捜索の結果
役割分担を決めて、意気揚々と出かけていく玲奈を見送った仁は、二階の廊下で腕まくり。
野崎健太郎の隠し遺産、ダイヤモンドネックレス。健太郎がこの家のどこかに隠したとすると、脚の悪い祥子がほとんど上がることがない二階が怪しい。
特に健太郎の私室であった書斎は、仁の〈時読みの異能〉が反応した部屋。もう一度、調べてみると、仁の〈時読みの異能〉が反応するかもしれない。
「さて、探すとしますか」
15時過ぎ。
いろいろと準備を終えて帰ってきた玲奈は、〈妖精〉達から仁が庭にいることを教えられる。玲奈は家に入らず、そのまま庭に向かった。そこで。
「………何しているのだ?」
「ん、お帰り。横山さん」
スコップで花壇の土を掘り返している仁がいた。
「本当に何をしている。お前は」
「言っとくけど、遊んでる訳じゃないからな」
二度も聞いてくる玲奈に、仁は事情を話す。
仁が書斎で捜索していた時。机の引き出しに、封がきられた花の種が入った袋を見つけた。なんでこんなところに花の種が、と疑問に思った仁は袋を手に取った。
その瞬間、書斎の風景が消えて、仁の意識を飲み込んで、仁は視た。
花壇の前、まだ二十歳ぐらいの女性がしゃがんで作業をしていた。
「作業はそこまでにして、休んだらどうだ?」
仁の隣から聞こえる、落ち着いた男の声に仁は驚き、視線を向ける。
そこには、三十代半ばぐらいで、背が高い男性がいた。
(……どこかで見たことがあるような………?)
男の顔にどことなく引っかかる。思い出せそうで思い出せない。そんな仁の疑問をよそに過去は進んでいく。
「祥子」
花壇の前にしゃがんでいた女性に、男は二度声を掛ける。
花壇で作業していた女性が振り返る。目の前の女性は、若かりし頃の祥子だった。
名前を呼ばれた祥子は、男に笑みを向ける。
「どうなさったの?健太郎さん」
仁は驚いた。自分の隣にいる人物が野崎健太郎。亡くなった祥子の旦那。
「無理はしない約束だ。作業はそこまでにして休憩をしろ」
「……はい。ごめんなさい。健太郎さん」
健太郎にたしなめられた祥子が、素直に頭を下げて謝罪。
夫婦にしてはどことなくぎこちないように見える。歳の差があるせいか、二人が互いに一歩引いているように、仁には見えた。
「……祥子……私は………」
健太郎が何か言おうとしたが、何も言えずに黙る。
(……あ……)
そこで、仁の意識は引き戻された。仁は最後、健太郎が何を言おうとしていたのかわからなかった。
「お前が視たのは想いの過去か」
「そうみたいだ」
仁は頷く。
〈時読みの異能〉が視るのは、その場所の過去や未来だけではない。時にその場に残る想いの過去や未来を視ることもある。
花の種に残された健太郎の想いが、仁に過去を視せた。
「それがどうして気になって」
「もしかしたら、花壇に隠されているのではと思って?」
「……ああ」
二階だけじゃなく一階の部屋も捜索してみたが、ダイヤモンドネックレスは見つからなかった。そのうえ、仁の〈時読みの異能〉も反応しなかった。
なので、唯一視えた過去に仁は賭けた。
「で、見つかったのか?」
仁が掘り返した花壇は、今は使われていない、土だけの状態。
昔は花壇で花を育てていた祥子だったが、歳のせいで花壇での作業が辛くなり、リビング近くで、鉢植えの花を育てている。
「見つからなかった」
ずっとしゃがんで花壇の土を掘り返していた仁は立ち上がる。同じ体勢で作業していたせいか腰が痛い。
他の手がかりはなく、もしかしたらと思っていた分、疲労感が半端ない。
「もう一度、家の中を」
「いや、その必要はない」
どういうことかと仁が聞く前に、玲奈が仁の見つけた花の種を〈妖精〉達に見せる。
花の種を確認した〈妖精〉達は庭のある場所を指で示し、案内しようとする。〈妖精〉と玲奈が何をしているかがわからない。
そんな仁を置いて、〈妖精〉達と話を終えた玲奈が、振り返って言った。
「橘、今夜片付けることにしよう」
仁がわかったことは一つ。拒否権ない奴だ、これ。




