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さぬき製麺丸亀店、異世界ダンジョンで営業中です  作者: 七生(なお)。


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第47話 約束の口付けと、帰還の扉

クリスに対し、俺の気持ちを伝えてからずいぶん経つ。

にもかかわらず、レベルが100になった後のことは、俺たちの中で結論が出ないままでいる。


「私は、セトーミ様と沙樹ちゃんが元の世界に帰られるのがいいと思います」

「でも、それじゃ私とお兄ちゃんはここに帰ってこれないよ」

「俺は沙樹が片道切符を2枚持って元の世界に戻るのがいいと思う」

「私だけ元の世界に戻ってホントにいいの?」

「クリスを一人にさせたくないんだ」

「セトーミ様は、元の世界で店長をなさりたかったのではないですか。それを私なんかのために……」

「クリス、俺は約束したよな。俺が帰るときは一緒に連れて帰るって」

「ですがあれは……」

「もう、わかった。私がここに残るよ。それしかないよね」

「いや、それはダメだ」

「ではやはり、セトーミ様と沙樹ちゃんが元の世界に帰るしか……」


……と、話し合うたびいつも堂々巡りになってしまうのだ。


とにかく、レベルはまだ99。

100になってから結論を出そうということになったのだが、いくら魔石を入れても100にならない。どうやらかなりのポイントが必要のようだ。


そんな中、とんでもない魔石が手に入った。



「セトーミさん、こいつを見てくれ」

「これは、もしや……」


目の前に出された魔石は、ガスパウロが打ち取ったアースドラゴンの魔石とよく似ている。鈍い光沢を放つ姿はそっくりだが、大きさは二回りほども大きい。

スキルで【査定】してみると、途方もない値段が出た。


「ゴールドドラゴンの魔石だ。値段は一千万ギルでどうだ」

「え? 俺の【査定】スキルでは一億ギルなんですが……。」

「ラビアンがこれを一千万でウチに卸してくれたんだ。セトーミさんに売るという約束でな」

「それはまたなぜ?」

「あいつは異世界の素材が欲しいそうだ。自分で交渉するように言ったんだが、セトーミさんには、近寄れないってさ」

「それはまた、どうして」

「そんなの、わかろだろうが」

「……はい」


「今度、落ち着いたら直接話すってさ。ラビアンはああ見えて一流の占い師でもあるんだ。来月にはこっちに寄れるようになるって言ってたぜ」

「それは、どういうことでしょうか……」

「さあ。俺にもさっぱり分からないんだが、とにかくこの魔石に関しちゃいい話だろ?」

「はい。何だか信じられませんが、ありがたく買い取らせていただきます」

「それじゃ、またな」


 メスカルを見送ると、すぐにクリスと沙樹がやってきた。


「これは高位のドラゴンの魔石ではありませんか? こんなに高価なもの、買うにはまだ資金が足りないと思うのですが……」

「訳あって一千万ギルで譲ってもらったんだ。おそらくこれでレベルは上限まで上がるだろう。

「お兄ちゃんどうするの? 入れてみる?」

「うん」


俺は、頷くと、配送ボックスにひときわ大きな魔石を入れた。


≪レベル100に到達しました。現在の世界との同接を解除し、元の世界と再接続しますか?≫





「セトーミ様、実は……」


その夜、俺とクリスは部屋で向かい合っていた。

【2-B 瀬戸海】と中学時代の俺の名前が大きくプリントされた体操服姿のクリスが、真剣な顔で俺を見つめている。


「クリス……その話、本当なのか」

「はい。詳しくは言えませんが、もしセトーミ様のお気持ちが私と同じなら大丈夫です」

「……分かった」

「セトーミ様は、こんな説明しかできない私を本当に信じて頂けるのですか」

「当たり前だろ」

「ありがとうございます……あっ」


俺は、潤んだクリスの瞳に視線を逸らさずそっと抱きしめた。

体操服越しに伝わる彼女の鼓動が、俺の胸に重なる。

初めてのキスは、ほんの少し塩の味がした。



 ◆



「何で行き先が、お兄ちゃんの店の前なのよ。まあ、バイト先までかえって近いからありがたいけど」


 近くて便利なら逆に感謝して欲しいものだが、いままで散々巻き込んできた妹に悪いと思い、ご機嫌を取ることにした。


「向こうで何かおごるから許してくれよ」

「う~ん。それじゃ『ガトーキングダム』のスイーツ食べ放題で手を打つ」

「まさか俺も付き合うのか」

「当たり前でしょ。巻き込まれた私がどれだけ迷惑したと思ってんのよ! 久しぶりに『せとれもん』を食べないと、私のおなかはおさまらないの!」

「女の子ばっかりで、肩身が狭いんじゃないか?」

「何言ってるのよ、最近はスイーツ男子も多いんだからね!」


 明るく振る舞う沙樹は、ひょっとして湿っぽくなりそうな雰囲気に気を遣っているのかも知れない。そして俺と沙樹のやり取りが始まると、一歩下がって俺たちのやり取りを見守ってくれるクリス。本当に俺には過ぎた妹と恋人である。


「クリス、一緒に連れていけなくてゴメンな」

「私なら大丈夫ですので、お気になさらないでください。そんなことより、どうかお気をつけて」

「クリスちゃん。私には詳しい事情は分からないけど……とにかく元気でね。キュイもキューも後のことはお願いね」

「はい。沙樹ちゃんもお元気で」

「キュイ~」

「キュー」


 涙を拭う沙樹。クリスも目に涙を浮かべている。キュイとキューも何となく別れの雰囲気を察しているのか、さっきからしきりと悲し気に鳴いている。


「クリスのこと、信じてるから」

「セトーミ様、私もです」

「じゃあ、行ってくる」

「お気を付けて」


 こうして、俺と沙樹は、店の引き戸から、元の世界に戻ったのだった。

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