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怪異探偵事務所   作者: 夜乃桜
置き忘れた想い

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物置部屋

一階の隅に位置する四畳ばかりの窓のない物置部屋。

電気をつけても薄暗い。手前には掃除道具、奥には箱や家具などが置かれていた。


「任せた」

「え、俺?」


仁の肩をポンと玲奈が叩く。

埃が漂う物置部屋の調査を仁に頼む。正確には、玲奈は押し付ける。


「背がひっかかる」


玲奈の身長は160㎝以上。女性にしては背が高い方に分類されるが。


「ちょっと待て。どう見ても俺の方が身長高いだろうが」

「じゃあ、胸がひっかかる」


控えめな玲奈の胸に、仁は思わず視線を向けた。そして、すぐさま視線を逸らす。

どこが引っかかるのだなど、口が裂けても言ってはならない事実。


・・・覚えておけ、仁。男が女に向かって胸の問題を指摘するのは禁忌なのだ・・・


いつかの酒の席で、教えてくれた養父、愁一郎の言葉。いったい何があったのか、仁は気になったが、愁一郎の全身から訴える語りたくないに聞くことを諦めた。一応、教訓として覚えていた。


「…………わかった。俺が調べてくる」

「頼んだぞ。橘」


物置部屋の調査を、仁は始める。

ハンカチで口を覆った仁は、怪しい痕跡はないかと調べていく。箱や家具などの隙間を潜り抜けて、奥に向かう。


「どうだ?何かあったか?」


廊下から物置部屋の様子を伺う玲奈が尋ねる。

罠に捕まっていた何かは物置部屋から出てきた。物置部屋に何かの手がかりがある可能性は高い。


「残念だけど、何もなさ……うん?」

「どうかしたか?」


仁は家具や箱を少しばかり動かして、隙間から奥の壁の方を覗く。


「あ、奥にドアがある」


家具などに隠れて見えていなかった物置部屋の奥に、仁は扉を見つける。よく確かめようと物置部屋の奥にある扉に行こうとするが、箱や家具が扉の前を塞ぐように置かれているため、奥のドアにはたどり着けない。


「家具や箱が邪魔だな。無理そう……横山さん?」


玲奈の返事がない。仁は振り返って、物置部屋の入り口を見る。そこには、玲奈の姿がない。


「あれ?どこいった?」


何かあったか、仁が物置部屋から出ようとしたその時。前触れもなく、物置部屋の奥の扉が開く。


「!」


驚いた仁が、開かれた扉の方に振り返る。


ガコン!


「〜〜〜〜!!」


勢い余って振り向いた拍子に、仁は足を家具にぶつける。あまりの痛みに、仁はその場にうずくまる。


「何をしている?橘」


怪訝そうな玲奈の声。

物置部屋の奥にある扉と家具の隙間から、ひょっこりと玲奈の顔が覗いていた。


「横山さん?なんで、そっちから?」


家具に当たった足をさする仁が、涙目に玲奈に問いかける。


「祥子さんに聞いてきた」


玲奈は事前に、祥子から家の間取りなどを聞いていた。しかし、物置部屋に扉があることは聞いていない。なので、玲奈は物置部屋の奥にある扉について、祥子に尋ねに行った。

玲奈に聞かれて、物置部屋の奥の扉の事を、祥子は思い出した。物置部屋の奥の扉は、庭の反対側、家と塀の間にある扉だと教えてくれた。


「それなら、一言、言ってからにしてくれ。びっくりしただろ」


突然いなくなって、前触れもなく、物置部屋の奥の扉を開けた玲奈を、仁は責める。


「驚かせたのならすまない。だか、祥子さんに奥のドアについて聞いてくると私は言ったぞ」


仁に謝罪はするが、自分は声をかけたと玲奈は主張する。


「え、そうなのか?悪い。聞いてなかった」

「いや、私もお前の返事を聞いていなかった」


物置部屋の奥にある扉と障害物に気をとられていた仁は、玲奈の言葉をよく聞いていなかった。そう言う玲奈も仁の返事を確認していなかった。だから、互いに謝罪。これで解決。


「それで、橘。祥子さんは私に聞かれるまで、このドアの存在を忘れていた」

「そうなのか」


物置部屋の奥のドアのことを思い出した祥子は、鍵をかけてそのまま放置していたと話した。物置部屋の奥の扉の鍵は、リビングにある棚の引き出しに保管されていた。

玲奈は祥子から鍵を借り、外から物置部屋の扉を開けようとしたのだが。


「ドアの鍵は壊されていた」

「は?」


外から物置部屋の扉を開けようとした玲奈は、扉にぶら下がっている、壊れたドアノブを発見する。おまけに、壊された物置部屋の扉、壊されたドアノブと扉の隙間には、ザラザラとした灰色の砂があった。


(罠にかかった何かと同じモノが壊したのか)


玲奈が仕掛けた罠についていた同じ灰色の砂。鍵を壊したのは、同じ犯人で間違いないだろう。


「横山さん?どうかしたのか?」


思考する玲奈に心配して、ドアを塞ぐ家具の隙間から覗く仁が問いかける。

物置部屋の家側と外のドアノブにあった灰色の砂のことを、玲奈は仁に伝える。


「なるほど。そうやって、侵入させたんだな」

「そのようだな」


同じ答えを玲奈と仁はだす。

物置部屋の外への扉は、家具や箱などで塞がっている状況で、人が入る隙間はない。しかし、罠にかかっていた大人の拳ほどの大きさの何かなら侵入は可能性だ。


「なので、私は〈妖精〉たちに話を聞いてくる」


〈妖精〉達の縄張りは庭だが、家への侵入者、何かを目撃した可能性はある。


「だから、お前はシャワー浴びてこい」

「は?」


脈略もない玲奈の言葉に、仁は間抜けな声を漏らす。

何故、シャワー。しかも、よそ様の家の。


「今の自分の状況をわかっているか?橘、埃まみれだぞ」

「あっ」


埃が漂う物置部屋で、そのまま放置されていた箱や家具などをすこしばかり動かしたりした。そのせいか、仁の頭や服には埃がついていた。おまけに仁の手は真っ黒。

〈妖精〉達への確認は、玲奈一人で充分。その間に、汚れ落としてこいという訳だ。


「祥子さんには、すでに許可をもらっている」


物置部屋の奥の扉の事を確認した時に、玲奈は祥子に話をつけた。

埃だらけの服は祥子が好意で洗濯すると申し出ている。その間の服は、亡くなった旦那の服を貸してくれることになった。


「そのままの姿でいたほうが迷惑だ」

「……わかった。ありがとう」


ここまで用意してもらって、断るほうが失礼。仁は素直に甘えさせてもらうことにした。


「それじゃ、また後で」


外への物置部屋を玲奈は閉めた。


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