第49話 永遠の誓いと讃岐うどん
そして翌年―――。
「クリス……」
「はい」
俺の前には、純白のウエディングドレス姿のクリス。
クラクラするくらい可愛いのだが、胸元には「2-B 瀬戸海」と書かれた布が縫い付けられている。
「沙樹ちゃんから聞いたんです。ここぞというときは、必ず、こんな可愛いのを身に着けるんだって」
控室で二人になったのを見計らい、クリスはウェディングドレスの前をそっと手繰り上げた。
「わ、分かったから早くおろしなさい」
「はうう……」
ドレスの前をめくりながら、耳まで真っ赤にして恥ずかしそうに顔を背けるクリス。
そんなに恥ずかしいなら、わざわざ見せてくれなくてもいいのですが……。
◆
「汝らはいついかなるときも、相手を愛し、敬い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか」
「「誓います」」
「では、誓いの口付けを」
恥ずかし気に、手を差し出すクリス。俺は大陸の古式にのっとり、片膝をついてクリスの右手の甲にキスをした。
「これより、スズキ=クリスは、セトーミ=クリスとして、新たな道を歩まれんことを」
◆
「おめでとう! セトーミさん!」
「クリスちゃんお幸せに~♪」
大陸一の歴史と格式を持つ王都の大聖堂にて、俺とクリスは結婚式を挙げた。ここは、かつてガスパウロの妹が式を上げた場所でもある。
招待したのは、メスカルやロゼ、ガイル、ラビアンといったギルドの関係者、ガスパウロに侯爵さらには国王以下、王侯貴族たち。もちろん『洞窟亭』の常連の冒険者の皆さんもいる。
「シャーマン様、どうぞ」
「おめでとうございます」
「さあ、ぐいっと空けてください」
「おお。さすがは伝説のシャーマン様、飲みっぷりも男前ですな」
そして俺の杯だけ何故かいつかと同じ三角錐。まさかクリスを誰かに譲るわけにいかない俺は、散々飲まされるハメになってしまった。
「あれ?」
いい気分で酔っぱらっていたのだが、途中からバックヤードが何だか慌ただしくなっていることに気付いた。
俺は新郎として、自分の席に大人しく座っていれば事足りると思っていたのだが、どうも雲行きが怪しい。
「さあ、セトーミさん、こちらへどうぞ」
メスカルに呼ばれるまま席を立って舞台のそでに移動したのだが……。
「ちょっと待ってよ、なんで今日もなんだ!」
「だって、セトーミさんといえば、コレしかないでしょうよ」
「……」
そこには、見事な厨房とうどんの材料が一式そろえられていたのだった。




