第19話(下) 作戦会議 - 潜入への序曲(続き)
力強い仲間が加わる回です(^^)
リリカはホログラフィックディスプレイを操作しながら、クラスタータワーの構造図を回転させていた。
「まず、北東セクターから侵入し、セキュリティノードを一つずつ無効化していく。その後、メインサーバールームへ到達すれば…」
突然、ディスプレイの映像が乱れ、青白いノイズが画面全体に広がった。
「侵入者か?」リカルドが身がまえる。
「いや、違う」リリカは素早くキーボードを叩き、診断コマンドを実行する。
「これは…防御システムじゃない。むしろ…助けを求めているような…」
ホログラフィック空間の中心に、データの断片が集まり始めた。まるで意思を持つかのように、それらは渦を巻きながら一つの形を形成していく。やがて、人型に近い半透明の結晶質の存在が現れた。
「バッファオーバーフローの痕跡がある」
アキトが画面を分析する。
「上部システムからの強制リダイレクト…いや、これはシステム内部からの自発的なアクセス試行だ!」
「ピピカチャ!シグナルヲ カンチシマス!」ピットが興奮して飛び回る。
「私の『ゴーストダイブ』で接続を安定させる」
リリカが端末に手を当てると、彼女の指先から微かな光の筋が伸び、ホログラムと融合していく。
「アキト、『バグ予測』で異常を検知できる?」
「やってみます」
アキトは目を閉じ、『バグ予測』と『コード追跡』のスキルを同時に発動させた。
彼の脳内に、無数のコードラインが流れ込む。その中に紛れ込んだ異常なパターン—デファイブ(DeFibe)プロトコルのエラーコードと、その下に隠された本来のシステム呼び出しシーケンス。
「これは制御コードの強制上書き…いわゆるルートキット型の改ざんだ。本来のシステムコールの上に、悪意のあるコードが被せられている」
アキトは目を開けると、キーボードを取り出した。スキルが導くまま、彼の指が踊るように動く。
「システムの本来の呼び出しパスを復元する。まず、偽のセキュリティレイヤーをバイパス…次に、権限エスカレーションを実行…そして…」
ホログラム内の青い存在が、まるで苦しんでいるかのように波打ち始めた。
「リリス、ここで『ポリモーフィズム』を!」リリカが叫ぶ。
リリスが前に出て、両手をホログラムに向けると、彼女の指先から淡い光のパターンが放射状に広がった。
「私のスキルで、システムに正しい識別子を与える。これで、本来の機能を呼び出せるはず…」
三人の力が融合し、ホログラム内の存在を包み込む。青い光と淡いノイズの中で、存在はゆっくりとその形を変え始めた。
【チームスキル『統合デバッグ』が初めて発動しました!ボーナスポイントを獲得しました!】
(なんだ?ボーナスって、まあいいや落ち着いてから確認しよう)
「これは…強制システムリカバリーか?」リカルドが驚いた声を上げる。
ホログラムの存在から、黒いコードの断片が剥がれ落ち、その下から澄んだ青い輝きが現れ始めた。まるで古い皮を脱ぎ捨てるように、存在は徐々に本来の姿を取り戻していく。
「ハイパーバイザー権限でフルリセット…リモートダンプを実行…そして…カーネルトレース完了!」
アキトの最後のコマンドと共に、ホログラムの存在から、最後の黒いコード片が剥がれ落ちた。そこに現れたのは、美しく透明な結晶質の体を持つ存在だった。
青く輝く結晶体が、まるで呼吸をするかのようにゆっくりと輝きを増していく。
「イオ(I/O)……」結晶体が、柔らかな電子音で自らの名を告げる。
「ああ、そうだった」リカルドが懐かしむように言う。
「システムガーディアンには、それぞれ Input/Output にちなんだ名前が与えられていた。イオは、その中でも最も古い世代のガーディアンだ。イオ、我々を覚えているか?」
イオは、青く輝く結晶質の体を持ち、まるで液晶のように透明感のある外見をしている。その中心には、渦を巻くようなエネルギーの流れが見える。言葉は電子音だが温かみがあり、不思議と感情が伝わってくる。
「モウシワケナイ…。私は...混乱していた」
イオの声には、申し訳なさそうな響きがある。
「本来の機能をゆがめられ...破壊的なコードイーターとして行動していた…清浄なコードの存在を感じ、助けをモトメタ。ヒサシブリニ…ココチヨイ、コードノナガレ…。」
「ワタシの本来の役割は、システムの整合性を保ち、不要なデータを適切に処理スルこと」
