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070●あかん、あかん & 071●寒空の下で涙でるで
070●あかん、あかん
今日のお昼ごろ、先生は出発するって言うてはった。
うちはぼんやりしながら、親方のところに来た。
「おっ、来た来たあ。仕事やで。こんなお人や。」
・・・侍。
浪人。
寺子屋。
胸の奥が、ぎゅっと縮む。
お昼に旅に出る人。
そんなん、そんなん、あかん。
あかんあかんあかん。
それ、先生やんか。
071●寒空の下で涙でるで
どうしよ。先生を、手にかける・・・そんなん、できるはずあらへん。
どうしよ。親方は許してくれへんやろな。
仕事を放り出したら、どうなるん。
どうしよ。先生、このまま行ってまう。
気がついたら、街道に立ってた。
髪が風に乱れる。
あっ。先生や。
「おっ、イロハ。見送りに来てくれたんか。・・・ありがとな。」
そう言うて、先生はうちを抱きしめてくれた。
あったかい腕。
こんなん、仕掛ける間合いやん。
できへん!絶対に。
涙がぼとぼと落ちる。
先生も、目が赤い。
「イロハ・・・。」
冬の始まりを告げる風が、イロハの肌を撫でる。
・・・何かが、動き出している。
冬の寒空の下、
ふたりを、ゆっくりと不気味な者たちが囲み始めた。




