第14話 白狼族の若① 熱っ! ウマっ! おかわり!
「いらっしゃいませ!」
「ようこそさぬき製麺へ!」
翌日以降、冒険者パーティーが毎日2~3組訪れてくれるようになった。なにやら『さぬき製麵』はダンジョンの冒険者たちの間でそこそこ話題になっているようで、メスカルたちが設置してくれた看板を見て来てくれたという。
「これが『ウドン』か。初めて食べたけど、うめえな!」
「ダンジョンで美味い料理にありつけるなんて信じられないよ~♪」
「あのメスカルが言うだけあって間違いないな」
「そういや、あいつらもうすぐB級になるらしいな」
今テーブルを囲んでいるD級冒険者の皆さんも、メスカルから話を聞いて来てくれたらしい。意外にもメスカルたちは冒険者の間ではなかなか信頼されているようだ。
ギルドのランクは最上位がA級。B級といえば、現役でもトップの冒険者だとか。
それにしても、メスカルたちがB級で大丈夫なのだろうか。アースドラゴンから逃げたり、穴にはまって泥まみれになったりしてたけど……。
「なあ、クリス。冒険者って強さで級ランクが上がるもんじゃないのか?」
「もちろん実績も必要ですが、それだけじゃないんです」
「まさか、ワイロとか?」
「いえいえ、そんなことしたら一発で永久追放ですよ。冒険者が実績だけで上がれるのは、C級までです。B級以上になるには、冒険者仲間やギルド職員たちからの推薦が必要なのです。何しろ貴族や政治家との付き合いもありますから」
そして推薦されるには、仲間内からの人気や気前の良さなどの人柄が必須だとか。どおりでメスカルたちがB級に推される訳だ。
「クリスちゃん、かけを二つにぶっかけと釜揚げひとつづつね」
「ぶっかけは、冷たいのと温かいのどちらですか?」
「温かいの頼む」
「承知しました」
「店長、注文入りました」
「はいよ!」
「支払いはスライムの魔石でもいいのか?」
「もちろんいいですよ」
クリスは接客にすっかり慣れてきたようだが、店の在庫が減ってきている。
少しでもレベルを上げようとしているのだが、現在レベルは9。
なかなか10まで届いていない。
そんな中、俺たちは文字通り大型の賓客を迎えることになった。
◆
「若様こちらです」
「一応、お気を付けくださいませ」
「お前たち、心配し過ぎだぞ」
この日、店じまいをしようかと思っていた頃、三人の冒険者が来店してくれた。
執事然とした振る舞いのシブい年配と、髪の綺麗なグラマーな女性、そしてその後には筋骨たくましい「若様」。
白いたれ耳ともふもふの尻尾。全員コバルトブルーに輝く金属があしらわれた軽甲冑を身に着けている。冒険者パーティーというより、戦場に赴く騎士団のような雰囲気をまとっている。俺としては初の異人種との遭遇だ。
「セトーミ様、白狼族です」
「白狼族?」
「どうしましょう~」
クリスによると、白狼族は大陸でも1、2を争う強さの獣人族だという。気位が高く、とにかくプライドを傷つけないような気配りが必要だそうだ。
彼らは、耳と尻尾以外は人間と変わらないが、若と呼ばれているガスパウロは、身長が2メートル以上ありそう。おびえた様子のクリスに代わり、俺が接客することにした。
「こちらは白狼族の次期頭領であられるガスパウロ様だ。食事と水の補給を頼みたい」
「さあ、若、こちらですわ」
「うむ」
「どうぞ。サービスのお冷です」
「この水は……おお、氷入りとは!」
「おいしい! 若も召し上がりくださいませ」
「ほう……店主、気に入った。我ら全員の水袋にも同じものを満たして欲しい」
「承知しました。お食事はいかがいたしましょうか」
「とにかく儂は、久しぶりに温かくて食べやすいものがいい。出来るだけ早くな」
「頼みましたぞ」
「期待してるわ~♪」
温かくて食べやすいものか。
いま提供できる商品の中では、やはりかけうどんということになる。
俺は、大鍋にうどん玉を入れると、出汁に火をつけたのだった。
◆
「若様、熱いのでお気を付けください」
「ラゴス、いつまでも子ども扱いするでない……って、熱っ!」
「もう、若様ったら(笑)」
「これ、レイナ。若様に対して失礼ですぞ」
「まあ、よいではないか。しかし、初めて食したが、これはなかなか美味じゃの」
「若様の言われる通りですな」
「温まりますわ~」
「……熱っ! ウマっ! 店主、お替りを頼む!」
「はい。少々お待ちを」
三人は五分も経たないうちに、お替りもあっという間に完食した。ウチは麺を2玉使った大盛りを一人前にしているため、すでにうどん12玉分なのだが……。
「店主、また同じものを頼む」
「はい、ただ今!」
――――――
「店主、お替りだ!」
――――――
「すいません。店のうどんがなくなりまして。小麦粉はまだあるのですが、一からうどんを打つとなると、かなり時間がかかります」
「ほう。シャーマンである店主殿をもってしてもすぐには無理か。なら致し方ないの」
結局、若様たちは三人で50玉分のうどんをたいらげた。
……これは、明日から小麦粉の仕入れ量を考え直した方が良さそうだ。
【瀬戸内グルメ:かけうどん】




