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067●‘花塩’の味はどうなん?
「イロハ、だいぶ字ぃ覚えてきたなあ。よっしゃ、今日は思いつく言葉を書いてみよか。」
‘い’、から順番なんか。
‘い’で始まる言葉・・・。
うちは筆を持って、ゆっくり書いてみる。
いぬ。
いし。
いそ。
・・・あれ、先生。どうしたん?
「いやいや、なんでもあらへん。イロハは、‘磯’に行ったことあるんか。」
「川はようさん流れてるから知ってるけど、海はいったことあらへん。」
「そうかあ・・・。」
先生は少しだけ、目を細めた。
「わしがお勤めしてたとこは、海が近こうてな。藩がお取り潰しになる前やけど。浜には塩田がようけあった。‘花塩’いうて、評判のええ塩を作っとったんや。まあ、わしが直接作ってたわけやあらへんけどな。」
一瞬、先生の声の調子が落ちた気がした。
先生、塩、しょっぱいから思い出して顔しかめてるだけ・・・なんかな。
なんやろ。胸が、ちょっとだけ痛い。
ふふ、親方、うち字ぃ読めるようになってきてん。
ええ先生や。どんな人かって。
まだ若いと思うけど、うちから見たらおっちゃんやな。
今日は仕事、ないんか。
たまにはゆっくりしていきや、って、
へ〜、親方でもやさしい時、あんねんなあ。
えっ、いつもやさしいやろ、って。
そら、堪忍なあ。




