3.子猫いませんか?
――わたくしは家で日向ぼっこをしておりましたので、子猫探しに出かけたヘーゼルが何を考えていたのかまではわかりません。ですが、夕餉のあと、ご主人とヘーゼルから聞くことになりました。
「ところで先生、子猫はどんな子がいいのでしょう?」
村へ出かける前に、ご主人から「外では”サンドラ”ではなく”先生”と呼びなさい」と注意されていたヘーゼル。家の外ではそういう”決まり”なのです。
「そうね、出来れば伝統的には黒猫がいいかしら。話をよく聞いてくれる、優しい子が多いとされてるから。ヘーゼルは、どんな子と一緒になりたい?」
「まだ、よくわかりません……」
「ふふふ。では先を急ぎましょう。こればっかりは、ヘーゼル、あなたの直感が頼りよ。だから、実際に子猫と会ってみないとね」
「はい……」
ちょっと浮かれていたヘーゼルに、ふいに不安が押し寄せてきました。
サンドラと手袋が育った家には、たくさんの猫が住んでいたと、ヘーゼルは手袋から聞いています。サンドラとは、幼い頃から一緒に育った仲なのだと。
けれど、今のサンドラの家には猫は住んでいません(手袋からは「自分は使い魔なので猫扱いするな」と言っていました)。だから、どんな”猫”がいいのか、ヘーゼルにはまったく分かりません。
(私と一緒にいてくれる、私の使い魔になってくれる子猫……)
思い浮かべようとしても、まったく見当がつかない……。そんなもやもやした気持ちのまま、村へと着いてしまいました。
村は、周りを木の柵と簡素な石の塀に囲まれており、その中にぽつぽつと家が建ち、畑と牧場が広がっていました。畑には黄金色の麦の波のように揺れ、収穫を待つばかりの様子です。
村に着くと、ご主人は村の入り口近くの家へ向かいました。その家の前では、一人の女性が椅子に腰かけ、休んでいました。
「こんにちは、ナタリー。今日もいいお天気ですね。いい機会だから紹介しておくわ。先日弟子入りしたヘーゼルよ。ヘーゼル、こちらはいつもお世話になっているナタリーさん。ご挨拶なさい」
「先生に弟子入りしたヘーゼルと申します。よろしくお願いします」
「ヘーゼルちゃんね。ナタリーでいいわよ。サンドラにはいつもお世話になっていて、こちらからは牛乳やチーズをお裾分けしているの。よろしくね。」
ナタリーさんは、ちょうど一仕事終えて戻ってきたところだったようです。少し日に焼けた、朗らかで柔らかな雰囲気のお姉さんでした。
「それでサンドラ、今日はどんな用事なの?」
「ええちょっと、ネズミ捕りのための子猫が欲しいのだけれど……。確か少し前に、ナタリーの家で子猫が生まれたって聞いたと思ったのよ」
「あー、あの子たちの事ね。ちょうど乳離れしたところよ。庭のほうにいるけど。見てみる?」
「それは良いわね! ぜひお願いするわ!」
とんとん拍子に話がまとまり、ついに待望の子猫たちとの対面です。ヘーゼルは緊張でかちこちになりながら、ナタリーさんとサンドラのあとに続きました……。




