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第11話 和み亭の夜 - 異世界のおもてなしを味わう

少しずつこの国のことがわかってきますね。

ちなみに作者は以前コボラーでしたw

すっかり日も落ちた夜、アキトたちは、古風な趣のある日本家屋造りの宿屋『和み亭』に迎えられ、娘さんに部屋まで案内してもらう。


 愛想がよく、好奇心旺盛な目をくりくりさせながらよく話す娘さんはマリカと名乗った。年齢は15歳で学生、好きな科目は異文化コミュニケーション。学校は、体術たいじゅつなど決められた時間に「土俵入り」する以外は基本リモートで、好きな時間に仮想現実空間に接続して授業を受ければよいので、宿屋の仕事も手伝っているとのこと。


(この世界の人たちはどうやら苗字はないらしいな。結婚とかどうなってるんだろう。それに「土俵入り」って……?)


「私が将来の女将になったら、和み亭をもっともっと盛り立てていくつもりです。さあ、お部屋につきました!ごゆっくりどうぞ~」


 案内されたのは2階の一番奥の広い部屋だった。12畳ほどの和室で、置き型の和風照明が部屋の中を明るく照らしている。


 部屋の中央にあるちゃぶ台にはお茶と和菓子が置いてあった。


(これはくつろげそうだ。ちょうど甘いものが欲しかったんだが、これは最中かな、あとでゆっくりいただくとしよう)


 実はお取り寄せで京都から和菓子を取り寄せるくらい甘いもの好きのアキトのほおが自然とゆるむ。


 リリスとピットは隣の部屋になるらしい。


「浴場は交代制になります。18時から開いていたのでいったん押さえておきましたのでご自由にどうぞ。夕食は19時になります。時間になったらお迎えに上がりますので、それまでごゆっくりおくつろぎください」


 マリカはそう言って、電子的な音を立てる、ピットにちょっと似たデザインの掛け時計を少し指さした。


「ピッ、もうすぐ、18時。希望の時間があれば言ってくれれば起こすので、お知らせくださいませ」と時計が電子的な声で語りかける。


「ありがとう。今はいいや、では、さっそく浴場でゆっくりさせてもらうよ」


 簡単な部屋の説明を受けて、部屋にあったタオルと浴衣をもって、浴室に向かう。浴室は貸し切りでさほど大きくなかったが、かけ流しの温泉だそうで、ゆっくりくつろぐことができた。


 お湯の量はたっぷりあり、ライオンの型を模した蛇口からは絶え間なくお湯が出てくる。


 アキトは浴室に置いてあったミニタオルを頭に乗せ、ゆったりとくつろぐ。


(やれやれ、やっとゆっくりできたな。しかし今日はいろんなことがありすぎだ)


(しかしまあ、少しこの世界のことがわかってきたな。とりあえず会う人はみんな良い人そうだし、帰国してからバグ取りばっかりで少し疲れたし、ここでいっちょ、プログラミングの腕を磨かせてもらいますかね)


 ゆったりとくつろいだアキトは、浴衣に着替えて部屋に戻り和菓子とお茶で一服する。


(これは最中だな。コンビニよりはましってレベルだけど、小さめでかつ甘すぎず食事前にちょっといただくのに良い感じだ、粒あんなのも、わかってるね~)。


 少し休憩した後、19時に迎えに来たマリカに案内されて、階下の食事処へと向かった。中央に大きな囲炉裏があり、そこでは巨大な鳥の肉が丸焼きにされており、照り焼きっぽい香ばしい匂いが食欲をそそる。


 食事処には、どこか懐かしい リズム の、相撲甚句に似た 電子的な ミュージックが 小さい 音量で流れている。他の宿泊客も数組いるようだが、アキトたちのテーブルは少し離れた場所に用意されていた。


