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怪異探偵事務所   作者: 夜乃桜
置き忘れた想い

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26/32

捜索の結果

役割分担を決めて、意気揚々と出かけていく玲奈を見送った仁は、二階の廊下で腕まくり。

野崎健太郎の隠し遺産、ダイヤモンドネックレス。健太郎がこの家のどこかに隠したとすると、脚の悪い祥子がほとんど上がることがない二階が怪しい。

特に健太郎の私室であった書斎は、仁の〈時読みの異能〉が反応した部屋。もう一度、調べてみると、仁の〈時読みの異能〉が反応するかもしれない。


「さて、探すとしますか」



15時過ぎ。

いろいろと準備を終えて帰ってきた玲奈は、〈妖精〉達から仁が庭にいることを教えられる。玲奈は家に入らず、そのまま庭に向かった。そこで。


「………何しているのだ?」

「ん、お帰り。横山さん」


スコップで花壇の土を掘り返している仁がいた。


「本当に何をしている。お前は」

「言っとくけど、遊んでる訳じゃないからな」


二度も聞いてくる玲奈に、仁は事情を話す。

仁が書斎で捜索していた時。机の引き出しに、封がきられた花の種が入った袋を見つけた。なんでこんなところに花の種が、と疑問に思った仁は袋を手に取った。

その瞬間、書斎の風景が消えて、仁の意識を飲み込んで、仁は視た。



花壇の前、まだ二十歳ぐらいの女性がしゃがんで作業をしていた。


「作業はそこまでにして、休んだらどうだ?」


仁の隣から聞こえる、落ち着いた男の声に仁は驚き、視線を向ける。

そこには、三十代半ばぐらいで、背が高い男性がいた。


(……どこかで見たことがあるような………?)


男の顔にどことなく引っかかる。思い出せそうで思い出せない。そんな仁の疑問をよそに過去は進んでいく。


「祥子」


花壇の前にしゃがんでいた女性に、男は二度声を掛ける。

花壇で作業していた女性が振り返る。目の前の女性は、若かりし頃の祥子だった。

名前を呼ばれた祥子は、男に笑みを向ける。


「どうなさったの?健太郎さん」


仁は驚いた。自分の隣にいる人物が野崎健太郎。亡くなった祥子の旦那。


「無理はしない約束だ。作業はそこまでにして休憩をしろ」

「……はい。ごめんなさい。健太郎さん」


健太郎にたしなめられた祥子が、素直に頭を下げて謝罪。

夫婦にしてはどことなくぎこちないように見える。歳の差があるせいか、二人が互いに一歩引いているように、仁には見えた。


「……祥子……私は………」


健太郎が何か言おうとしたが、何も言えずに黙る。


(……あ……)


そこで、仁の意識は引き戻された。仁は最後、健太郎が何を言おうとしていたのかわからなかった。



「お前が視たのは想いの過去か」

「そうみたいだ」


仁は頷く。

〈時読みの異能〉が視るのは、その場所の過去や未来だけではない。時にその場に残る想いの過去や未来を視ることもある。

花の種に残された健太郎の想いが、仁に過去を視せた。


「それがどうして気になって」

「もしかしたら、花壇に隠されているのではと思って?」

「……ああ」


二階だけじゃなく一階の部屋も捜索してみたが、ダイヤモンドネックレスは見つからなかった。そのうえ、仁の〈時読みの異能〉も反応しなかった。

なので、唯一視えた過去に仁は賭けた。


「で、見つかったのか?」


仁が掘り返した花壇は、今は使われていない、土だけの状態。

昔は花壇で花を育てていた祥子だったが、歳のせいで花壇での作業が辛くなり、リビング近くで、鉢植えの花を育てている。


「見つからなかった」


ずっとしゃがんで花壇の土を掘り返していた仁は立ち上がる。同じ体勢で作業していたせいか腰が痛い。

他の手がかりはなく、もしかしたらと思っていた分、疲労感が半端ない。


「もう一度、家の中を」

「いや、その必要はない」


どういうことかと仁が聞く前に、玲奈が仁の見つけた花の種を〈妖精〉達に見せる。

花の種を確認した〈妖精〉達は庭のある場所を指で示し、案内しようとする。〈妖精〉と玲奈が何をしているかがわからない。

そんな仁を置いて、〈妖精〉達と話を終えた玲奈が、振り返って言った。


「橘、今夜片付けることにしよう」


仁がわかったことは一つ。拒否権ない奴だ、これ。


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