隠していた遺産
野崎修との決着を終えた翌朝。
車椅子に乗った祥子を、玲奈と仁がある場所に案内していた。
「本当に健太郎さんの遺産が庭にあるのですか?」
「そうですよ。祥子さん」
まだ半信半疑の祥子に、玲奈は断言する。
起きた異変の真相、野崎修が野崎健太郎の隠し遺産を狙って起こした犯行を、祥子に説明した。
祥子は驚いたが、野崎修の犯行を否定することなく受け入れた。おそらく、祥子自身も疑っていたのだろう。しかし、野崎健太郎の隠し遺産についても、祥子は疑った。
隠し遺産がダイヤモンドネックレスであることはまだ話していないのだ。
「着きました」
「まぁ!これは……」
目の前の光景に、祥子が驚きの声をあげる。
着いた場所は、庭の隅。ひっそりと隠れるように存在する正方形の形をした花壇には季節外れの花。本来なら、夏から秋にかけて咲く大形の花、白のダリアが冬の一月が満開に咲いていた。
「これはいったい……」
言葉を失う祥子に、玲奈は満足気に頷く。こっそりと祥子達の様子を窺っている、協力者の〈妖精〉達がハイタッチしている。
(そりゃ、驚くよな)
それぞれの反応に、仁は苦笑。
やるのならばロマンチックにしようと、玲奈が〈妖精〉達の〈チカラ〉を借りて、花壇に季節外れの白のダリアを咲かしたのだ。
映像の早送りように、白のダリアが咲いていく。その様子に仁は子供のようにはしゃいだ。本当にすごかったのだ。
なんとか落ち着いた祥子が、玲奈に視線を向ける。
「この花が健太郎の隠し遺産なの?」
「いえ、これは健太郎さんの気持ちで、隠し遺産は別の物です。橘、頼む」
「ああ」
仁は用意していたスコップを手に取る。季節外れの白のダリアが咲いた花壇の真ん中、不自然に空いた場所、花に気をつけながら、仁はそこを掘る。
そして。
「……本当にあった」
玲奈の言葉を疑っていた訳ではないが、実際にあったことに仁は驚きを隠せない。
見つけた目的の物、缶の箱を仁は土から取り出す。缶の箱についた土を落として、仁は祥子に渡す。
「どうぞ、野崎さん」
「え、ええ…」
仁から缶の箱を受け取った祥子が、交互に箱と仁、玲奈の顔を見る。
「箱を開けてください。祥子さん」
いまだに困惑する祥子に、玲奈は笑って促す。戸惑いながらも祥子は箱を開ける。
箱の中には、さらに木の箱が入っていた。縦が十五センチで横と十センチ、高さが五センチの蔦のような模様がある木の箱。
箱の中に箱、目を瞬かせていた祥子は我に返り、また箱を開ける。
「まぁ」
木の箱の中、祥子が驚きの声を上げる。仁と玲奈も横から箱の中を覗く。
「これはわたくしの」
唖然と祥子は呟く。
箱の中に入っていたのは、野崎健太郎の隠し遺産、ダイヤモンドのネックレス。それと祥子の名前が書かれた白い封筒。
祥子が自分の名前を書かれた封筒を手に取る。封筒の裏を見れば、そこには野崎健太郎の名前。
「………これはいったい……?」
昔手放した母親の形見のダイヤモンドのネックレスが、庭にあるのか。この手紙はなんなのか。祥子は驚きのあまり混乱していた。
「まぁ、落ち着いてください。野崎さん」
「とりあえず、健太郎さんからの手紙を読んでみては?」
混乱している祥子に仁が声をかけ、玲奈が手紙の確認を進める。
「……そうね」
状況はまだ読み込めないが、落ち着こうと祥は手紙の封を切った。手紙を取り出して読み始めた。




