2 24万分の1という悩みと示された新たなドア
日本の平和と独立を守る国内最大の組織、自衛隊。その定数は約24万人余り。
高卒後の進路として、ある程度の気概を抱いて自衛隊の門をたたいたつもりの二ノ宮だったが、部隊に配属されて待っていたのは思い描いていた誇らしい勇姿とは程遠い日常だった。
9月半場の配属以来、連日続く教育隊と同じ基礎訓練、連日の体力錬成、敷地内の草刈りと集草作業、そして延々と続く装備品の手入れ…
『何やってるんだろ俺…』
ギラギラ照りつける太陽見上げながら二ノ宮は思った。
『…俺は、草むしりをするために自衛官になったわけじゃないんだけどなぁ。こんなことが本当に国防に役立っているんだろうか?』
広大な組織のなかで、自分というちっぽけな存在がどんどんと深みへ呑み込まれていく。
自分の立ち位置が見えなくなり、目標を見失っていた二ノ宮は、毎日をどこか消化試合のように過ごしていた。
そんな配属2週間目のことだった。 訓練班長に呼ばれた二ノ宮は、同期の高橋2士とともに射撃小隊室のドアの前に立っていた。
「二ノ宮2士他1名入ります!」
「入れ」
「敬礼。直れ。二ノ宮2士他1名は射撃班長に用件があり参りました! 敬礼。直れ」
「休め。お前たち中隊に来て2週間だが、もう慣れてきたか?」
「はい、先輩達が色々ご指導してくれるので……」
「そうか……」
射撃班長大田2曹は、そう言って机の上の書類に一旦目を落とすと、2人に向き直り
「来週から、特別勤務等の実地教育を行う事になった」
「特別勤務ですか?」
「駐屯地や中隊の警衛、中隊当直や駐屯地消防隊、駐屯地や部隊の糧食班なんかだな。で、まずは中隊の警衛と糧食…中隊ではKP勤務と言われてるが、それに就いてもらう」
「はいっ、了解しましたっ!」
大田は続けて
「二ノ宮は………??アレッ、小隊長、二ノ宮は……」
「KPだろ、大田班長」
小隊長の助け船に、大田2曹はポンと手を打った。
「そうでした。二ノ宮はKPな、高橋は当直。それぞれ半週で泊り込み勤務になるから、先輩に聞いて準備しておくように」
「了解しましたっ!」
「用件は以上だ。戻って良いぞ」
「はいっ! 二ノ宮2士他1名は用件終わり、帰ります! 敬礼。直れ。回れ右。前へ進め」
射撃小隊室を出た二ノ宮は、小さく息を吐いた。
KP――Kitchen Police。
隊員食堂での糧食勤務だ。
二ノ宮が配属された高射特科中隊は駐屯地から離れた訓練場を持つため、自前の食堂を有していた。
隊員自らが調理し、隊員の胃袋を支える部隊だった。
この実地訓練が、自衛官二ノ宮を大きく成長させる事になるのだった。




