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さぬき製麺丸亀店、異世界ダンジョンで営業中‼  作者: 七生(なお)。


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第3話 ドアを開けたらいきなり美少女

「しかし、本当にシャーマン様は無欲なお方ですね」

「いや、俺はいたって普通ですよ」

「と、言われますと、普通にシャーマンをされておられるのですか?」

「だから、俺は、シャーマンじゃなくて普通のサラリーマンなの!」

「要するに、普通のシャーマン様ということなのですね!」


 いくら俺が「サ・ラ・リー・マ・ン」と言ってもこのおっさんには「シ・ャー・ア・マ・ン」と聞こえるらしい。これがスキル【言語理解】の限界なのだろうか。

 俺もいい加減面倒くさくなったので、そのままにしておくことにした。


「私はクリスというしがないドワーフです。もしよろしければシャーマン様のお名前も教えて頂きたいのですが……」


 このクリスというドワーフのおっさん、どうも俺のことを尊敬のまなざしで見てくれているみたいだ。もじもじしてるし、少し気持ち悪い。

 ほほを赤らめながら上目づかいでこちらを見るいかつい髭面のおっさんなんて、正直勘弁して欲しいのだが。


「自分は瀬戸海といいます。今朝いきなり自分の店がここと繋がってしまったのです。とにかく、この世界やダンジョンについて色々と教えて頂けるとありがたいのですが」

「セトーミ様、ここは王都の近くにある大陸最大のダンジョン『潮の廻廊』の十階層。しかも最奥ですよ」

「『潮の廻廊』ですか……。と、いうことは、海の近くですか?」

「いいえ、大陸のほぼ中心部ですよ。この一帯には岩塩の鉱脈がありまして、古のドワーフが掘った跡がいつしかダンジョンになったらしいです」


 どうやら引き戸に表れた情報は本当らしい。クリスはここではぐれた仲間を探していたそうだ。


「実はそのことで、折り入ってお願いがありまして……」


 仲間を探すのをあきらめてダンジョンの入り口まで帰りたいのだが、自分一人では帰れる自信がない。そこで俺についてきて欲しいという。


「まことに厚かましい頼みですが、聞き入れてはいただけないでしょうか」

「俺は見てのとおり、武器も防具も持っていません。おまけにこのダンジョンのことを何も知りませんし。とても助けになんてなれませんよ」

「お言葉ですが、ダンジョンの10階層におられるシャーマン様が無力な訳はないかと……」

「心底無力です」

「え、そ、そんな、まさか……」


 この後、俺はクリスに対して自分がいかに弱いかということを噛んで含めるように説明した。


「…………という訳です。それより、このダンジョンにはどんな魔物がいるのですか? さっきヘビみたいな魔物に襲われかけたのですが……」

「それは、おそらく『トビアナコンダ』ですね。ギルドの資料では、本来下層にいるはずの魔物なのですが、10階層は、上層と下層の魔物が行き交っているのです」


 クリスの話によると、どうやらここはかなりヤバい場所らしい。


「実は私もこの10階層で、アースドラゴンに襲われました。まあ、シャーマン様からすればドラゴンごとき大したことは無いでしょうが」

「大したことあるわ! 俺は弱いって説明したばかりだろうが!」


 俺はクリスからこのダンジョンについてのレクチャーを受けていたのだが……。



「……うっ……あっ…あ」


 しばらくしてクリスが身をよじり出した。


「と、ところで、こちらにトイレはありますか?」 

「えっ?」

「よろしければ、貸しいただきたいのですが……うっ……あっ…はうう~」


 急に苦しそうに下腹を抑えるクリス。何だか顔色も悪そうだ。額に脂汗を滲ませている。

 一刻を争う事態かもしれない。


「そ、その……どうか私にトイレを借しては、い、いただけない……でしょうか」

「おい、大丈夫か?!」

「は、はい……い、いえ、痛たたたた……」

「今までダンジョンの中ではどうしていたんだ?」

「物陰で素早く済ませていました」


 正直、「じゃあ外でしておいでよ」と言いたいところだが、目を潤ませながら懇願するおっさんがあまりにも不憫すぎて、俺は喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。


 まさか、あの激辛カップ麺のせいなのだろうか?



 ―――何だか、とっても悪いことをした気がしてきた。



「ど、どうぞ、こちらです」


 正直、そこらでへんでも平気で済ましちゃいそうに見えるおっさんなのだが、俺は良心の呵責かしゃくに耐えかねて、クリスに店のトイレを使わせることにした。


「さあ、早く!」

「この御恩は一生忘れません!」

「そんな大げさな。用が済んだらこっちのトイレットペーパーを使ってください。最後は、このレバーを動かすと水が流れますから」

「わ、わかりましたっ!」


 クリスは高速でうなづくや、体に似合わぬ細身の剣を外すと、急いで個室ドアを閉めた。何とか間に合ったようだ。



 ホッとした俺は、扉に現れたステータスを確認することにした。試しに【レベル】をタップしてみると説明画面に切り替わった。


≪ダンジョンで獲れたものを【配送ボックス】に入れるとポイントに応じてレベルが上がります。レベル100で元の世界と同接します≫


 ちょっと待て! 

 元に戻るにはレベル上げが必要なのかよ!

 武器も装備もチート能力もないのにどうすんだ!


 ところで【配送ボックス】って、どこにあるんだろう。まさか店の外じゃないよな……。

 その時、トイレから叫び声が聞こえてきた。



「ぎゃーっ!」


「おい! どうしたんだ?!」

「…………」

「お、おい! クリス! 大丈夫か?!」

「…………」


 “ドンドンドン!”


 俺は外からトイレのドアをノックするが、クリスは中々ドアを開けてくれない。


「おい、クリス、どうしたんだ! 開けてくれ!」

「嫌あああぁぁぁ……」


 中からはこの世の終わりの様な声がする。

 正直、嫌な予感しかしない。俺の背に冷たい汗が流れた。



 しばらくして、ようやくトイレのドアがゆっくりと開いたのだが……。


「はうう……」


 そこには、下半身をびしょ濡れにした涙目の北欧系美少女がいたのだった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

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