「そして、ワタシの最も重要な役割は、Javaシティの『遺産』を守護スルこと」
「遺産?」
「ああ」リカルドが説明を加える。
「イオたちガーディアンは、JavaシティのCore機能を守るために作られた存在だ。彼らは都市の歴史と共に在り続け、世代を超えて知識を継承してきた」
「でも、グローバル・ソリューションズは」リリカが続ける。
「その能力を歪め、破壊的な存在に変えてしまった。本来のガーディアンは、イオのように、優しさと叡智を併せ持つ存在なのよ」
「ピピカチャ!イオ シンライデキル!」ピットが親しげにイオの周りを飛び回る。
イオは、その様子を穏やかに見守りながら言う。
「ワタシには、クラスタータワーの完全な地図データがある。そして、タワー内部に残された他のガーディアンたちの情報もテイキョウスルコトガデキル」
「他のガーディアンも!?」
「カレラも私と同じように、コードイーターに変えられてしまっている。クルシイオモイガツタワッテクル…、タワー内部で、システムの監視をシイラレテイル」
アキトは、自分たちが使った方法を思い出した。
「今回のように、僕たちのスキルを組み合わせれば、他のガーディアンも救えるかもしれない…」
「なら、イオ」アキトが決意を込めて言う。
「手伝ってくれるか?」
イオの結晶体が、わずかに明るく輝く。「ハイ、ワタシに デキルことは、全てキョウリョクシマス」
【イオが仲間になりました!】
【システムガーディアンの知識が共有されました】
【タワー内部の詳細マップが利用可能になりました】
「これで、メモリレイヤーとカーネル層の両方からの攻略が可能になったな」
リカルドが安堵の表情を浮かべる。
「イオのルート権限があれば、コードイーターの動きを予測し、回避することもできるだろう」
「ちょっと腹が空かないか?」リカルドが突然話題を変えた。
「作業しながらつまめるものを用意してある」
そう言って彼は、カウンターの下から小さな箱を取り出した。六角形の特殊なラッピングに包まれた何かがぎっしりと詰められている。
「『バイト・サンドイッチ』だ。朝食用に準備しておいたものだ」
リカルドが包みを開くと、鮮やかな色合いのサンドイッチが並んでいる。六角形のパンの間に、紫がかった肉と明るい緑の葉物が挟まれている。
「このラッピングは保存機能付きでな、作りたての状態をキープしてくれる。特殊な『タイムスタンプ・プリザーバー』技術を使ってる」
アキトが一つ手に取ると、確かに作りたてのような感触だ。一口かじると、スパイシーでありながら甘みのある味が口いっぱいに広がった。
「美味い!これは何の肉ですか?」
「『ハッシュ・ミート』だ。この辺りでとれる特産肉で、データ処理能力を高める効果があるとされている。
あと、この緑の葉は『ビット・レタス』といって、記憶力を向上させる野菜だ」
リリスとリリカもサンドイッチを手に取り、満足そうに頬張る。
イオはサンドイッチを直接食べることはできないが、その代わりに、食べ物から放たれるエネルギーを感知しているようだった。
「オイシソウ…。コノ エネルギーパターン、キオクニアル…。」
アキトは噛みながら、不思議な効果を感じ始めた。頭の中が少しずつクリアになり、タワーの構造図が以前より鮮明に把握できるようになる。
【『バイト・サンドイッチ』の効果で、一時的に記憶力とデータ処理能力が向上しました!】
「さて」リカルドが言う。
「これで、私たちの作戦の精度が格段に上がったな。イオの知識があれば、タワー内部の防衛システムも突破できる」
「そうね」リリカが頷く。
「では、作戦の詳細を詰めましょう。夜明けまでに、全ての準備を整える必要があるわ」
イオを加えた彼らの作戦会議は、新たな段階へと進んでいく。クラスタータワー攻略の鍵を握るのは、このシステムガーディアンの存在かもしれない――。
アキトはサンドイッチを食べながら考えた。
(なんだか凄いことになってきたな…でも、チームの力があれば、きっと乗り越えられる。イオという力も加わったことだし…)
【スキル『チームワーク』がLv.3→Lv.4にアップしました!】
【新スキル『ガーディアン交信』を習得しました!】
【チームスキル『統合デバッグ』がLv.1→Lv.2にアップしました!】
チームワークのスキルが上がってきましたね。
これをうまく使えば、もっと強くなれそうですね。