 リリスとピットもすでに食事処にいた。リリスは静かに席に座り、ピットはテーブルの端にちょこんと座っている。


 席に座り、ふと顔を上げると、食事処のあちこち掛けられた軸が目に留まった。流れるような筆文字で、とても美しい字で一連の言葉が書かれている。


「流れは 巡り 変数に 宿る」

「構造は 木の如く 枝葉を 広ぐ」

「並列は 時を 異にする 調和」

「例外は 予期せぬ 天候の 如し」

「真偽の狭間 論理は踊る」


(構造は 木のごとく 枝葉を 広ぐ、か、懐かしい言葉だな…)アキトは心の中で呟いた。コンピュータ部時代に顧問から聞いた言葉だ。


 元の世界で自分が書いてきたコードも、複雑になりすぎないように、常に構造を意識してきた。木が幹から枝葉を伸ばすように、コードも主要な処理から細かな機能へと組織的に展開していくべきだ。


 しかし、この世界の文字は、漢字に似ているようでいて、どこか違うのに、なぜか意味が伝わってくる。ここに書かれている内容はすべて、プログラミングの基本的な原理を表しているように思える。一体、誰が、どんな意図でこんな言葉を書いたのだろうか……


 「どうかした?」


 リリスが、アキトの視線に気づいて声をかけた。


 「いえ……少し、壁の掛け軸が気になって」


 「ああ、昔からここに飾ってあるわね」


 マリカも近くに来て、掛け軸を見上げた。


「素敵な言葉でしょう?5年前に亡くなったおじい様が書いたんですよ。」


(おじい様、か……この世界にも、プログラミングに通じるような考えを持つ人がいたのか)

アキトは、掛け軸の言葉について少し思いを巡らせている間に料理の支度が済んだようだ。


 「さあ、どうぞ」


 女将さんが笑顔で、焼きたての肉をとりわけ、アキトたちのテーブルに運んできた。


「これはフラッピーバードの照り焼きよ。隠し味に味噌を使っているの、うちの自慢料理の一つ」


 アキトは進められるままに照り焼きから箸をつける。


 (箸とフォーク・ナイフは選べるようになっていた)。


 パリッと炭火で焼き上げられた香ばしい皮と柔らかい肉の組み合わせが絶妙で、ほんのりと塗られた味噌の風味が食欲をそそる。


「美味しいです!」


 リリスも奇妙な形のナイフとフォークを使って肉を少し口に運んでいる。

 ピットも小さなさらに肉だけを取り分けてもらい、

 「ピピカチャ!コレ、スキ!」

 とご機嫌な様子だ。


 「あなたたちも食事するんですね」

 「生きていくうえでは別にエネルギーを補充するからいらないのだけれど、娯楽としての食事は必要と判断されている。ここの食事は温かくて美味しい」


(やっぱり同じものを食べられるっていいな、気持ちが温かくなるようだ)


 食卓は照り焼きのほかは白いご飯・味噌汁・煮物・珍しい葉物野菜を使ったサラダのほか、中東でよく食べられるような平たいパン、アルファベットっぽいパスタなど、複数の好みにこたえられるようになっているようだ。


「この世界では、国ごとに食文化もだいぶ違うみたいなんです」


マリカが説明する。


「和み亭は、女将の故郷のcobol王国に ちょっと 影響を受けて、和食中心なんだけど、和食だけだと苦手な人もいるみたいで、他の国の料理も少しお出しするようにしています」。


(まあ日本も雑多な料理があったりするしね、似たようなもんか。しかし食の好みが割と似通っていてよかったな)


 アキトは、透明なゼリーの中に奇妙な模様が浮かんでいるものや、見たこともないビビッドな色をしているけれどパリッとして新鮮な野菜とサーモンのような魚を甘酸っぱいソースで和えられたサラダなど、異世界の珍しい料理を堪能する。


 後から出てきた魚料理も、元の世界では見たことのない色彩や形をしていたが、トロッとしたソースとネギみたいな付け合わせがよくあって美味しかった。


アキトは、異世界の珍しい料理を堪能しながら、リリス・ピット、時々様子を見に来てくれる女将さんとの会話を楽しむ。


 食事が終了すると、場所を変えて、デザートに用意された木苺のパイ、食後のお茶やお酒を楽しもうということになった。

まだ談話は続きます(^^)

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