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怪異探偵事務所   作者: 夜乃桜
置き忘れた想い

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19/32

準備

お泊まりセットを持って戻ってきた仁を、器用に家のポストにとまる〈火焔の魔女〉の〈使い魔(ファミリア)〉、鷹のキールがおかえりと言うように鳴く。


「あ、お帰り」

「……ただいま」


仁が帰ってきたことを、キールから知らされた玲奈が、玄関で出迎える。

使い魔(ファミリア)〉になった動物は、契約者と感情や感覚などの繋がりを持つ。おまけに、契約者から〈魔力〉や〈霊力〉、〈チカラ〉などを分け与えられる影響か、通常の動物に比べて丈夫になり、知能が高くなる。中にはニ倍近く長生きをしたりする。


「二階にある客間を好きに使って構わないそうだ」

「わかった。ありがとう」

「それと、今夜のことを話したい。客間で待っていてくれ。すぐに行く」


なんかおかしく聞こえたのは、気のせいだろうか。もう何も言うまい。

仕掛けた罠の元に向かう玲奈に背を向けて、仁は二階の客間に向かう。

二階の客間は、書斎の右隣の部屋。机と椅子、ベットにクローゼットだけのシンプルの部屋。仁は荷物を床に置き、椅子に座って一息ついた。

久しぶりの泊まりの調査だ。そう仁が考えていた時、客間がノックされた。


「どうぞ」

「悪い。待たせた」


現れたのは玲奈。そんなに時間が経っていない。それなのに、律儀に謝罪する玲奈に、仁は苦笑。


「それよりも、どうしようか?」


一脚しかない椅子を玲奈に譲り、仁はベットに腰掛ける。

野崎修が仕掛けた何かが、今夜に行動を起こすとは限らない。現に昨日は何も起きなかった。


「問題ない。今夜は必ず現れるから、そこで捕まえる」


もしかしたら長丁場になるかもしれないと考える仁に、玲奈がはっきりと告げる。

仁が荷物を取りに行っている間、玲奈は祥子に野崎修が家に来ていた日を確認。そして、野崎修が家に来た日と異変が起きた日の夜を比べてみると、野崎修が来た次の日の夜は、高確率で異変が起きていた。


「なるほど。あ、でも、俺たちが滞在すること、野崎修は知っているし、俺たちがいるから、何もしない可能性もあるんじゃ」

「あの男がそこまで考えると思うか?」


否定ができない。なので、仁と玲奈は、何かの捕獲作戦を話し合う。

今夜から玲奈も滞在する事から、夜は交代で見張るかなどの話し合いに区切りがついた時に、一階から夕食の準備ができたと、祥子に呼ばれる。

食事に関して、仁は負担にならぬようにと、インスタント食品などを用意していた。お湯だけは貰えないかと確認したら、祥子が仁の食事の用意を申し出た。最初、仁は断ろうとしたが祥子は引かず、祥子に甘える気でいる玲奈の説得もあり、仁は祥子の申し出を受け入れた。そして。


「いっぱいあるから、どんどん食べてね」

『……………』


机の上からあふれそうな料理に、仁は唖然。玲奈も同じ反応。


「つい、作りすぎてしまって」


祥子は恥ずかしそうに言う。作りすぎたにしては多すぎないか。ホームパーティーの量だ。

しかし、せっかく祥子がわざわざ作ってくれた料理。


「……いただきます」

「……いただきます。祥子さん」


覚悟を決めた仁と玲奈は、箸を手に取った。



約1時間後。


「ごちそうさまでした」

「……ごちそうさまです」

「はい、お粗末様です」


礼儀正しく手を合わせて、一礼する玲奈に仁が続く。

祥子の料理は美味しかった。机の上に大量に置かれている空の皿を、祥子は嬉しそうに片付ける。それを玲奈が手伝う。

仁も手伝おうとしたが、食べ過ぎにより仁は椅子から立ち上がることができなかった。


「大丈夫か?」


心配そうに玲奈が尋ねる。玲奈も結構食べていたと思うが、平然としている。


「あ、うん大丈夫」


仁のお腹の様子が落ち着いてきた頃に、祥子から風呂が沸いたからと、玲奈、仁の順番に入らせてもらった。


「お湯加減は良かったかしら?」

「……はい、良かったです」


風呂から上がった仁は、リビングで水をもらう。


「野崎さん。わざわざ、夕食や風呂まで、ありがとうございます」

「あら、気にしないでくださいな」


礼を言う仁に、祥子は嬉しそうに笑う。その後も祥子は、仁と玲奈に必要なものはないかと聞いてきた。


「いったい、どうしたんだ?野崎さんは?」


歓迎してくれる祥子に、仁は戸惑う。それはそれでありがたいが、状況が状況だけに素直に喜べない。


「……反動かもしれないな」


祥子の様子に、玲奈は苦笑。

旦那が亡くなってから一ヶ月も経たない時に、家で異変が起きた。おまけに祥子は脚が悪く、たった一人だ。


「不安だったのだろう。だから、私たちが来て、祥子さんは安心しているんだ」


誰かがそばにいてくれる、そんな祥子の気持ちを、玲奈と仁は理解できる。

失って、当たり前の出来事がなくなってしまった。残ったのは、言葉にできない胸に穴が空いたような寂しさ。その寂しさは埋めることは難しい。だけど。


「誰かがそばでいてくれる。それだけで救いになることもあるだろう」


静かで柔らかな玲奈の笑みに、仁も頷く。


「じゃ、頑張るとしますかな」

「ああ」


祥子が落ち着いて暮らせるようにと、早く異変を解決しようと仁は決意。

祥子の身の安全は〈お守り〉だけでは不安だ。なので、夜の間は祥子の寝室には〈結界〉をはることにした。


「おやすみなさい。祥子さん」

「ええ、おやすみなさい。玲奈さん」


祥子が寝る前に、玲奈は寝室の窓の戸締りを確認して、寝室の扉を閉めた。

そして、玲奈が寝室の扉に手を置くと、〈魔方陣〉が浮かび上がり、寝室を〈結界〉で包み込む。

これで準備は整った。罠の仕込みは、万全。


「絶対に捕まえてやる」


玲奈の眼は決意に燃えていた。



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