第18話(下)「バグと肴亭での密談 - 真実への糸口」(続き)
謎が次々と明らかになっていきます(^^)
スクリーンに表示された情報に、一同は息を呑んだ。
「これは……」リリカの声が震える。
「Javaシティのシステム構造と……」
そこには、カイエンが密かに収集した情報が表示されていた。
Javaシティのセキュリティシステムの脆弱性と、グローバル・ソリューションズが加えた不正な変更の記録。そして、最も重要な情報として、「世界再構築プロトコル」という言葉が何度か登場していた。
「世界再構築……プロトコル?」アキトが困惑した表情を浮かべる。
(なんだよ、この中2病的なプロトコル…再構築なんていらないだろう!)
リカルドは「デバッガーズ・モヒート」を新たに調合しながら、静かに説明を始めた。
「ええとだな…、このプログラミング世界が作られた当初、いくつかの実験的な機能が組み込まれていたと言われている。その中には、通常のプログラムでは到底不可能な、強力すぎる機能も含まれていたらしい。」
「カイエンは、そのような危険な遺物がレガシーコードとして残されていると気づいたんだな」リリスが推測する。
「そして、グローバル・ソリューションズがそれを狙っている」
リリカが暗い表情で続ける。
「彼らが導入したと称するセキュリティアップデートも、実は……」
彼女はスクリーンをスクロールし、アップデート履歴のデータを表示させた。
「見てください。彼らが入ってきてから、正規のセキュリティアップデートがほとんど行われていない。むしろ、特定のセキュリティ機能が次々と無効化されているんです。最新の技術でセキュリティを上げるなんて笑える」
「なるほど……」
アキトはコードの流れを追いながら言う。
「最初は単なる技術力不足かと思われたけど、実は計画的な都市の脆弱化だったというわけか」
「そういうことだ」
リカルドが頷く。
「カイエンは当初、彼らを単なる無能な業者だと思っていたが、不審な点に気づき始め、私たちに密かに協力を求めてきたんだ」
「そして、彼らに気づかれる前に、カイエンは自ら警備隊へ異動することで、内部からの情報収集を続けようとした」
リリカが補足する。
「彼は勇敢だよ。私たちを危険から遠ざけるため、自分だけが目立つ形を選んだんだ」
アキトは新たに提供されたモヒートを飲みながら考え込む。デバッグハーブの効果と合わさり、頭の中の思考が一段と明晰になっていく。
【スキル『バグ予測』がLv.7→Lv.8にアップしました!】
【効果『深層思考』が発動!問題の本質を見抜く力が向上しました】
(カイエンさん…最初からそんな深い考えがあったのか。単に追い出されたわけじゃなかったんだな)
「今は、私たちにとってチャンスでもある」
リカルドが新しいドリンクを差し出しながら言う。
「グローバル・ソリューションズは、まだレガシーコードの完全な制御には至っていない。彼らは、カイエンたち古参エンジニアを追い出すことで、制御するために必要な重要な知識を失ってしまった。自分たちの腕を過信していたようだな。さらに、エンジニアを取り込もうとしたが、失敗したようだ。金で動くとでも思ってたのかね」
リリカが頷く。
「だからこそ、今がチャンス。私たちの『ゴーストダイブ』と、アキトさんの『バグ予測』、そしてカイエンの持つ知識。これらを組み合わせれば…、」
「システムを取り戻せる可能性がある」
アキトが続ける。
「ただし」
リカルドは警告するように言う。
「クラスタータワーへの侵入は、相当な危険を伴う。一度潜入を開始したら、システムを奪取するまで、途中で引き返すことはできない」
「それに」
リリカが補足する。
「タワー内部には、グローバル・ソリューションズが仕掛けた強力なセキュリティシステムがある。『コードイーター』と呼ばれる、プログラムを文字通り食い尽くす防衛機構よ」
リリカは一瞬、アキトを分析するような鋭い目で見つめた。
「アキトさん、あなたのスキルは確かに優れている。特に、バグ予測とコード追跡の能力は、私が見てきた中でも希少なもの。だが…、」
彼女は少し言葉を選ぶように間を置いた。
「スキルを最大限に発揮するには、精神力だけでなく肉体的な持久力も重要だ。いくら頭脳が優れていても、それを支える身体が持たなければ意味がない」
「身体能力ですか?確かに、俺は運動音痴で…」アキトは少し恥ずかしそうに頭をかく。
「STRやDEXのステータスが低いからといって、才能がないわけじゃない」
リリカは意外な言葉を投げかけた。
「むしろ、私の目から見れば、あなたの身体には大きな可能性が眠っている。鍛えていないだけだ」
「え?」アキトは驚いて顔を上げた。
「本気でスキルを極めたいなら、長期的な身体トレーニングも必要になる」
リリカは真剣な表情で言った。
「特に、チームスキルの開発と維持には、並外れた精神力と肉体の持久力が求められるからな」
「チームスキル?」アキトは興味を示す。
「今は詳しく説明している時間はない」
リリカはタブレットに戻った。
「まずは目の前の能力でできる作戦を考えよう」
「私の『ポリモーフィズム』も、きっと役立つわ」
リリスが静かに言う。
「そうだね」
リリカはリリスを認めるように頷いた。
「あなたのスキルは希少なもの。特に、システムの認証を突破する場面では不可欠になるだろう」
「行くしかないですよね」
アキトは決意を固めながら言う。
「僕たちには、それぞれの得意分野がある。きっと道は開けるはずです」
リリカとリカルドは顔を見合わせ、静かにうなずいた。
「では、作戦会議を始めましょう」リリカはタブレットに新しい図面を表示させる。「クラスタータワーへの潜入計画を立てましょう。時間はあまりない」
カウンターの上には、新しいドリンク「デバッガーズ・ストーム」が並べられた。
「ちょっと一息入れようぜ。それからもう一度協力して解析を進めよう。」
リカルドは新たなデバッグハーブを浮かべながら言った。
「長い夜になるが、エンジニアは徹夜なんて慣れっこだ。大丈夫だよな…、」
その夜、バグと肴亭では、世界の命運を左右する大きな作戦が練られることになる……
【スキル『戦略立案』を習得しました!】
【スキル『チームワーク』がLv.2→Lv.3にアップしました!】
続きます。




