5.ようこそ我が家へ
「おかえりなさいませ、ご主人、ヘーゼル。お疲れでしょう」
「ただいま、手袋。お留守番、ありがとうね」
「ただいま、手袋先輩」
日が落ちる前、ご主人たちが村から戻ってまいりました。わたくしは玄関で出迎え、労いの言葉をかけました。
子猫の入った籠をわたくしに預け、ご主人とヘーゼルは埃を払い、外出着から部屋着に着替えリビングへ集まりました。
ナタリー嬢に用意して頂いた籠の中で、子猫はすやすやと眠っておりました。ヘーゼル曰く、村を出た直後は、「みぃみぃ」とぐずっていたそうですが、泣き疲れて眠ってしまったようです。
ヘーゼルも初めての村への訪問で緊張していたのでしょう。どうやら疲れて眠たそうです。ご主人もそれを察して、やさしく声をかけました。
「さてと、夕ごはんまでまだ時間があるわ。ヘーゼル、少し休みなさい」
「はい、少しだけお休みさせていただきます」
ふらふらと自室へ向かうヘーゼルに付き添い、わたくしはベッドまで案内しました。彼女がすぅっと眠りについたのを確認してから、リビングへと戻りました。
「ご主人、契約の儀式の準備はすべて調えてございます」
「さすが手袋、ありがとうね。お疲れ様でした。さて、いまのうちに迷子用のシュシュを子猫につけておきましょうね」
ご主人は籠をそっと開け、水色のシュシュを子猫につけました。これでこの家周辺の結界の外へ出ることは出来なくなります。迷子になっても隠れたとしても、すぐ見つけられるでしょう。これは魔法のかかった特別なシュシュなのです。
子猫はまだ眠そうにまぶたをしばしばさせていましたが、お腹が空いたようで、「みぃみぃ」と鳴いてご飯を要求してきました。ご主人は、ナタリー嬢が籠と一緒に用意してくださった子猫用のごはんを小皿に取り分け、籠の中に置きました。子猫は勢いよく食べ始めます。
「とても良い食べっぷりね。若い子はこうでなくっちゃ」
「ところでご主人。この子猫は白猫の上にどうやらオスのようですが、使い魔としての教育を、わたくしに出来るか心配です」
「大丈夫よ、手袋。たとえやんちゃさんであっても、ヘーゼルが自ら選んだ子猫ですもの。きっと、何か感じるものがあったのでしょう。まあ、使い魔としての自覚と知識は、ヘーゼルと一緒に育っていけば、自然と身についていくはずよ。ヘーゼルが起きたら、さっそく契約の儀式を始めましょう」
そうおっしゃると、ご主人は夕餉の支度を始めました。わたくしもお手伝いいたします。あとはヘーゼルを起こしてくれば、子猫を使い魔にする儀式は、いつでも始められます。




