第7話 クリスの寝顔とふわふわの朝
「うわっ!」
目が覚めたら、目の前に美少女がいた。
色白の肌にさらさらの銀髪がかかっている。
どうやら、昨日、クリスを見守っているうちに、寝落ちしてしまったらしい。
うっすらと笑みを浮かべて幸せそう。可愛らしい寝息に合わせて小さな胸が上下している。
―――い、いかん。
思わず、クリスの寝顔に見とれてしまっている自分に気づき、頭を振る。
俺にはやましい気持なんか無いからな! 説得力はないが信じてくれ!(二回目)。
とにかく、クリスは疲れているのだから、このままそっと寝かしておいてやろう。
クリスを起こさないよう、抜き足差し足で階段を下りたのだが……。
「ひ、ひやい~っ!」
突然部屋からクリスの声が響いた。
「クリスどうした? 大丈夫か?」
「キャッ!」
「あっ、いきなり入ってごめん」
「は、はうう……」
部屋に入ると、クリスはベッドの上で体を起こしていたのだが、俺の顔を見るなり布団で顔を隠してしまった。
「セトーミ様、昨日はすいませんでした~」
消え入るような声のクリス。どうやら、すっかり元気になったようだ。
「そういや結局、風呂に入らなかったよな。今からシャワーでも浴びるといいよ」
「え、そ、そんな……申し訳ないです」
「いいから、いいから」
俺は、遠慮するクリスの手を引き、浴室に連れていった。
「これがボディーソープ……って、わかりやすく言うと石鹸だよ。それでこっちが、リンスインシャンプー……って、頭につけて髪の毛を洗うやつ。遠慮せず使ってね」
俺の説明にコクコクと頷うなづくクリス。
しばらくするとシャワーの音に混じって鼻唄が聞こえて来たので、俺も安心して朝食の準備をすることにしたのだった。
◆
「セトーミ様、ありがとうございました」
トーストを乗せた皿を並べた後、コーヒーを淹れているとクリスがやって来た。
それにしても……。体操服の上下を着ているだけなのに、けしからんくらい可愛い。
「本当にお世話になってばかりで、申し訳ないです」
タオルで髪を拭きながら何度も頭を下げるクリス。動くたびお風呂上がりのいい香りが漂ってくる。
「昨日は見苦しい姿をみせてしまい、申し訳ありませんでした。しかも恐れ多いことにシャーマン様に介抱していただくなんて……」
「気にしなくていいよ。それよりクリスが元気になって何よりだ」
俺は、横を向きながら応えるのが精一杯である。
ようやく慣れて来たのだが、俺はシャワーあがりで可愛さが何割か増したクリスをまだ正視できないでいる。
「それより朝ごはんにしよう。もう用意が出来ているんだ」
「私ったらお食事のお手伝いもせずに、申し訳ありません」
「そんなの気にしなくていいよ。それに電化製品……いや魔道具の使い方も教えてないし。とにかく、俺の国の朝食を味わってみてよ」
「はくっ、はふっ……ふわふわサクサク甘いです~♪」
ふふふ……。そうだろうとも。
この食パンは、妹の道後温泉土産。
人気店の食パンなだけあって、耳までふわふわである。
なんでも随分並んで手に入れたそうだ。
しかも、このパンには、姫路に出張したときに箱買いしてしまった『アーモンドバター』がたっぷり塗られているのだ。
「この、つぶつぶザクザクがたまりません~」
「気に入ってくれて嬉しいよ。甘さも控え目だから、後味もいいだろ」
「はい。このカリッとした粒は木の実でしょうか?」
「これは、落花生といってね…………」
「えっ、それは本当でしょうか? 土の中でマメが育つなんて、初めて聞きました。さすが、シャーマン様です」
「いや、俺が育てている訳じゃないよ。それより、このちょっと焦げてるところ食べてみて」
「は~ん。幸せ過ぎます~♪」
クリスは蕩けるような顔で喜んでくれた。
どうやら完全に回復したようだ。
そしていよいよ、俺たちは店を開けたのだが……。




