

「ふん!」


 いきなりの展開に、メスカルと俺、更にはガイルも入って何とか事なきを得た。

 ロゼとクリスは相変わらず、ふてくされて互いにそっぽを向いている。


「見苦しいところを見せちまってすまねえな。俺たちは運悪くアースドラゴンに出会っちまってな。命からがら逃げて来たばかりなんだよ」

「やはり出ましたか」

「ああ。ギルドの資料じゃ確か十五階層にいるらしいんだけどな。ところで本当に、何か食わしてくれるのか?」

「もちろんです。うちはうどん屋なんで、うどんでしたら準備できますよ」

「わかった。とりあえず水の補給とそれを三人前頼む」

「分かりました。そちらのテーブル席でお待ちください」


 俺がキッチンに向かい、入れ替わるようにクリスが水の入ったグラスを配った。


「水は頼んでないんだが」

「お水はサービスなので無料です。足りなければ、こちらをどうぞ」


 クリスはそう言いながら、冷水の入ったピッチャーをテーブルに置いた。


「お、おい。このコップガラスだよな。しかも氷が入っているし。こっちの大きなガラス瓶は何だか軽いな」

「だから言わんこっちゃない。氷の入ったお水なんて、王都でも見たこと無いわ。シャーマンだとかなんとか言って高いお金取ろうとしてるに決まっているわ!」

「でもな、セトーチさんは本物だぞ」

「メスカルの【危険感知】は中でしょ! さっきもアースドラゴンに襲われたし」

「あいつは、完全にダンジョンと同化してたんだよ。しかもここ十階層だぞ。大体、お前なんてスキル持ってないだろうが!」

「私は、自分の直感を信じてるの!」

「……まあ、まあ」

「ガイルは黙ってて」

「……」

「お前、八つ当たりしてんじゃねえよ」

「ふん!」


 ◆


 客席から聞こえるにぎやかな話し声。

 なんだか店を開いた実感がする。


 俺はうどん玉を茹でると、冷水でしめて器に盛った。

 三人とも歩きどおしらしく、少し汗ばんでいるようなので、冷たいモノがいいだろう。

 濃い目のつゆを回しかけ、天かすとネギを乗せる。最後にしょうがを丼の内側に少しつけた。本当は大根おろしを真ん中に乗せ、刻みのりを散らし、最後に瀬戸内レモンを乗せたいところだが、具材がないので今はこれで精一杯だ。


「セトーミ様、運びますね」

「ありがとう」


『さぬき製麺』は、セルフうどんの店だが、お客がつくまではクリスにホールを担当してもらうことにしている。


「はい、ぶっかけうどんの冷≪ひや≫です」

「うひょーっ! 美味そうだ!」

「ちょっと待って! まだ料金を聞いてないわ!」

「水袋の補給とお食事で、ひとり2,000ギルです」

「え、ホントに……」

「ま、マジか! いくら何でも安すぎるだろ!」

「当たり前です! 何といってもセトーミ様はシャーマンなのですから!」


 ドヤ顔のクリスだが、俺としては「サラリーマン」と言われているみたいで、少し恥ずかしい。しかも2,000ギルって2,000円相当。俺としては、本来の3倍近い値段を吹っ掛けているようで、心苦しいのだが、相場ではもっと高いらしい。


「ずずっ……うま~っ!」

「美味しいっ! こんなお料理初めて食べたよ~」

「……!」


 三人はあっという間に、俺のうどんを完食してくれたのだった。



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