第5話 シャーマン様の魔道具なのですね!
「やはり、シャーマン様の魔道具なのですね!」
「ま、まあ一応俺が買ったんだけどね」
「こんな魔道具をお持ちだなんて、さすがシャーマン様です!」
クリスはそう言うと、興奮気味に目を輝かせた。
そう言えは説明を最後まで読んでなかったことを思い出し、引き戸の画面に現れた【配送ボックス】をタップしてみた。
≪配送ボックスの場所を決定します。指定した場所に触れてください≫
どうやらこの配送ボックスは、任意の場所に作れるようだ。俺は厨房の棚を片付けて配送ボックスにすることにした。
「そういや、クリスからもらった魔石を配送ボックスに入れてみでもいいか?」
「はい、もちろんです」
俺は厨房の宅配ボックスを開けると、クリスから貰った魔石を入れてみた。
「カチッ」と音がした後、再び扉を開くと魔石が三つとも無くなっている。
ステータスを確認すると、レベルが2に上がっていた。そして……。
≪レベル10で【食材発注】が可能となります≫
≪ダンジョンで獲れたモノ以外は、【所持金】となります≫
要は、この所持金を使って食材を注文できるということか。
俺は試しに財布から一万円札を取り出したが、やっぱり不安になって千円札を入れてみた。すると「カチッ」と音がして、もう一度扉を開けるとお札は消えていた。
【所持金】は0から1,000ギルになっている。どうやら1ギルは1円らしい。
その後、中古DVDを処分して、所持金は10,000ギルを越えた。
俺の部屋や事務所で換金できそうなものを持ってこようかとも思ったのだが……。
……いや待てよ。
この異世界では、何でもないようなモノでも価値があったりするかも知れない。
ならば、むやみに配送ボックスに入れない方がいい気がする。
後で、必要になるかもしれないからとっておこう。
「シャーマン様のお力をこんな近くで見れるなんて感動です!」
クリスはそんな俺の様子を目を輝かせて見ている。
俺としては、こそばゆいような気分だが、何よりクリスとの距離が近い。
ほのかにいい匂いがするのだが……。
“ぐ~っ!”
その時、何かが小さく鳴った。
「あ、い、いやこれは……」
「え? 何も聞こえなかったけど」
「はうぅ…………」
しまった。
あたふたしていらんことまで言ってしまった。これじゃ聞こえたと言っているみたいなもんだ。
よくよく考えれば、クリスのお腹は空っぽのはず。気付いてやれなくて悪いことをした。
俺は、お詫びも込めて今度は『さぬき製麺』のうどんを振る舞うことにした。
「クリス、嫌いなものあるか?」
「いえ、私は何でもいただきます」
俺はうどん玉を茹でると丼に盛った。麺と薬味は一応そろっている。
青ネギと天かすを乗せ、上から専用の出汁を回しかける。最後に丼の縁に、しょうがを添えて完成だ。
「うわあ。いい匂いです。それになんだかとってもきれいです」
「今度はお腹を壊すことなんかないから、安心して食べてくれ」
クリスは両手を小さく叩くと、箸に手を伸ばした。
どうやら、本場の食べ方で食べたいらしい。
ぎこちないながら、なんとか麺を一本つまむと、ちゅるっと口に入れた。
「う~ん。美味しい。こんなパスタ初めてです。なめらかなのに歯ごたえがあって……。とにかくとっても美味しいです!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。薬味はどうかな。……あ、こっちが天かすで、この青い野菜がネギだからね」
「テンカスはうどんと一緒に食べるとサクサクで美味しいです。ネギは少し辛味がありますが、一緒に食べるとさっぱりしていいですね」
「しょうがはどう?」
「シンジャーですね。いいアクセントになると思います」
この世界には天かすは無いようだが、ネギやしょうがは馴染みのある食材だそうだ。
「ずずずーっ……それにしても、ぶっかけうどんって美味しすぎまふ!」
「そんなに喜んでもらえて良かったよ」
「はい! ……うっ!」
「水も遠慮せず飲んでね」
俺は、あわてて水をすすめたのだが、クリスは目の前に差し出されたグラスを見て目を丸くしていた。
「こ、この水には氷まで入っているのですが!」
どうやらこの世界で氷はかなり珍しいらしい。高級レストランでも氷を扱うことはほとんどなく、真冬以外で氷を口にできるのは王族など限られた一部の者だけだという。
「じゃあこれはどう? 無理しなくていいけど、ほんの少しなら大丈夫かな?」
俺はクリスにおそるおそる七味をすすめてみたのだった。




