ラブレター
祥子へ
口ではうまく伝えられなくて、手紙に書いた。
祥子。お前は覚えているだろうか。
初めてお前にあった時、仕事で失敗して悩んでいた私にお前が声をかけてくれた。大丈夫かと聞いてくれた。
私は頑固で融通がきかないところもあり、何より先代社長に気に入られていたこともあり、他の社員に疎まれていた。そんな私にお前が声をかけてくれた。私を優しく労わってくれた。その時のお前の優しさと笑顔に私は一目で恋をした。
後日、先代の社長からお前を紹介された時、どうしたら良いか分からず、冷たい態度をとってしまった。あの時はすまなかった。
あんなことをした私にお前は怒りもせずに普通に接してくれた。年下のお前に気を使わせてすまなかった。
お前は会うたびに、私に優しい笑顔と言葉を与えてくれた。仕事で疲れた私に癒しをもたらしてくれた。
しばらくして、社長からお前との結婚を勧められた。その時、私は嬉しかった。お前がそばにいてくれることに喜びを感じた。
しかし、私はお前の夫として相応しいのか、ほかに良い人がいるのではないかと不安になった。だから、お前が私の手を取り、結婚を受け入れてくれた時は天に昇る気持ちだった。
最初はどうしたらいいかわからなかったが、楽しかった。お前との生活は心地よいものだった。
祥子、こんな私の元に来てくれてありがとう。
私が不甲斐ないばかりに、お前には苦労をかけてしまった。お前が私のために形見であるダイヤモンドのネックレスを手放させてすまなかった。
祥子、お前が私の妻で幸せだった。私のような男の妻になってくれて、ありがとう。
お前との日々は、楽しく、愛しかった。かけがえのない思い出だ。
私は祥子を誰よりも愛している。
野崎健太郎
ダイヤモンドのネックレスと共にあった手紙は、健太郎が祥子への熱烈なラブレター。
「……健太郎さんは情熱的人だったのですね」
こっそりと手紙を盗み見ていた玲奈が呟く。玲奈に巻き込まれて、手紙を盗み見ていた仁は、こそばゆい気持ちだ。
祥子への想いを綴ったラブレター。恥ずかしかったのか、渡す勇気がなかったのか。健太郎はラブレターとダイヤモンドネックレスを渡すことなく亡くなった。
そのおかげで、今回の異変が起きた。
「まったく、人騒がせなことだ」
「まぁ、そう言ってやるな」
早く渡せばよかったのだと憤る玲奈に、仁が健太郎を庇う。男として、気持ちはわかるのだ。
そんな二人の様子を気にせず、祥子はダイヤモンドネックレスが入った箱とラブレターを胸に抱きしめる。
「私も誰よりも愛していますよ。健太郎さん」
頬を染めた少女のように、艶やかな女性のように、祥子は美しい笑顔を見せた。
花壇に咲き誇る白のダリア、花言葉は感謝、豊かな愛情。




