第46話 片道切符
「セトーミ様、これで全部です」
「よし、入れてみるぞ」
「もったいぶらずに、早くしてよね!」
「キュイ~♪」
今まで集めてきた魔石を全部集めると、小山のようになった。これだけあればかなりのレベルUPが期待できそうだ。
「じゃ、入れるぞ」
――――――
「「「おおお!」」」
何と、レベルは一挙に90。レベル60、70、80、90と4つのスキルか何かがもらえるのではと、期待していたのだが……。
【ハズレ】【ハズレ】【ハズレ】【ハズレ】。
最後の【ハズレ】が出た瞬間、全ての【ハズレ】が、銀色になった。
≪【ハズレ】スキルは5つ集めると、以下のスキル1つと交換できます≫
いくつかの中からひとつ選べるようだ。まずは……。
≪【スキルの缶詰】≫
「「おい!」」
ポカンとするクリスをよそに、俺と沙樹は思わずツッコミを入れてしまった。
「セトーミ様、まだあるみたいですよ」
≪【無限廻廊通行券:片道】×2≫
「無限廻廊?」
≪無限廻廊:現在の世界と元の世界との結合部のことです。通過には通行券が必要です≫
「よかったですね。セトーミ様も、沙樹ちゃんもこれで元の世界にお戻りになることができますね」
「クリス……」
「いつか、セトーミ様には、わがまま言ったこともありましたが、もういいんです」
「そんな、クリスちゃん……」
「お店は、私とキュイたちで守っていきますから、大丈夫です」
クリスはそう言うと、涙をそっと拭いて、無理やり笑顔をつくったのだった。
◆
「おやすみ、クリス」
「セトーミ様、おやすみなさい」
いつもの様に二人の間をカーテンで仕切り、俺とクリスは寝床に着いた。
ところが、その夜更け。
部屋の真ん中を仕切っていたカーテンが、静かに揺れた。
「セトーミ様のお気持ちをお聞かせください」
クリスは俺の前で背筋を伸ばして正座していた。
暗闇の中、真っ赤に濡れた瞳が、真っすぐに俺を見据えている。
「覚悟はできています」
「……わかった。クリスの気持ちに応えるよ」
俺はクリスの決意を正面から受け止め、自分の思いを正直に告げたのだった。
◆
翌朝―――。
「ふふん~ふふ~ん♪」
鼻唄交じりに朝食の準備をするクリス。今日は『島たまご』を使ってフレンチトーストに挑戦するらしい。俺も手伝おうと棚に手を伸ばしたとき、クリスの手とぶつかってしまった。
「「あっ!」」
お互い目が合った後、下を向いた俺は慌てて視線を横に逸らす。
「はは~ん」
そんな俺たちを見て沙樹は意味ありげな顔をした。
「二人とも、昨日はお楽しみでしたね♡」
「い、いや、これは違うぞ!」
「はうう……」
「アヤシイなあ~」
「それより朝ごはん食べて開店するぞ!」
「ちょっと、話逸らしてない?!」
「さ、クリス早く食べよう」
「はい」
「もう!」
◆
「ちょっとお兄ちゃん!」
営業が終わり、のれんをおろそうと外に出ると、沙樹が詰め寄って来た。
「さっきクリスちゃんから聞いたんだけど、お兄ちゃん昨日も何もしなかったってどういうことよ! いい加減はっきりしてよね」
「っていうか、何で俺とクリスの問題でお前に文句言われなきゃならないんだ。俺だってなあ……」
「……え?! それじゃ昨日、ついに告白したんだ!」
「こ、告白というか……」
「ふふふ~ん♪」
「おい、沙樹」
「さあ、明日も頑張ろうーっと!」
「おーい!」
「クリスちゃん、一緒にお風呂入ろう」
沙樹は俺を無視してひとり頷くと、鼻歌を歌いながら風呂場に入っていったのだった。




