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怪異探偵事務所   作者: 夜乃桜
置き忘れた想い

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16/32

発覚

昼食後。仁と玲奈は、今後の話し合いを書斎で行っていた。


「〈妖精〉たちは外の物置ドアを何度も開けている人間を見ていた。それは、甥の野崎修だった」


〈妖精〉達か確認してきたことを、玲奈は真っ先に告げる。

驚きはなく、やっぱりそうかと仁は納得。なにせ、仁の〈時読みの異能〉で視た書斎の男は、野崎修の特徴と一致していたのだ。


「それにしても、いったい何を探していたんだ?」

「野崎修の目的が気になるな」


〈時読みの異能〉で視えた、気になる仁の疑問に、玲奈は眉を寄せる。

野崎修は『こちらの世界』の手を使って、何かを見つけようとしている。そこまでして、探すものは何か。


「……異変がおこったのは祥子さんの旦那さんが亡くなって、一ヵ月ぐらいたってからだ」

「じゃあ、旦那さんが持っていた物を探しているのか」


その可能性が一番高そうだと玲奈が頷く。

最初、野崎修は『こちらの世界』の手を使わず、自分一人で探していたのかもしれない。仁の〈時読みの異能〉で視た、野崎修が書斎で探す姿はその時の過去かもしれない。

しかし、それでも見つからなかった。


「だから、この手を使ったのか」


野崎修の行動に、玲奈は呆れる。

生粋の『こちらの世界』の〈魔術師〉である玲奈にとって、〈常人〉である祥子の生活を脅かすなどは、許し難い行為だ。


「よっぽど、価値がある物か?」

「その可能性は高いな。だから、独り占めをしようとしているのかもしれない」

「あ~」


野崎修の恰好と態度から、仁は納得。野崎修は金遣いが荒そうだ。

だから、野崎修はこそこそと隠れて、『こちらの世界』の手を使ってまで探していた。だが、まだ見つかっていない。


「……野崎修が手荒な真似を起こす前に、私たちで見つけたほうがよさそうだな」


玲奈の言葉に、仁の眼が鋭く険しくなる。

目的のために、野崎修は『こちらの世界』の手を使った。なら、その手も使う可能性もある。

しかし、野崎修が犯人だと証明する物証の証拠はない。流石に〈妖精〉たちの証言は使えない。


「そうなると、俺たちには不利だな」

「……そうだな」


玲奈が顔をしかめる。仁の言う通りだ。

唇に手を当て、深く考え込むように玲奈は黙り込む。書斎には沈黙が流れる。


「あ~、そういえば、野崎さんから聞いたんだけど」


暗い雰囲気を変えたくて、祥子から聞いた話を仁は持ち出した。


「横山さんはイギリス出身なんだよな。家族はどうしているんだ?」


唇をなぞっていた玲奈の指がピタッと止まる。

玲奈は一瞬だけ眼を閉じ、静かに告げる。


「私の家族、お祖父様と両親は二年前に亡くなった」


深い意味はなかった。興味本位で聞いたことを、仁は後悔した。


「……すまなかった」


仁は玲奈に頭を下げる。

祥子が言っていた二年前の出来事はこのことだったのだ。なんで、思いつかなかったのだろうか。


「謝ることではないだろう」


頭を深く下げる仁に、玲奈は苦笑する。


「私は大丈夫だ」


何事もないように玲奈は告げる。でも。


「横山さん。寄りかかられても、支えられないほどやわじゃない」


玲奈の頭にポンっと仁は手をのせる。子供をなだめるように、甘やかすように撫でる。

仁は育ての親、愁一郎が亡くなった時、不安でたまらなかった。自分一人で頑張らなくては、周りに甘えるわけにはいかないと、仁は思っていた。

そんな仁に、愁一郎の友人が言ってくれた。初対面で根拠のない人の言葉。それなのに、仁は呼吸がしやすくなった。

だから、仁は玲奈に伝える。


「こっちは大丈夫だ」


玲奈が眼を見開く。仁は自分のしていることに我に返る。


「悪い。勝手に」

「待って」


離れていく仁の手を玲奈は止める。そして、仁の手に玲奈は頭を摺り寄せる。


「……少しだけ、このままで」

「ああ」


玲奈の気がすむまで、仁は玲奈の頭を撫で続けた。


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