第20話 新スキルはSSR
やってしまった。
仕事中に勝手に自分の部屋に行ってしまってからというもの、私の頭の中は、セトーミ様に、どう申し開きをしようかという思いで一杯だった。
セトーミ様は、そんな私を叱ることもされない。
自分からちゃんと謝ろう。そう思いながらずるずると来てしまって……。
そんなとき、お客様がセトーミ様に色目を使っていたのを見て、思わず、かーっとなって
お客様を店から追い出すようなことを言ってしまった。
しかも、私ったら変なことを口走ってたんじゃ……。
今思い返せば、は、恥ずかしすぎる~。
「あの、クリスちょっといいか」
「ひゃい! セトーミ様、すいません。仕事を投げ出してしまったあげく、今回はお客様に対してあんな……」
「いや、いいって。この前は、店内も空いてたし、さっきは俺も頭がクラクラしてたしな」
「それは大変です! ひょっとしてあの女の人に魅了≪チャーム≫をかけられたのかも知れません」
「水を飲んだら元通りになったから大丈夫だよ。それよりさっきの魔石、どうもスライムじゃない気がするんだけど」
「少しお待ちください。あの……色も大きさも違いますが、これと似ている気がするのですが」
クリスはそう言うと、レジカウンターに飾っていたケルベロスの魔石を持ってきた。
クリスの見立てでは、ラビアンが持ってきた魔石はケルベロスの幼体かも知れないらしい。
俺たちはその日の営業を終えると、早速例の魔石を【配送ボックス】に入れてみた。するとレベルは21に。
≪レベル20達成おめでとうございます。新たなスキルを付与します≫
そういや、俺のスキルは今の所【言語理解】だけだ。
意図せず異世界ダンジョンに繋げられた被害者としては、せめていいスキルくらい欲しいところ。画面には、なにやら見慣れない文字が浮かんでいる。
≪おめでとうございます。SSRのスキルが付与されました≫
期待に胸を膨らませ、ステータス画面で確認すると、確かに【スキル】が増えていたのだが……。【挨拶】?
まさか「SSR」って、マトリョーシカで有名な国のことじゃないよな。
微妙な感じを通り越して、なんだか馬鹿にされているような気がするのだが。
≪挨拶がもたらす効果を、最大限まで引き上げます。これまで以上に人間関係が円滑になることでしょう。あの人の心の扉も開くかも?!≫
「円滑になることでしょう」って、占いじゃあるまいし。しかも「あの人の心の扉も開くかも?!」って……「かも」って何だ?! こっちはこの扉のおかげでとんでもない目にあってんだぞ。
どう考えても役に立たないカスなスキルにさすがのクリスも言葉を失っている。
俺は気持ちを切り替えて、夕食を作ることにした。
「クリス、俺のスキルのことはともかく、今日も一日お疲れ様」
「はい。お疲れ様です」
俺たちは、相変らず気まずい雰囲気を引きずってもそもそと食事を始めたのだが……。
「……え? そうなのか?」
「そんな、セトーミ様こそ!?」
「じ、じゃあクリスは俺のこと嫌ってたわけじゃないんだな」
「私の方こそ、てっきりセトーミ様に嫌われたとばかり」
「なんだそうか。どうやら勘違いしていたみたいだよ」
「はい、私も!」
「それより、ざるうどんは初めてだろ。薬味も好きに使っていいから」
「はい、ありがとうございます! 私、明日から新しい制服でお店に出ますね!」
まさか新スキル【挨拶】これが効いたのか……?
クリスはつけ汁を一味で真っ赤にさせながら、久しぶりに笑顔を向けてくれたのだった。




