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さぬき製麺丸亀店、異世界ダンジョンで営業中です  作者: 七生(なお)。


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第50話 シャーマン伝説

 王都での盛大な結婚式を終えた後も、俺たちの日々に変わりはない。ダンジョンで店を開き、相変わらずうどんを打っている。

 ただ、俺は会社に辞表を出したことにより、仕入れは本社を通さず、現地のモノだけを扱うようになった。店の名も『洞窟亭』と改名。この世界で店をやっていく上での俺なりのケジメである。

 そしてレベルは、100を越えた後、いつの間にか1に戻っていた。文字通り1からのスタートだ。


「次こそ約束通り、私もセトーミ様たちの世界へ連れて行ってくださいね。久しぶりに、沙樹ちゃんにも会いたいです」


 相変らずの体操服姿で微笑むクリス。新調した体操服に『2-B 瀬戸海』なんて縫い付けなくてもいいと思うのだが。


「だって、私はセトーミ様のものですもの。胸に大きく自分の名前が書かれてあることが嬉しいんです」


 実はクリスが例の布を付けているのが、王都で話題になっている。


 高級衣料店では最新のデザインとして「2-B」のロゴがデザインされた服や小物が売れているらしい。

 そしてクリスは、なぜか最近ブルマの着用を控えている。今日もあずき色に二本のラインが入った、ジャージの長ズボン。

 別に俺の前くらいなら好きな格好で構わないのに。すこしさびしいのは内緒だ。


「それから、セトーミ様も私たちのものですよ」

「“私たち”って……え、もしや……クリス?!」

「セトーミ様……はうう……」


 クリスはそう言うと、恥ずかしそうに自分のお腹をさすったのだった。




 ==============================


 その昔、王都にほど近いダンジョンの奥に、シャーマンを名乗る一人の男が現れた。

 彼は漆黒の瞳と髪、そして白い衣装を纏っていたという。

 その頃、王国では一部の権力を持った大貴族とその手下の軍部が専横を極めていた。悪人どもは、罪の無い人々を虐げ、しかも自らは何ら罰せられることもなく横暴の限りを尽くしていた。

 その行いに国王も頭を痛めていたのだが、一歩間違えば内乱の危機も孕んでいたため、誰も手が出せない。


 そこで、シャーマンは街に出向いて困っている人々を助け、横暴な貴族や軍部を排除した。しかも武器を手にすること無く、一滴の血も流さずに王国を本来あるべき姿に導いた。

 後に国王から禅譲を持ち掛けられたが、それを丁重に断った後、自らを国の守護に任じ、王国を陰で支え続けたという。


 そして異世界から未知の文物を召喚し、王国を中心に大陸中を富ませた。各国の王たちはシャーマンに臣従を誓い、互いに争いをやめ、大陸は平和的に発展を遂げた。


 やがて彼は聖なる力を持ったひとりの美しい女性と恋に落ちた。


 シャーマンは高潔な魂を持つ男性にしかなれない。

 言い伝えでは、特定の女性に心を惹かれて結婚しようものなら、その強大な力は次第に失われ、最後にはごく普通の一般男性に戻ってしまうとも言われている。

 しかし、シャーマンはそのようなことも全てご承知の上で、ひとりの女性と結ばれる選択をした。


 結果、シャーマンは、強大な力を失うことになったのだが、それと引き換えに永遠の愛を手に入れた。


 そして二人は幸せに結ばれたのだった。


 ==============================




「ねえ、ママ。この本に書いてあることって、本当なの?」

「ええ。そうよ。ママはとてもよく知ってるわ」

「じゃあ、アヤも大きくなったらシャーマン様のお嫁さんになる。そしたらママたちみたいに一生幸せになれるんでしょ?」

「ふふふ……あなたは本当にママにそっくりね。ママも子供の頃、絶対にシャーマン様と結婚するって決めたのよ」


 クリスはそう言うと、娘のつややかな髪を優しくなでた。


「ねえ、ママはどうしてシャーマン様と結婚したいと思ったの」

「それはね……」


 クリスはそう言うと言葉を区切った。


「……アヤのばあばとじいじがとっても幸せそうだったからよ」

「ふううん」

「そんなママの願いを聖女様が叶えてくれたの」

「……せいじょ? じゃあ、アヤの願いも聖女様が叶えてくれるかな」


「アヤの願いなら聖女様も、きっと叶えてくれると思うわ」

「やったあ!」 


「パパ~っ! アヤねー、将来シャーマン様と結婚するの~。聖女様が叶えてくれるんだ」

「おお、そうか、よかったな。アヤならきっと結婚できるよ」


 俺は駆け寄って来た愛娘を抱きとめるとそのまま膝に乗せた。


 アヤの外見は、どちらかというと俺よりクリスに似ている。いや、子どもながらすでにシャーマンと結婚したいなんて言っている時点で、内面もクリスに似ているのかも知れない。

 父親としては少し悔しい所だが、アヤとクリスの可愛さに免じて許そう。


「そういや、俺だけじゃなくて、義父とうさんも、シャーマンって呼ばれていたよな」

「はい」


 俺は、婚約前、はじめてクリスの両親に会った日のことを思い出したのだった。

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